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補佐役として転生したら、ダメダメ美少女勇者さまのお世話をするはめに!?  作者: 有永 ナギサ
1章4部 トワの答え

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勇者と補佐役

 シンヤはトワの要望で、昨日彼女と初めて出会った、リザベルトの街を見下ろせる高所地帯に来ていた。一時期赤くて不気味な空になっていたが、現在それが嘘のよう。手を伸ばせば届きそうなほどの、きれいな満天の星空が広がっている。それはまるで昨日トワと会ったときかのように。心地よい夜風が吹き抜けており、草木の揺れる音や虫の鳴き声が響くだけでとても静か。ゆったりとした時間が流れていた。


「ここに来るのも昨日ぶりだね。あれからまだ一日しかたってないのに、すごい濃密な時間を過ごした気がするよ」


 トワはリザベルトの街を見つめながら、感慨かんがい深そうに笑う。


「フローラさんやリアちゃんといった頼もしい仲間ができて、少し苦い思い出の初戦闘。それから戦うための答えを見つけて、ダンジョンに乗り込んでの強敵との戦い。極めつけはミルゼちゃん、ハクアさんみたいなラスボスクラスの敵との邂逅かいこうまで。あはは、もういろいろありすぎて、目が回っちゃうほどだよ!」

「ははは、確かに。転生したばっかなのに、怒涛どとうのイベントの数々だったもんな」

「うん、そしてそんなわたしの物語のすべては、この場所から始まったんだよね……」


 瞳をそっと閉じ、むねをぎゅっと押さえるトワ。まるで大切な思いでをかみしめるかのように。


「いや、もっと前があったはずだろ。牢屋ろうやに入れられ、捕まってたじゃないか」

「あんな散々な目、ノーカンだよ、ノーカン! わたしの輝かしい冒険の一ページ目に、まったくふさわしくないもん!」


 シンヤのツッコミに、トワは両腕をブンブン振りながら抗議してくる。


「そうか? トワらしさもあり、インパクトもあっていいと思うけど」

「不名誉にもほどがあるでしょ! もう、せっかくいい感じに思い返してたのに、水を刺さないでよ!」


 トワは両腰に手を当て、まったくもーとほおを膨らませてきた。


「ははは、ついな」

「次は自重してよね。ごほん、そしてそんなわたしの物語のすべては、この場所から始まったんだよね……」

(やり直すんだ)


 彼女はまるで何事もなかったかのように、再び物思いにふけりだす。そのことでツッコミを入れたいが、怒られそうなのでここはこらえることに。


「ここでシンヤと出会った、あの瞬間から!」


 トワはシンヤの顔を下からのぞき込み、花が咲いたかのような満面の笑顔を。


「あのときはいきなり知らない人に声をかけられて、ものすごくびっくりしたんだからね。でも落ち込むわたしをなぐさめ、勇者として認めてくれた。それまで散々な扱いだった分、もううれしくてうれしくて。運命の人だって、仲間に誘って。そしたらわたしの事情を知ってたからというオチで。ほんとあのときの感激を返してって話だったよ」

「ははは、そんなこともあったな」

「――まあ、そこからシンヤがわたしの補佐ほさについてくれるようになって、うん。今思い返すとめちゃくちゃ助けられたよね。みんなとの出会いの機会や、人見知りに対するフォロー。戦闘面でのサポートはもちろん、はげましだったり、親身になって相談に乗ってくれたり、あはは、もうわたしにはもったいないぐらいの補佐役だよ」


