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どうしたら会えますか?  作者: 花崎有麻
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プロローグ2

 なんとなく暇で、家でパソコンのマウスをカチカチとやっているときにそれを偶然見つけた。巨大SNS『アリス』。そのテスター募集を見たときに「これは運命だよっ」と柏木憩は思った。

 自分しかいない部屋で一人叫び、憩――イコは即座にテスターに応募した。

 それが確か桜も満開の春先のこと。そしてそれから数日経った五月の初め。今日はそのテスター当選が発表される日だった。

 テスターの当落選は登録したメールアドレスに送られてくる。イコは緊張しながらそのメールを待っていた。こんなに緊張するのは高校受験の合格発表以来だ。スマホを握る手に汗が滲む。

 すると手の中でマナーモードのスマホが震える。いつメールが来ても大丈夫なように身構えていたのに、びっくりしてスマホを取り落としそうになった。慌てて持ち直してメールを開く。

 メールの差出人はアリス運営事務局。

(きた・・・・・・)

 心臓がバクバクと高鳴る。少し震える指でそのメールを開き、読む。

「・・・・・・」

 メールには、テスターに当選したと書かれていた。

「やっぱり、運命だったんだよっ」

 思わず叫ぶ。授業中のクラスメイトの視線がイコに集中した。

「柏木さん・・・・・・」

 しまったと思う。今は数学の授業中。数学担当の女教師が呆れた目でイコを見る。

「運命だというのなら、この問題を解いてみて」

「うぇっ!?」

 慌てて立ち上がって黒板と教科書を見比べる。

 数学なんて勉強の中で一番苦手だ。はっきり言ってちんぷんかんぷんだ。公式なんて覚えられない。だからもちろん、黒板に書かれている問題の答えはおろか、どうやって解くのかすらわからない。

「えっとぉ・・・・・・。あはは」

 笑って誤魔化そうとした。

 でも教師もイコが勉強を苦手としていることはわかっている。最初から期待はしていなかったのか、軽い注意だけで終わりにしてくれた。

 イコは一言「すみません」と謝って着席する。しかし反省の言葉を口にしたのも束の間、イコはスマホの画面に視線を落とす。

 アリスのテスターの応募を見たとき、理由なんてわからないが応募すべきだと思った。ここでテスターのことを知ったのも、応募するのも、そしてこうやって当選するのも運命だと思った。

 そしてそう思った通り、イコはテスターに当選した。だからきっと、あの謳い文句に間違いはない。

『新しい世界、今とは違う可能性に満ちた世界』

 それはとてもわくわくする響きだ。どんな可能性があるのだろう。どんな人と出会えるのだろう。これから始まるその新しい世界を妄想して、イコはこの日一日、心を躍らせて終わらせた。


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