レティシアの剣技
シンヤたちはアルダの森で依頼をこなしながら、アドルフを捜索していた。
そして今、シンヤとレティシアは遭遇した魔物たちと戦闘している真っ最中。相手はウルフと、グリズリーという魔物である。グリズリーは大きな熊のような姿で、凶悪な爪と豪腕さを持つ中級レベルの魔物であった。
「そこね!」
すでに戦闘も終盤。レティシアが間合いを詰め、カタナを一閃。グリズリーの胴体に一太刀入れる。
「グガァァァ!」
もろに入った一撃であったが、グリズリーはまだ倒れない。よろめきながらも鋭い爪で、レティシアへと反撃してきた。
「おっと」
襲い掛かる豪腕に対し、彼女はかろやかな身のこなしで後方へ跳躍し回避を。
「なかなかタフな敵ね。でも次でしとめる!」
そしてすぐさまレティシアはさやにカタナを納め、再びグリズリーへと突撃。
「ガルルルルー!」
そこへウルフ3匹がグリズリーを守ろうと、レテシィアへと飛びかかっていった。
しかし彼女はウルフにかまわず、グリズリーへ渾身の一撃をたたき込もうと。
このままではウルフの攻撃を受けるはめになってしまうが。
「シンヤ、周りのザコをお願い!」
「おう! つゆ払いは任せろ!」
もちろんそんなことはさせない。心象武器のリボルバーをクルクル回転させながら、即座に銃口をウルフへと。そして引き金を引いていく。標的はレティシアへ迫るウルフ3匹。見事な早撃ちで、敵の眉間に次々と弾丸を撃ち込んでいった。
「ガルルルル!?」
これによりレティシアの邪魔をするものはいなくなり、攻撃に集中できる状態に。
「グガァァァ!」
グリズリーが迎え撃とうと腕を振るおうとするが、遅い。すでに彼女は敵の懐にもぐりこみ、カタナをさやから抜こうとしていたのだから。
「とどめよ!」
レティシアが抜刀。精確無慈悲な銀閃が、グリズリーの首元へと襲い掛かる。
そして彼女の渾身の居合斬りが炸裂。標的をまたたく間に断ち斬った。
「――ふう、これでおしまいっと」
レティシアが華麗にカタナをさやに納め、一息つく。
敵は今倒したので最後。戦っていた魔物の集団を、無事全滅させることに成功した。
「ははは、見事なまでの剣さばきだな。身のこなしもすごくかろやかで、舞を見てるかのようだったぜ」
レティシアの戦いぶりはまさに優雅の一言。しなやかな体さばきからくり出される、研ぎ澄まされた剣技。一足一挙動にムダがなく非常にかろやかで、まるで舞を舞っているかのよう。しかも彼女自身が誰もが認めるほどの美少女ゆえ、さらに美しさが際立っていたといっていい。もはや戦闘中だというのに、気づけば彼女に目を奪われている瞬間が何度もあったという。
「なになに? もしかして見とれちゃってた?」
するとレティシアがシンヤへと振り返り、かわいらしくウィンクを。
「ああ、あまりの剣技に、惚れ惚れしそうだったよ」
「ふふっ、ありがと! シンヤもさすがだったよ! 的確に援護してくれて、すごく戦いやすかった。その射撃のウデと視野の広さは、賞賛ものね! あれなら安心して背中を任せられる!」
レティシアがシンヤの顔を下からのぞき込みながら、親しげに笑いかけてくる。
「ははは、援護なら任せてくれ。いくらでもぶっぱなすからさ!」
リボルバーをクルクル回転させながら、自信満々に宣言を。
「ねー、ところで一つ気になってたんだけど、どうしてシンヤはその魔導銃をクルクル回してるの? なんか戦闘中も、合間に何度もやってた気がするけど」
「だってかっこいいだろ? こうしてるとリボルバーを使ってるって実感が、湧いてくるんだよな。ああ、それにしても心象武器の我が愛銃。ロマンと美しさを兼ね備えたこのフォルム! まさにオレの理想とする形だ。しかもそれをまるで自分の手足のように扱えるんだから、もう最高すぎる! これをぶっぱなせるだけで、ほんとこの世界に来た甲斐があったってもんだぜ!」
クルクルと華麗にガンプレイして、不敵に笑う。そしてリボルバーにうっとりしながら、早口で熱弁した。
「シンヤ、少しテンションがおかしくない?」
あまりの熱量にか、若干引き気味になるレティシア。
「ははは、このあこがれのリボルバーを前に、興奮せずにはいられないってな」
「――そ、そう。でも、まあ、かっこいいと思う気持ちはわかるかも」
「おぉ! レティシアもわかってくれるか! もっと見てくれていいぞ。射撃もたまらないが、リロードするときもまたこれがいいんだよな! こうやってさ!」
レティシアに詰め寄り、目を輝かせながらリボルバーのいいところを熱くかたっていく。
「――あ、あはは……、これは深堀りしたら、ダメなやつだったかも……」
「シンヤー、レティシアさーん」
しかしそこへトワが茂みの奥から現れて。