 不満げに懐かしんでいたトワ。しかしそれもつかの間、少しテレくさそうにほおをかき、シンヤへ信頼しきった瞳を向けてきた。

 これには頭の後ろをかきながら、テレるしかない。


「お気に召してくれたなら、なによりだ。そういえば一つ気になってたんだが、トワってオレに対しあまり人見知りしてなかったよな?」


 テレくささをごまかすためにも、気になっていたことをたずねてみる。

 彼女の人見知りは筋金入り。視線を合わせられず、うまくしゃべれない。そんなキョドりっぱなしのトワであったが、シンヤに対しては会ってすぐになついてくれたという。


「――えっと……、それは、その……。わたしの、わたしだけの補佐役ということに、感極まっちゃったというか……。ほら、女の子は誰だって守ってくれて、支えてくれる男の人にあこがれるものでしょ。それが漫画やアニメみたいに、急に現れたんだよ! そんなの舞い上がっちゃうに決まってるじゃん! もう内心ウキウキでシンヤに接してたよ! ああ……、わたしのナイトさま……、みたいなふうにね!」


 トワは両ほおに手を当て、なにやらもだえながら告白を。


「あとシンヤってたまにいじわるだけど優しくて、わたしのダメダメなところも全部受け止めてくれるもん。だから近所の親しいお兄さんみたいな感じで、すごく安心ができるというか……。その分、つい甘えたり、頼っちゃったりしちゃうんだよね」


 それから彼女は手をもじもじさせながら、チラチラと上目遣いをしてくる。


「――そ、そうなのか……」

「――ねえ、シンヤ、これからもわたしの補佐役でいてくれるよね?」


 テレくさくてしかたがなくなっていると、トワがシンヤの上着をぎゅっとつかんで心細そうにたずねてきた。


唐突とうとつになんだよ?」

「だってシンヤ、ハクアさんに補佐役になってほしいって、もうアピールを受けてたじゃん。だからわたしを捨てて、あの人の補佐役になっちゃうんじゃないかって不安で、不安で……」

「おいおい、なんでそうなるんだよ」

「ハクアさんは美人でスタイルもいいし、強くてなんでもできて、まさに完璧超人って女の子だもん。わたしが勝ってるところなんて、なにひとつない……。シンヤだってどうせ補佐するならこんなダメダメなわたしより、ハクアさんみたいなすごい女の子の方がいいはず……。それにわたし、シンヤにはいっぱい迷惑をかけて、振り回しっぱなしだし、情けないところも何度もみせてる。もう愛想つかされちゃってても、おかしくないよね……」


 トワはシンヤの胸板に顔をうずめ、悲痛げにかたってくる。そんな彼女の身体は小刻みに震えていた。


「あのな。確かにトワはドジで怖がりで、いろいろ不器用でおまけに極度の人見知り。ほんと世話の焼ける女の子だ」

「うぐっ!? 面と向かって言われると、ちょっとくるものがあるね、――あはは……」

「だけどオレはトワと完全無欠のハクアみたいな女の子なら、トワの方を選ぶぞ」


 力なく笑うトワのほおに手を当て、まっすぐな瞳で告げた。


「え!? なんで!?」

「だってハクアとかなら、別にオレの補佐なしでも一人でなんでもやれそうだろ。だけどトワだとそうは言ってられない。そのあまりのダメダメっぷりに、見ていられないレベルだし。ははは、もう危なっかしすぎて、とても一人になんてさせておけないさ」

「うぐ!? それもそれで複雑な気分……」

「完璧よりも少しダメな方が愛嬌あいきょうがあって、オレはわりと好きだぞ。手のかかる子の方がかわいいっていうしな。それにトワみたいな美少女に頼られるのも、正直悪い気はしないというか……」


 トワの頭をポンポンしながら、笑いかける。ただ最後のほうは視線をそらしながら。


「――シンヤ……、じゃあ、これからもずっとわたしの補佐役でいてくれる?」

「言ったろ。トワの夢を叶える姿を、見届けさせてくれって。だからそのときまでオレはずっと、キミについていくさ」

「――うぅ……」


 万感の思いを込めて告げると、トワの瞳から涙が。


「おい、なに泣いてるんだよ!?」

「――だって……、だって……、シンヤがわたしの補佐役でいてくれることが、すごくうれしくて……」

「なんだ、うれし泣きかよ。大げさだな」

「ぐすん、わたしにとっては死活問題なんだもん! シンヤの補佐なしに、この先うまくやっていく自信なんてないよ! だからほんとによかった! これからもずっと一緒にいてよね! どっかいっちゃ、イヤだよー!」


