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本屋に到着した尋人は教科書コーナーへと向かう。そして手元のスマホで調べた一般校で使われている教科書を選択してカートに入れた。
(いきなり勉強を教えてと言われたときは何事かと思ったけど)
尋人は勉強が嫌いだ。尋人にとって、それは争いの種にしかならないからだ。でもウルズに勉強を教えてほしいと言われたとき、嫌な気分にはならなかった。むしろ、それを普通に受け入れている自分がいた。
それはきっと、今まで尋人に勉強を教えてほしいと言ってきた人間ほとんどがいないからだ。
誰かに勉強を教えるなんて小学生以来だ。中学生になってからは、周りはプライドの高い人間ばかりで、周りは全てライバルで敵だった。そんなやつらに教えを請うのは、自分が弱いと、負けていると認めているようなものだ。
だから尋人は誰からも勉強を教えてとお願いされたことはない。そのころから尋人は周りの秀才よりも勉強ができていたから、周りも尋人だけには頼らないと考えていたのかもしれない。
でも今日、とても久しぶりに勉強を教えてとお願いされて、尋人は嬉しさを感じた。勉強に関して、そんなことを思ったのは本当に久しぶりだった。
「勉強も、こんな気分でできたら楽しいのに」
パソコンの画面の前でそんなことを呟きながら会計を済ませ、尋人は部屋へと戻った。