99話目 ブラコン•バトル!!(3) 右子side
おかげさまで連載100回目に突入です····!
活動報告欄の過去ログに100回目を記念して4コマ漫画が掲載されていますので、お暇があればぜひ探してみて下さい(^○^)
軽井沢での学の様子は96話目に少し記載してあります。分かりにくくてすみません。
小屋はグワングワンと揺れていた。
和珠奈さんの代わりにA組で授業を受けてから、私を呼びに来た麦本くんと校内の敷地の端にある用務員小屋へ急いで戻ってみると、皆、揺れる小屋を眺めていた。
「ど、どうしたの?」
奏史様も険しい顔で小屋を眺めている。
「中には、保と和珠奈さんがいるんですが·····」
一体、私がいない間に何が起きたというのか。
聞くと、あれから、大人しくしていた和珠奈さんだったが、奏史様と一緒に保くんが現れると、和珠奈さんは騒ぎ出したらしい。
保くんの希望もあり、逮捕は私が戻るのを待つことにして、数の有利から逃げることは不可能だと判断した奏史様は、小屋で一連の疑惑について話し合いをすることにしたそうだ。
外に近衛兵士を増やし見張らせていたようだ。
「知人のよしみで、最後に我々で話し合って罪状に納得した上で捕縛した方が抵抗も少なくスムーズだと思い、両者と我々近衛師団で話し合いの席を設けました。
話し合いも終わり外に出る際に、和珠奈さんがデリケートな話が残っているから保と二人きりで話したいと頼まれて、取り敢えず我々は外に先に出たのですが。閉じこもってしまって······」
「デリケートな話で、こんなに小屋が揺れるなんて······?」
「和珠奈様は拘束されていたロープをもう引きちぎったのではないでしょうか?」
麦本くんが言う。結界が破られるって言ってたのは、やっぱりロープのことだったのね。
「あっ!右子様?」
「奏史様、来ないで下さい!私も二人と話したい」
私は居ても立っても居られなくて小屋の中に入った。
ドアには鍵はかかっていなかった。
部屋は真っ暗だった。
私は足元に何かが横たわってるのに足を取られて転んでしまった。
「きゃっ!」
真っ暗だし、
ど、どういうことだろうか。
ギョロリと、暗闇の中、すぐ近くで目が合ったのは、血走った女の両目だった。
私はそれから即座に背後を取られてしまった。
私は後から抱きすくめられ、身動きができなくなっていた。
チカッチカッチカッチカッ······
私の無意識の力で明かりが点滅する。点滅する中、目を凝らして背後を振り返ると、
それは髪の毛を振り乱した和珠奈さんだった。
「わ、和珠奈さん落ち着きなさい。話せば分かります」
すると和珠奈さんは、幾らか落ち着いた風で頷くと、溜息を漏らした。
「右子様、私はお兄様と話し合ったんですわ。········でも、ずっと平行線で······」
それだけで、保くんは私を裏切っていないのではと希望が宿ってしまう。
私も保くんと話がしたかった。
私は両腕を和珠奈さんに拘束されているので『病の力』で、電気をつけた。
周りが見えてくると、
なんと、
足元に転がっているのは保くんの身体だった。
「たっ······たもつくん!たもつくん!」
私は動転して、必死に叫ぶ。
「兄は、言ったんです。『もう、それならいいよ。全部忘れてよ』と」
「何のことか分かりませんでした·······だけど、兄に頭を掴まれた時、分かったんです。『忘れさせられる』という事を。私は必死で抵抗しました·······」
「!」
「これが、この結果です」
和珠奈さんは自嘲するように首を竦めた。
好きな人に忘れさせられるのは、どんなに悲しい気持になるだろうと慮るほどの余裕は、今の私には、無かった。
保くんは死んでいる?生きてる?
「たもつくんッ」
ぐいっと和珠奈さんに引き離せられる。
彼女はボソッと私の耳元で囁いた。
「お止めなさい。実の兄妹で気持ち悪いですわ」
凄く凄く冷たい目をしている。
いや、あなたに言われたくないんですけど!
········キインッッ
突如、外が騒がしくなっているのに気づいた。
刀が幾度もこすれ合う音がしている。
「!」
「········
ようやく来たようですね。我が家の私兵が。
右子様には我々と一緒に来ていただきます」
すると、外からドアが開かれた。
仰々しく、和珠奈さんに頭を下げるのは、徳川公爵家の私兵だろうか。
「お兄様と右子様を連れて行きます。
右子様、抵抗したらお兄様がどうなるか·····お分かりですね?」
言いぶりで、保くんは生きてるようなのが分かり、却って安堵する私だった。
「はっ」
私兵の男に手首を縄で結ばれ、私は無理に外へ連行される。
私兵の一人が保くんの身体を起こしているのが目の端に見えた。
外では徳川公爵家の私兵と近衛師団の戦闘の真っ最中だった。
「右子様!!」
奏史様は刀で対戦している。
「右子!『病の力』を使え!」
あさっての方角から声が聞こえて、見ると敦人だった。隣にアイン王子もいる。
二人共、あれからついて来ていたのだ。
「あっ!そうね!」
敦人は二人で逃亡した仲なのでもちろん私の力を熟知している。
私は私の肩に置いている兵士の手を握って、私を放すように命令した。
兵士は握っていたロープを離した。
「···········!?」
和珠奈さんは驚いている。
私の両手首にはまだロープが固く結ばれて、ぶら下がっているけれどそれはそのまま引きずって、取り敢えず敦人の方へ、
私はノロノロと歩き出した。
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