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補佐役として転生したら、ダメダメ美少女勇者さまのお世話をするはめに!?  作者: 有永 ナギサ
2章3部 魔法使いの少女

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イオとの帰り道

 シンヤとイオはアルダの森を、アルスタリア方面へ抜けようと進んでいた。

 ちなみにイオにアドルフのことを聞いたところ、そんな人と会っていないとのこと。あとシンヤの予知のスキルによる直感は、イオのことをしていたらしくそれ以上の予感は湧いてこなかったという。このまま探索を続けると陽が暮れてしまうため、完全に諦めて戻ることにしたのであった。


「へー、イオってアルマティナから来たのか。オレ、そっち方面にはいったことないんだよな。どんなところなんだ?」

「どこもキラキラで、きれいなものがいっぱいあるよー」


 イオは目を輝かせ、両腕を広げながら一生懸命伝えようとしてくる。


「えっと、もう少しくわしく説明できないか? 抽象的すぎてイメージが……」

「うーんとねー、あふれ出るマナの影響で、自然そのものが変質してるのー。だからカラフルな植物や、きれいな鉱石がそこら中にあってとっても幻想的なのー」

「おぉ、マジか。それは行ってみたくなってきたよ」


 どうやらアルマティナには元居た世界では見られないような、ファンタジーならではの景色が待っているらしい。これは冒険しがいがあるというものだ。


「絶景と名高い観光名所がいっぱいあるから、ぜひ遊びに来てねー」

「行く、行く! じゃあ、そのときはイオに案内してもらうかな」

「むふん、まかせといてー。現地のいいガイド探して、案内させるからー」

「おい、そこはイオがやってくれるんじゃないのか?」


 得意げにむねを張り宣言するイオだが、その他力本願な内容にツッコミを入れずにはいられなかった。


「えー、いおは絶景をながめてボーとするので忙しいから、パスでー」


 イオはめんどくさそうに肩をすくめた。

 そのあまりの彼女らしい理由に、思わず笑ってしまう。


「ははは、そっか」

「でもししょうのおつかいがあるから、すぐにはムリそうかもー」

「イオもいろいろ大変そうだな。ちなみにその師匠って、なんの師匠なんだ?」

「魔法だよー。ししょうはね、アルマティナでも名高い、超凄ウデの魔法使いなのー」

「へー、じゃあ、そんな人の弟子であるイオって」

「くす、その通りー。とってもとっても優秀な魔法使いなのー、むふん」


 イオは両腰に手を当て、見事なまでのどや顔をしだす。


「おぉ、それはすごいな」


 パチパチ拍手はくしゅしながら賞賛を。


「だから魔物とかが襲ってきても、ちょちょいのちょいなのー」


 すると気をよくしたのか、人差し指をクルクルしながら調子のいいことを言うイオ。


「ははは、それは心強い。じゃあ、なにかあったらイオ先生にお任せだな」

「でもあまり動きたくないから、いざというときだけー。それ以外の基本戦闘はよろしくー」


 さっきまでの頼もしさはどこにいったのやら。イオは手を上げ、ぐでーっとしながら主張する。

 これには盛大にツッコまずにはいられなかった。


「おおーい、せっかくのかっこいいセリフが、今ので台無しになったぞ!」

「うゆ?」


 とぼけたように小首をかしげるイオ。


「まあ、魔法使いといったらゲームでよくあるMP問題とかもあるだろうし、しかたないといったらしかたないのか。ところでイオってどんな魔法が得意なんだ? ――って、イオ?」


