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補佐役として転生したら、ダメダメ美少女勇者さまのお世話をするはめに!?  作者: 有永 ナギサ
2章2部 冒険者

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レティシアと買い出し

 シンヤとトワはレティシアの買い出しに付き合い、お店をめぐっていた。

 相変わらず街中は多くの人々が行きいにぎやか。活気に満ちあふれていたといっていい。ちなみに人混ひとごみが苦手なトワは、シンヤの上着をちょこんとつかみながら歩いていた。


「レティシアちゃん、これおまけよ!」


 果物屋のおばさんがレティシアの買い物袋に、おまけの商品をいれてくれた。

 その好意に、ぱぁーっと顔をほころばせるレティシア。


「わー! ありがとう! おばちゃん!」

「おおっ、レティシアちゃん、ぜひ見て行ってくれよ! 安くしとくぜ!」


 そこへとなりの肉屋の店主の気前のよさそうなおじさんが、レティシアへ声をかけてくる。


「ほんとに!」

「いや、そんなしけた店より、ウチの方で買っていきな! 今なら出血大サービスだ!」


 しかしそこへ真向いの魚屋の店主のおじさんが割り込み、アピールしてきた。


「てめぇ、レティシアちゃんを横取りする気か?」

「はっ、これもレティシアちゃんのためだから、おとなしくしとけ」


 そして二人の店主が至近距離でガンのつけ合いを。


「こらこら、ケンカしない。ちゃんと両方寄っていくから」


 対してレティシアは、やれやれと両腰に手を当てながら仲裁ちゅうさいに。

 そのまたかといった感じから見るに、この二人のレティシアの取り合いは日常茶飯事らしい。


「まったくおじさん連中ときたら。はい、これレティシアちゃん、サクリちゃんと一緒に食べてねー」


 そんな中近くのお惣菜屋さんのおばさんが、彼らにあきれながらも包み紙をレティシアへ渡す。


「いいの!」

「レティシアちゃんにはいつもお世話になってるからねー」

「ありがとう! サクリも喜ぶよ!」


 レティシアははじけんばかりの笑顔でお礼を言う。

 そして彼女はたまった買い物袋を、シンヤの方へ渡してきた。


「シンヤ、これも持ってくれる?」

「ああ、それにしてもどんどん増えてくるな」


 シンヤの両手にはいくつもの買い物袋が。店へ寄っていくたびに、どんどん荷物が増えていっているのだ。


「フフッ、みんないい人だから、いっぱいおまけしてくれてどんどんたまっていっちゃうのよねー! 人の好意を無下にするのはあまりよくないし、ありがたく受け取らせてもらってるの!」


 レティシアはウキウキ気分で答えてくれる。

 なんと店主たちは彼女を見るや否や、親しげに接し値下げのサービスやおまけの品をプレゼントしてくれるという。これも彼女の人徳のなせる技なのだろうか。


「でもその分、冒険者として、みんなが困ってるときは全力で助けるよ! たとえどんな些細ささいなことでもね!」


 彼女はドンっとむねをたたき、力強く宣言を。


「ははは、持ちつ持たれつのとてもいい関係だな」

「レティシアお姉ちゃんだー! 遊んで! 遊んで!」

「おっ! あんたたち、今日も元気ねー!」


 話していると、小さな子供たちがレティシアにけ寄ってきた。

 すると彼女は子供たちに目線を合わせながら、気さくにおしゃべりを。


「レティシアの人気っぷりはすごいな」

「うん、見てて、ほほえましい気持ちになるよね」


 そして次々にレティシアに話しかけにいく人たち。明るい天真爛漫てんしんらんまんな彼女を中心に、みんな笑顔であった。

 ただレティシアはまたいろいろもらっていて、持たされる荷物が多くなっていき。


「まさかここまで増えるとは」


 両手にかかえきれないぐらいの荷物に、苦戦するシンヤ。


「フフッ、今回荷物を持ってくれる人がいるということで、みんないつもより多く持たせてくれてるみたいね」

「なるほど、いつもセーブしてる分、この機会に解放してきたわけか」

「さすがに重いでしょ。アタシも持つよ」

「荷物持ちを買って出たのはオレだ。ここで引き下がるわけには……」


 彼女の提案にことわりを入れる。

 この荷物は持たされているのではなく、シンヤが持つと言い出したのだ。買い出しに付き合っている以上、男手として荷物持ちをするべきだと。 ただ当初、ここまで量が増えるとは思ってもいなかったのだが。


