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110話目 戦艦とフェードアウト 右子side

本当に、この場で、

感情のどうのこうのじゃなくて、敦人にこうやって再び会えたことにただ感謝する。


正直、死を覚悟する場面もあったのだ。


「敦人、迎えに来てくれて、ありがとう」


私が目を潤ませてそう言うと、敦人は黙って私を離した。




「右子様!·······ご無事で良かったです!」


アイン王子が駆け寄ってきた。後ろにカオン王太子とナムグン•チェアさんが続く。


アイン王子から改めてお二人の紹介を受けたので、私も今度こそ自己紹介をする。


「第一帝女の右子です。よろしくお願いいたします」


「·······まさか、こんな所でお会いできるとは思っても見ませんでした。

お噂は、かねがね伺っておりますよ。」


カオン王太子は満面の笑みになる。


「そうなのですか?光栄です」


「ええ、とても初対面とは思えませんね。

そう········写真や絵姿などでずっと拝見しておりましたから」


「え??」


確かに帝族の絵姿は所々で販売されているそうだけど、よっぽどの帝族マニアやファンしか買わないと思う。ましてや海外で見ることなんてあるんだろうか?


「そう、アインの·····ね」


アイン王子をみると、目を丸くして顔が赤くなっている。

私はアイン王子は私の婚約候補者だということをふと思い出した。どうやらお見合いの写真だか絵姿だかを王太子も見たのだろう。宮内省はどんなものを送ったのか気になる。まさか、包帯を巻いてるやつじゃないと思うけど。

私はアイン王子の絵姿を見たかな·······やっぱり見ていない。


「実は私は美しい女性の絵姿や写真などを収集する趣味がありましてね。金に糸目をつけないので、それはもう沢山集まるのです。貴女のものは、アインの為にも頑張って集めましたよ」


「え?」


「美しい女性っていうか、美少女コレクションだよね。あれは」


全くフォローでも何でもないことを注釈するアイン王子。


「もちろん、チェアの絵姿も沢山持ってるよ?」


カオン王太子は駆け落ちの相手だというナムグン•チェアさんへ、にっこりと微笑みかけた。

な、何だか変わった趣味をお持ちの方みたいだわね、王太子は。



「チェア様、お疲れでしょう。お茶を出していただきましょう」


私はずっと黙りこくっていたナムグン•チェアさんに 話しかけた。


「あっ、はい」

か細い声が、小鳥のようで本当に可愛らしい方だ。あれこれとお世話をしたくなってしまう。


「あの、この艦はアイン王子の手配ですか?カオン様やチェアさんにお茶をお出ししたいのですが、手伝ってもらっても?」


「うん!」


「いや、右子とアインとでお茶淹れられるの?

食堂には調理師がいるから、頼んでくる」


敦人が口を開いて、部屋を出て行く。


「敦人?」

お茶ぐらい淹れられるわよ。まあ、すごくは美味しくならないけど。

それにしても、敦人何だか様子が変なのよね。元気がないというか·····


「右子様。この船は敦人が用意したんだ。サンタ聖教会に交渉して借りたんだよ」


「え!この戦艦を!?すごいのね!私本当に驚いちゃったのよ」


宗教団体が戦艦を持っているとは。

この黒船を岸に乗りつけて布教活動をされた時には皆恐怖で震え上がり入信すること間違いなしだろう。


「あっそうだった!」


アイン王子がそう言うと、急に船内の内装の様子が変わった。

私達がいる応接室は急に狭くなったと感じる。

戦艦はみるみるうちに一般的な船舶へと戻った。


「やっぱり、『稀の力』だったか」

カオン王太子が言った。


「何てことだ········戦艦じゃなかったとは」

公爵は、降伏することになったきっかけがハリボテと分かり悔しそうだ。



食堂から、お茶と菓子が運ばれ振る舞われる。

皆席に着いてしばし話し合う。

カオン王太子は機嫌がやたら良いご様子で、笑顔でこう告げた。


「徳川公爵、我々はあなたのお膝元の大阪に行きます」


「はあ?帝都じゃなくて大阪に?」


「はい。せっかくの機会ですので、ご招待を受けたいなと。なに、観光ですよ。大阪の名所へ案内していただきたいですね。········補償の話もありますし、そこでじっくり膝を交えましょう。それとも東京へこの話を持って行った方がいいですか?」


「や、止めてくれ!こんな面倒な話、帝都に持っていったら俺の立場がなくなる!」


何を今更、学校で騒動を起こした被疑者達を解き放ち帝女を攫った徳川公爵なのに。


「ははっ、では決まりですね」

カオン王太子は満足気に笑った。



「俺と右子は帝都へ戻る」


「「えっ」」


アイン王子と、私自身も驚く。


「当たり前だろ?右子は徳川公爵に攫われてここにいるだけなんだから。俺はお前を迎えに来たの」


「そ、そうだよね」

確かにね。仕方ないか。


「えっ!じゃあ僕も東京に帰るよ!」


カオン王太子がアイン王子から今回の経緯を聞いている。


「学校もあるんですね。それは戻らないといけないですね······久しぶりに会えたのに残念ですが、元気そうな顔を見れたので良しとしましょう」


「兄さん······」

アインは目を潤ませる。本当に仲が良い兄弟ね!

聞けばカオン王太子は22歳らしい。立派な大人だ。

アイン王子は本当は16歳だから6歳差なのね。


「そうそう、ではこのナムグン•チェアも東京へ連れて行って下さい。

彼女は来年度、こちらの帝国学校の中学年へ留学する為に来国したのです。皆さんと仲良くなるためにも今から東京へ一緒に行った方がよろしいでしょう」


それを聞いて、チェアさんも納得したように、こくんと頷いた。それはもう、何度も言うが小鳥のような愛らしさだ。


徳川公爵も異論は無いようで難しい顔で黙りこくっている。というかもう魂が抜けていそうだ。



えっっ·····ところで、駆け落ちは?

私は、王太子のずいぶん自由度がある駆け落ちに驚くのだった。


読んでいただきありがとうございます!


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