 彼女に気になったことをたずねたが返事がない。振り向くと、さっきまですぐそばを歩いていた彼女の姿がなかったという。


た、あんなところに。イオ、急に立ち止まってどうしたんだ?」


 後方を確認すると、イオが少し離れたところで空を見上げて立ち止まっていた。

 なので歩み寄りながら質問する。


「みて、みてー、あの雲、ちょうちょみたいー。そしてあっちはお馬さん」


 するとイオはすがすがしい青空をただよう白い雲を指さし、はしゃぎだす。


「言われてみたらそうだな」

「ねー」

「――ほら、そろそろいくぞ。あまりゆっくりしてたら、日が暮れてしまうんだからな」

「わかったー」


 二人で少し空を見上げたあと、移動を開始する。


「――それでさっきの質問なんだけどさ。――またいない!? イオ!?」


 再びたずねるが、またもや返事がない。さっきと同じように振り向くとそこに彼女の姿はなかった。


「わー、きれいなちょうちょだー。まってー」


 少し離れたところに、あざやかな青い色のちょうを目を欄々(らんらん)とさせて追いかけるイオの姿が。


「おいおいおい、イオ!? どこに行こうとしてるんだ!?」


 見失う前になんとか彼女を連れ戻す。


「くす、ついー」

「――はぁ……、イオってマイペースというか、自由人というか。ちょっと目を離したらどっかいってそうで少し怖いよ。離れ離れになったら探すの大変なんだから、寄り道したいときは声をかけてからにしてくれ……」


 もはや歩きながら、頭を抱えるしかない。


「――あれ? 言ってるそばから!?」


 シンヤの忠告に返事がないため、おそるおそる視線を横へ。

 すると案のじょう、イオの姿はなかった。辺りを見渡すも彼女の姿は見当たらない。


「おいおい、こんどはどこ行ったんだ?」

「ぎゃー!?」


 するとしげみの奥から男性の叫び声が。


「なんだ!? なんだ!? え!?」


 慌てて声の方へと向かう。そしてシンヤの目に飛び込んできたのは。


「あー、しんや、なんかいたからつかまえたー」


 イオがまるで虫でも捕まえたように、軽い感じで報告してくる。

 彼女の足元には、先ほどのシンヤのように魔法のロープで上半身をグルグル巻きにされた中年男性の姿が。


「いやいや、見ず知らずの人をつかまえたらだめだろ!?」

「でもー、このおじさん、しんやが探してた人なんじゃないのー」

「え? 確かに、聞いてた特徴と一致するかも。あのー、もしかしてアドルフさんですか?」


 イオに言われ、改めて男性を見る。

 彼は見るからに気の弱そうで、頼りなさそうな中年男性である。


「――ああ、そ、そうだが……」


 アドルフは視線をそらしながら、ぼそぼそと答えた。


「やっぱり! でもアドルフさんほどの人が、なんでこんな簡単につかまって……」

「し、しかたないだろ。美少女に話しかけられキョドりまくってたところを、一切の躊躇ちゅうちょなしにしてやられたんだから……。――も、もちろん抜け出そうと思えば、このぐらいの拘束こうそく引きちぎることはできるぞ。ただこの女の子には、殺意や敵意がまったくない。だから様子見もかねて、この状況を甘んじているわけだ」


