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109話目 黒船は宣戦布告する 右子side

その戦艦は、突如として私達の目の前に現れた。


「くっ黒船······」


ペリーの黒船来航は関係ないけれど、つい思い出してしまった。そのぐらい、あの戦艦は私達とは差が歴然だった。


「なんだ?ありゃあ······」


普段から海軍をも統率する徳川公爵ですら青くなって見入っている。



「··········無線が届いています!おそらくあの戦艦からです」


無線室に駆け込む公爵にみな続く。


「アーー、これは最後通牒です。

我々は無駄な血は流さない。速やかなる投降を要求する。今から全ての武装を解除して投降しなさい。

それが叶わくば、我々はこの後、宣戦布告する。」


「なんだって···········?いきなり最後通牒だと········

敵対勢力だというのか!?どこの所属の戦艦なんだ!?」


海軍を持つ徳川公爵は、突然現れた戦艦の正体が分からず今まで見たことがないくらい動揺する様子が見て取れる。


先程見た、船首にはためく艦首旗のマークは確かに見たことが無かった。どこかの家紋のように見えた。

家紋の図柄の中にチラリと小さな菊の紋が見えた気がした。

私は嫌な予感がした。菊を有する家紋は宮家が好んで使う。


「あの、公爵······」

「要求を受け入れて下さい徳川公爵!

力の差は歴然です。これは言わずと知れた好戦的な大国の手の者でしょう。

このまま戦闘になれば、ここにいる私達は木っ端微塵だということを断言しましょう!」

カオン王太子がなぜか自信満々に宣言してくる。


徳川公爵は、周囲をぐるりと見回した。

私に加えてコーリア国の王太子と貴族の令嬢が乗っている。まさかここで徹底抗戦して、これらの誰かを傷つけたものなら大きな責任を負うことになる。


「·········応じるしかないか。最後通牒をしてくるということは、あちらさんも目的はこちらを全滅させると言うわけではないんだろう。一体どこの大国だと言うのか」




私達は敵の指示通りに戦艦に乗せられた。

戦艦は巨大で、何回も階段を登らされ、内部はコピーされたように繰り返されていて、何階建てか不明な程だった。


私達一行は大きな貴賓室へ通された。

そこで冷酷に待ち構えていたのは、



········敦人とアイン王子だった。


「······お、」


「どういうことですか?徳川公爵、これは!!」


公爵が口を開こうとするうちに、すかさずアイン王子が話す。


「右子様だけでなく、コーリア国の王太子である兄上や高位貴族令嬢にまでに危害を加えるとは·······!」


アイン王子の怒りは怒髪天を衝くといった様子で。美しく可愛らしいお顔が、もう真っ赤っ赤だった。


「ま、待ってくれ。これには理由があってだな······」


「理由?無抵抗の船を攻撃することに、正しい理由などありますか!?」


そこに大仰に前に出たのはカオン王太子だった。


「待て待て、公爵は誤解していたのだ。通信機器を故障させてしまったこちらにも非はある。

··········優しい弟よ息災で兄は嬉しいぞ。」


「·········兄さん!!」


兄弟はしっかりと抱き合った。

感動の再会のようだった。


非は通信機器故障より、幻覚で船団を装ったり、挑発ともとれる不可解な動きだと思うけれど、

私がここで言っても仕方ないんだろうな。


「大丈夫ですよ。無抵抗の一国の王太子を攻め、所有の船を損壊させた罪は補償で·········公爵様ならもちろん分かっていらっしゃいますよね?」

ニヤリと笑う王太子。たんまり償わせるつもりなのだ。


「っっ!そ、そうだ!なんで権野公爵家の小童が戦艦に乗ってるんだ!?

お前は何のためにコーリア国の王子を乗せて、こんなバカでかい戦艦で宣戦布告に来たんだ!?

わけが分かんねぇよ、説明しろ!!」


公爵の苛立ちの矛先は同国の公爵子息へ向かった。



「·············」


敦人は誰の話も聞いていなかった。

戦艦から降りてきた時から、敦人は初対面のような雰囲気で、だけど、私だけをずっと射抜きそうな鋭い瞳で睨んでいた。

私は何度も人間違いの可能性を探ってみた。

でも行き着く先はやっぱり、敦人だった。


私は咄嗟に逃げたい衝動に駆られて後退ってしまった。

それに気づいて俊敏に敦人はこちらへ歩を進めた。


これって、死ぬほど怒ってる·······!


私は危険を察知して、拐かしを避ける技術が発動して、なぜか、すべって転んだ。

それを抱き留めて、敦人が私の身体を身に引き寄せた。


「く、くるしい」


「············

············

·············追いついてよかった」


間が怖かった。


でも犯罪の香りを嗅ぎ取ったのは間違いで、私はホッとした。


「敦人」


これは感動の再会、だよね?


読んでいただきありがとうございます!


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小説のイラストもあります。


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