 トワはシンヤにガバっと抱き着き、必死にお願いしてくる。


「ははは、こんなにも頼られたら、補佐役冥利みょうりに尽きるってもんだな。よしよし、ほら、いつまでも泣いてたら、勇者として恰好かっこうがつかないぞ」


 そんな彼女の髪をなでながら、やさしくさとす。


「あはは、そうだよね。リアちゃんが旅の仲間になってくれたことだし、少しはしっかりしないとね!」


 するとトワは気合を入れるためほおをパンパンたたいて、にっこり笑った。


「おう、その意気だ。これからやるべきことは、山ほどあるんだからな。道中勇者として困ってる人を助けるのはもちろん、邪神側の手がかりを集めたり、金銭面の問題や旅の仲間集め。あと各勢力の情勢の把握はあくや、協力者もほしいところだな」

「あはは、そういう込み入った問題は、全部シンヤに任せるよ!」

「おいおい、丸投げかよ」

「だってシンヤはわたしの補佐役でしょ? この勇者としての大冒険がうまくいくかは、すべてシンヤにかってるんだから! 期待してるね!」


 トワは胸に手を当て、ウィンクしながら笑いかけてくる。


「やっぱりトワの補佐役、やめようかな……」

「そんなこと言って、本当は頼られてうれしいくせにー」

「調子に乗るなよ」


 意味ありげな視線を向けニヤニヤするトワの頭を、軽くチョップする。


「イタイよ!? シンヤー……」

「トワも一緒にがんばるんだからな」


 被弾箇所を押さえ涙目になっている彼女の髪を、少し強めにくしゃくしゃしながら言い聞かせた。


「わかった、わかったからー」

「まったく」

「もー、ちょっとした冗談だったのにー」


 トワは髪をセットし直しながら、前に歩いていく。


「――女神さま、わたしは勇者として、シンヤと共にこの世界を必ず救ってみせます。だからどうか見守っていてくださいね……」


 そして彼女は瞳を閉じて祈るように手を組み、心からの宣言を。


「よし、さあ、行こう! シンヤ! わたしたちの輝かしい冒険の日々が待ってるよ!」


 トワはシンヤの腕をつかみグイグイ引っ張りながら、満点の星空を指さす。キラキラとした満面の笑顔で、これからの冒険の日々に思いをはせながら。


「おい、そんなに引っ張るなよ」

「ほら、早く、早くー」


 待ちきれずタッタッタッとはずむ足取りで駆けていき、シンヤのほうへ大きく手を振って急かしてくるトワ。


「あ、あわわ!?」


 だが彼女はふとバランスを崩して、盛大せいだいにこけてしまった。


「――うぅ……、シンヤ~……」


 そしてトワは涙目になって、助けを求めてくる。


「ははは、ほんと世話のかかる勇者さまだ」


 先が思いやられながらも、トワらしいとほほえましい気持ちに。そんなダメダメな勇者である彼女を、これからもしっかり支えなければと心の中で決意し、手を貸しに行く。


(クスクス、~~~~~~~~)

「うん?」


 ふと清廉せいれんな鈴の音が鳴ったかと思った瞬間、後から誰かになにかをささやかれた気がした。

 ただ振り返ってもそこに誰もいない。なんとなくだがこの始まった旅路を祝福されている。そんな気がしたという。そして一瞬脳裏に、手を差し出し微笑みかけてくれる少女の姿が浮かぶが、またすぐに消えていってしまった。


「ふむ」

「シンヤ、どうしたのかな?」

「ははは、いや、なんでもないさ」


 そしてトワを助け起こし、わいわい話しながら街へと戻るシンヤたちなのであった。






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