 アドルフはシンヤを見ず、まるで地面にかたりかけるかのようにぼそぼそと説明を。


「そうだったんですか。今拘束を解かせるんで」

「いや、この態勢。思いのほか話しやすいからこのままでいい」


 気に入ったのか、なにやらウキウキした様子で止めてくるアドルフ。

 この予想外の反応に、困惑せざるをえなかった。


「え?」

「俺を探してるみたいだが、要件はなにかね?」

「――えっと、実はレティシアの手伝いで、アドルフさんを探していたんです」

「レティシアちゃんの?――ハッ!」

「うわっ!?」


 突如とつじょアドルフが拘束を引きちぎり、立ち上がった。


「いきなりどうしたんですか!?」

「すまないな、少年。おおかたレティシアちゃんと、俺を連れ戻しに来たというところだろ。ならばこのまま連れていかれるわけにはいかない。抵抗させてもらう」


 そして彼は刀に手をかけ、臨戦態勢を。


「――な、なんで……」

「こちらの事情、少しは知ってるはずだろ。大役をレティシアちゃんに押し付けてしまって、会うのが気まずすぎるんだよ。だからこうやって遠出して」


 アドルフは真下の地面を見つめながら、ぼそぼそとうったえてきた。


「でもレティシア、普通に納得してくれてましたよ。アドルフさんに向いてないから、代わりにやるしかないって」

「それでも気まずいものは、気まずいんだよ。もう合わせる顔がないというか……」

「はー、そんなに後ろめたいなら、もういっそのことゆずらずに自分でやったらどうなんですか?」

「少年、俺のコミュ障ぶりをなめてもらってはこまるな! 団体行動は俺がもっとも苦手とするもの。まして人前に立ってリーダーをやるなんて、想像するだけで冷や汗がとまらん。実際にやった日には、頭が真っ白になってなにもしゃべれず、みなの笑いものになるだけだぞ!」


 彼は天を見上げながら、なぜか自信満々に力説しだす。 


「――そ、それは重症ですね……」

「そういうわけだから見逃してくれないか? もしそれが叶わないなら、剣聖アドルフの力を垣間かいま見ることになるぞ」


 アドルフはさやから刀の刃を少し引き抜き、殺気を放ってきた。


(くっ!? なんて威圧感だ!? こんなの勝てるヴィジョンが、まったく浮かんでこないぞ……)


 アドルフのあまりの重圧に、後ずさりしてしまう。

 彼は冒険者の中でも1、2を争うウデを持っており、これまで数々の偉業を成し遂げてきた人物。はたしてそんな相手に戦闘で勝つなど、可能なのだろうか。


「どうやらここはいおの出番ー」

「イオ?」


 勝ち目がないと諦めていると、イオがシンヤの横へと並んだ。


「しんやにいおのかっこいいところ、みせてあげるー」


 そして彼女は魔法を生成しながら、真剣な面持ちで宣言してくれる。

 発動しようとしている魔法の、驚異的な力の余波。そしていつものふわふわとした感じからは想像できない、マジの顔。さきほどの魔法の自信は、本物だったみたいだ。


「おぉ、なんかすごく頼もしくみえる。これはもしかして、いけるやつなのか?」

「ほほう、そこのお嬢ちゃん、凄ウデの魔法使いと見た。これは少し気合をいれないとだな」


 アドルフはイオの魔法の実力を見抜き、おもしろいと不敵に笑った。


「イオもやる気みたいだし、剣聖にオレの力がどれだけ通用するか試してみるのもおもしろそうだ」


 取り出したリボルバーをクルクル回しながら、覚悟を決める。

 さすがに向こうも本気で斬りかかってはこないはず。手加減しながら、シンヤたちを無力化しようとこころみてくるに違いない。その状態でさらにイオが助力してくれるなら、いいところまでくいつけるかもしれなかった。


「ハハハ、こちらはキミたちを無力化するだけだから、安心してかかってこい。では、いくぞ!」

「イオ、オレが前衛で出るから、援護を」


 リボルバーを構え、イオに指示をしようとするが。


「あれ? イオ?」


 すぐそばにさっきまでいたはずの彼女が、いないことに気づく。イヤな予感がしながら辺りを見渡すと。


「わー、きれいなちょうちょだー」


 なんと紫色に輝く蝶を、はしゃぎながら追いかけていくイオの姿が。


「イオー!?」

「――えーと……、仕掛けてもいいのかい?」


 イオが戦闘から離脱したことを心配して、声をかけてくれるアドルフ。


「すみません。やっぱり止めときます」


 シンヤ一人では勝ち目がないと判断。それにイオを連れ戻さないといけないため、戦闘をしている時間もないだろう。


「――そ、そうか……」

(しかたない。当初の予定どおり、レティシアからもらった秘密兵器を使うか)


 成り行きで戦うことになりそうであったが、本来の作戦を試すことにする。

 アドルフが立ち去ろうとする前に、シンヤはレティシアに手渡されていた秘密兵器をカバンから取り出し。





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