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どうしたら会えますか?  作者: 花崎有麻
10/41

1-8

 それから地獄のような勉強会が始まり、それは毎日行われた。

 イコは学校が終わるとすぐに家に帰り、アリスにログインして先生であるヨーエロを待った。そしてヨーエロの指導の下、一日に一教科を重点的に勉強していった。

 勉強会の中でわかったことがある。ヨーエロはどうやら進学校に通っているらしく、頭がいいのはもちろんのこと、教え方も上手かった。学校で先生の話を聞いていてもまったく理解できなかった公式や英単語、化学式、漢字に年号、それらが今までには感じたことがない速度で頭に入ってきた。

 今までの人生でここまで勉強が捗ったことはなかった。勉強を苦だと思わないことも初めてだった。

 きっとヨーエロに教えてもらっていたから続けることができたんだと思う。

 そうやって勉強会はテスト前日まで続き、ついに当日を迎える。

 テストの日程は三日間。一日目が国語と英語。二日目が理科と社会。三日目が数学だ。それぞれ前日に、それぞれの教科の復習とまとめをして本番に臨む。

 そうやって三日間のテストはあっという間に過ぎ、夏休み前の最後の授業で答案が返却された。

「イコ、どうだった?」

 手元には一日目と二日目の答案がすでに返却されていて、たった今、三日目の数学の答案が返却されたばかりだ。だがイコは数学の答案を裏返しにしたまま点数をまだ見ていない。

「わ、わかんなよぉ」

「え、もしかしてだめだったの? えっと、アリスで知り合ったあのナントカって人に教えてもらったんでしょ?」

 鏡子にはヨーエロのことを話してある。そして彼に勉強を教えてもらっていることも。でも勉強ができる人に勉強を教えてもらったからといって、全てが上手くいくなんて保証はどこにもない。

 これまでのイコのテストの結果は、赤点二が二つ。どちらも惜しいケアレスミスでの赤点だった。つまり、今裏返してある数学の点数によって、夏休みが天国になるか地獄になるか決まるのだ。

 嘘でもなんでもなく、勉強は頑張った。自分もテスト前のはずなのに、毎日勉強を見てくれたヨーエロのためにも頑張った。ここでもしもだめだったらヨーエロに顔向けできない。なんと言って謝ればいいのか。

「できることはやったんでしょ? なら、もう腹をくくるしかないでしょ」

「そうだけど・・・・・・あっ!」

 それでも迷っていると鏡子が机の上の答案をひったくる。そしてイコよりも先にその点数を確認した。

 ちなみに赤点はクラス平均の半分以下で、そのクラス平均は六十八点。つまり三十四点以下が赤点ということになる。

 目の前に鏡子が答案を突きつける。本能的に目を逸らすが、いつまでもこうしているわけにはいかない。イコは恐る恐るその答案を見た。そして点数を確認する。

「――……あ」


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