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108話目 こっちを撃とうかあっちを撃とうか 敦人side

「だ、ダメだ········通信に応じない!」


確かにコーリア国の船だと思ったのに、その船団はどれだけ無線で呼びかけても応じてこなかった。


「おかしいな」

「·······偽物という可能性もあるな」

「通信機器が壊れているのかも?」


俺達は警戒を強める。

「やっぱり、あっちを撃とう」


俺がそういうと、アインが慌てて止める。

「ま、待ってよ!様子を見ようよ!」




そう言われて、様子を見たら2日間たっていた。

「そろそろ、撃とうか」


俺は我慢の限界だった。その船団はつかず離れず、徳川公爵家の船を執拗に追いかけては、逃して、

逃したと想えば、また執拗に追いかけた。

やっぱり奇妙な船団だ。やっぱりこちらを撃つしか·······


「公海や排他的経済水域など、敏感な地域だったらこういう挑発的な動きもわかりますが、ここは明らかな領海内ですし、挑発する意味が分かりません。

本当に奇妙な動きですね」


専門家であるこちらのコーリア人航海士も舌を巻いてお手上げだ。


念の為、我々の船は姿を隠していた方がいいという航海士の助言で、アインの『稀の力』で船の姿を隠していた。

『稀の力』は幻覚を相手に見せることができる力だが、自分の姿を幻覚で隠すこともできる。


「まって·········?あれ、あっちも『稀の力』を使ってる?」


甲板に出てアインの『稀の力』を見守っていると

アインはとんでもないことに気づいた。


数多の船団だと思っていたものの正体は、一隻の船だと言うのだ。

アインは中央の船以外の15隻の船は全て幻覚だと断定した。

人の思い込みというのは強いもので、幻覚というのは始めから疑がってかからないと、なかなか幻覚を操る者でも見破れないものらしい。



だとしたら、あの船団は一気に不利な戦況だ。

徳川公爵家の船舶は交易船を裝ってはいるが、かなり大きな艦砲を備えているようだし、そもそも乗組員たちは海軍の本業兵士の可能性が高い。

一隻同士でやり合うにはリスクが高い。


「どうしよう!?」

「········やはり撃つべきは、徳川公爵家の方か?」


それにしても、無線で話せないのならこちらも確証が持てず身動きが取れないではないか。




アインは突然、一人でブツブツ話し出してしまった。


「··········兄さんだ!話せるよ!通信機器が壊れているらしい!」


「はあ?」


通信機が壊れているのに話せるとはこれいかに。

アインは『稀の力』で兄と話しているという。


幻覚とは相手の脳に映像イメージを直接飛ばすものらしいが同じ要領で相手への通話も相手の脳へ飛ばせるらしい。しかし、一方的に見せつけるだけの幻覚とは違い、返信を求めるので受容する相手に能力が必要らしい。よって『通話』は『稀の力』を使える者同士に限られているそうだ。



「え!?兄さんは救助要請のつもりで追いかけ回してたってこと!?

そう!俺も友達の船で近くに来てるんだ!

ていうか、兄さんがここにいるのおかしいでしょ!?

はあ!?ナムグン•チェアの留学についてきちゃったの!?·······!?」


アインの独り言が大き過ぎる。


「········はあ!?兄さん自体が幻覚だって!?

本国から幻覚を飛ばしてるの!?

そんなことできるのぉ!?」


ふーーー


暫し幻覚で話し合っていたが終わったようだ。

アインの声が大きかったので事情は少し掴めた。


アインは肩を落とし長く重い溜め息をついた。



「兄さんは········幻覚の天才なんだけど、

·········異常者なんだ」


天才というのは何だか分かるけど、異常者というのは?


それに、アインの兄なら第一王子で、確か王太子だよな?




····ド•ドォン·······!


突然の爆撃音に船内は騒然となった。


攻撃はもちろんあっちだ。


急いで見れば、徳川公爵家の船舶がコーリア国の中央の一隻を砲撃していた。


幻覚に惑わされず本物を撃ち抜く術はさすがとしか言いようがない。

公爵も執拗な挑発に痺れをきらし 攻撃に勝機を見出したのだろう。


「にっ兄さん·········!!」


········ガガーッガーッ

「無線、通じます!」


俺達は無線室に駆け込んだ。

「兄さん!兄さん!無線なおったみたいだね!

今の衝撃、大丈夫!?」


「············うう、助けてくれ··········アイン!」


ブチッッガガガーー!

無線はまだ調子が悪いようで、途中で切れてしまった。


「あ、アイン?」


アインを見れば、瞳に復讐の火が灯っていた。



アインが隠していた我々の船の姿を現したようだと思ったら、

なぜか、黒塗りで厳ついような?

「アイン?船舶のデザイン、幻覚で変えてるか?」


余裕あるな····すぐ撃てばいいものを。


とはいえ、多少離れていたので砲撃が届く距離に近づくまで時間がかかる。

その間に攻撃されて大破した船から乗員一向が徳川公爵家の船に捕らえられている様子が確認できる。人数はかなり少ないようですぐ姿は徳川公爵家の船舶に吸い込まれて行った。


アインは叫んだ、

「砲撃用意ーーー!!」


「ちょっとまて、皆あの船に乗ってるだろうが!

まずは宣戦布告してみようか?」


いつの間にか人質が増えてしまったのだ。

しかも、コーリア国の王太子が絡んでいるとなると、

俺は慎重にならざるを得なかった。


読んでいただきありがとうございます!


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