「そう? じゃあ、がんばってね! 男の子! あとでなにかおごってあげるから!」


 レティシアはシンヤの背中をポンとたたき、ウィンクしながらエールを送ってくれる。


「おう」

「レティシアじゃねーか!」


 そこへ見るからに腕っぷしが強そうな30代の男が、シンヤたちに声をかけてきた。


「ランドさん、今帰ったの?」

「ああ、あの若造たちと一緒にな。例の山道の魔物が大量発生した件は、無事収束したからほかの連中もぞろぞろ戻ってくるだろ」


 話の流れからして彼も冒険者のようだ。

 しかもかなり強そうであり、ベテランなのがうかがえる。


「おつかれさま! そうだ、この二人が新しく冒険者になってくれたシンヤとトワよ!」


 レティシアがシンヤとトワに手を向け、紹介してくれる。


「おー、それはありがてー。となると今日の夜はアレか?」

 ランドは満足げにうなづき、なにやらレティシアに目くばせを。

「ええ、そのつもりよ」

「ハハハ、そいつは早く帰った甲斐かいがあったぜ。さっそく他の連中にも声をかけて、予定をあけさせとかないとな」

「レティシア、あれって?」

「秘密よ! 夜になってからのお楽しみってね!」


 レティシアは人差し指を口に当て、かわいらしくウィンクしてきた。


「おまえら買い出しか? 今からギルドのほうへ戻るから、その荷物を持って行ってやるよ。ここまでご苦労だったな、シンヤ」

「ははは、すごく助かります」


 ランドはひょいっと荷物を受け取ってくれる。


「そうだ、ランドさん、戻ってきたあの二人に、あとで北門を出た近くにくるよう言っといてくれる?」

「ははん、あっちの方もやりにいくのか。わかった、俺もあとで顔を出すぜ。ということでがんばれよ、シンヤにトワ」


 そしてランドは意味ありげにうなずき、シンヤたちを応援して去っていくのであった。





「へー、ってことはトワってサクリと同い年ね」

「そうだったんですね」


 シンヤたちはレティシアに案内され、アルスタリアの北門を抜けた平原に来ていた。ちなみに場所は北門を出てすぐの、街道から少し離れた地点。ここなら人の通りの邪魔にもならないとのこと。


「ちょっと気難しい子だけど、根はやさしいから仲よくしてあげてね」

「うん、でもわたしさっきの件で怒らせちゃったから……」


 トワはほおをポリポリきながら、肩を落とす。

 先ほど彼女がコーヒーを床にぶちまけ、さらに花瓶かびんも割ってしまった光景を思い出す。


「ふふっ、あんなハプニング日常茶飯事だから気にしなくていいよ。冒険者のみんながいろいろやらかしたのを、やれやれまたかって感じで対処してくれるのがサクリだから!」


 レティシアはトワの肩に手を置き、笑い飛ばした。


「サクリって苦労人なんだな」

「あの子すごくしっかりしていて頭もいいからね。みんなついつい頼っちゃうのよ。後処理はサクリに任せておけば大丈夫って」


 自慢の妹なんだからと、胸を張り得意げにかたるレティシア。


「あの、レティシアさん」

「それそれ、トワ、アタシに敬語なんていらないから。同じ冒険者の仲間として、そういう堅苦しいのはなしにしよう!」


 レティシアはトワの手をとり、にっこりほほえんだ。


「う、うん、わかった、そうする」


 するとトワは少しはずかしそうにしながらも、素直にうなづく。


「トワ、さっきから見てたけど、レティシアに対してあまり人見知りしてないよな」


 極度の人見知りであるトワのことだから、レティシアに対してもキョドると思っていた。しかし見ていると少し遠慮がちではあるものの、案外普通にやりとりしていたという。どこかなついている感じにだ。


「そうだね。レティシアさんすごく気さくで、明るくてとっても話しやすい」

「ははは、その気持ちわかるよ。天真爛漫さというか、人懐っこさというか。レティシアが笑顔だとこっちまで楽しくなるというか」

「だよね! だよね!」


 シンヤの意見に、トワは心から賛同する。


「――そ、そんなにおだててもなにもでないからね……」


 これにはテレくさそうに視線をそらすレティシア。

 ただまんざらでもなさそうだ。


「だからできればレティシアさんと、もっと仲よくなりたい」

「うれしいこといってくれるね! もちろん大歓迎よ! フフッ、まさかトワみたいな可憐かれんで清純派な女の子が、冒険者になってくれるだなんて! もう感動が止まらないよ!」


 トワの思いに、レティシアは両腕りょううでを広げて満面の笑顔を。


「それってトワみたいな子は、あまりいないってことか?」

「冒険者になる人って、だいたいクセが強いのよね。だからトワみたいな素直でかわいい子、すごくめずらしいよ! いっぱいかわいがろっと!」


 レティシアはトワの頭をなでなでしてで始める。


「え、えへへー」


 対して気持ちよさそうに目を細めるトワ。


「さて、いい感じにトワとも打ち解けたところで、そろそろ冒険者についていろいろレクチャーしていこっか!」


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