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補佐役として転生したら、ダメダメ美少女勇者さまのお世話をするはめに!?  作者: 有永 ナギサ
1章4部 トワの答え

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決着



「そもそも攻撃魔法を斬るとか、そんな怖いことできるわけないよ! あれやったあと、余波で痛いんだよ!? それにもし失敗したら、痛いどころじゃすまないし!」


 両腕を胸元近くでブンブン振りながら、必死にうったえてくるトワ。


「――ははは……、そうきたか……」


 あまりに彼女らしい言い分に、頭を抱えるしかない。


「どうやらワレにも勝機が見えてきたようだな」

「――あ、やばい……」


 なんと不敵な笑みを浮かべるガルディアスは、黒雷の剣をしまい両腕をかかげだしたのだ。その両手には黒雷が今か今かとほとばしっていた。どうやら魔法で戦う気満々のようだ。今まで効かず足止め程度しかならないと思っていた魔法が、こうも彼女に効果的だと知ったのだ。魔法で牽制けんせいすればトワは攻めて来れない。それならばもはや極光も怖くないと。


「なぜ先ほどの力を使おうとしないのかは知らんが、それなら好都合というものだ! 黒雷の嵐よ!」 


 カルディアスの掲げた両手の上空に、漆黒の雷で構成された球体が出現。しかもその規模は次第に膨れ上がり、約三メートルほどの黒雷の塊に。


「消え失せろ!」


 そして次の瞬間、黒雷の塊からシンヤたちに向けて、八発の漆黒の雷撃が降りそそいだ。


「ひぃぃっ!? 雷が!?」

「バカ! ぼさっとしてないで、かわすぞ!」


 おびえて動けないトワを引っ張って、後方へと逃げる。

 その直後シンヤたちがさっきまでいた周辺が、雷撃によって薙ぎ払われた。


「逃がすか!」

「あわわ!? またくるよ!?」


 やり過ごしたと思いきや、すぐさま次の雷撃が雨のように降りそそいでくる。

 見た感じ一発一発の雷撃の威力は弱そうだがその分、数による制圧力に特化しているようだ。


「こっちだ」

「う、うん!」


 とっさに神殿の荘厳そうごんな柱の影へと、トワを誘導し隠れた。

 シンヤならホークアイで回避可能だが、雷におびえ足がすくんでいる彼女だとそれは難しそうだ。なのでここは遮蔽物に隠れ、凌ぐべきだろう。ただここでやり過ごせるのは少しの間だけ。なぜなら別の雷撃が、すでにこの柱に降りそそいでいるのだ。もはや壊されるのも時間の問題。早いとこなんとかしなければ。


「トワはあの中に飛び込んで戦えるか?」

「ムリムリムリ!? 今すぐふとんの中にもぐりたいぐらいなんだから!?」


 トワはこれでもかというほど首をブンブン横に振り、シンヤの上着にしがみついてくる。


「――だよな……。オレがなんとかするから、トワはいったんここに隠れてろ」

「シンヤ、まさかあの中に行く気なの?」

「このままじゃやられるのを待つだけだからな。あの雷撃をホークアイでかいくぐって、あのヤロウにリボルバーをぶちこんでくるよ」

「でも危なすぎるよ!」

「ははは、トワを守れるなら、これぐらいの危険どうってことないさ。だからここはオレに任せとけ」


 トワの頭をなでながら、心配かけないようにやさしく笑いかける。


「――シンヤ……」

「じゃあ、行ってくる!」


 そして柱の陰から飛び出し、ガルディアスの方へと走った。


「勝負だ! ガルディアス!」

「まずは小僧からか。いいだろう、キサマとの因縁もここで終わりにしてやろう」


 すると敵の標的がシンヤとなり、幾多の雷撃が降りそそぐ。


(よし、かわせる!)


 そんな荒れ狂う雷撃の嵐の中、敵との距離を詰めながら次々に黒雷をかわしていく。

 常人にとっては速く鋭い死の閃光だが、シンヤには敵の攻撃を事前に察知するスキル、ホークアイがある。よってその軌道や射程がなんとなくわかるのだ。よって察知した攻撃範囲から逆算し、回避行動をとることで紙一重にかわすことができた。そのためいくら雷撃が降りそそいだとしても、シンヤにとってそこまで脅威ではないという。


「隙だらけだぜ!」


 ガルディアスに向かって、リボルバーを三発ぶっぱなした。

 敵は今回両腕を掲げ、大技に集中している。なので今なら黒雷の剣ではじかれる心配はない。よってダメージ与え放題であった。

 しかし。


「ふん」

「なにっ!?」


 ガルディアスに飛翔ひしょうする銃弾であったが、黒雷の塊から放たれる雷撃によって撃ち落とされてしまった。どうやらシンヤの今の銃弾の威力では、雷撃に飲み込まれ消されてしまうらしい。


(この距離からの銃撃じゃ威力不足だし、対応される。こうなったらもっと距離を詰めて、至近距離から撃ち込むしかない!)


 降りそそぐ雷撃をやりすごしながらも、さらに前へ。発生源から近づいているのと、雷撃の狙いがだんだんきわどくなっているのもあってか、完全にかわすのが難しくなってきている。そのため徐々にあちこちかすめ、ダメージが。とはいえ直撃は避けられているため、ここは止まらず距離を詰めるべきだ。そしてとっておきの秘策で、ガルディアスに重い一撃を与える算段であった。


「よし! ここまで詰めたらいける! 覚悟しやがれ! ガルディアス!」


 敵との距離が八メートルほどまで詰めれたため、そろそろ打って出ることに。リボルバーの銃口を標的に合わせ、かまえる。


「まさか罠にこうも簡単にかかるとな」

「なっ!?」


 しかしここで緊急事態が。なんと黒雷の塊が急激に活性化し出したのだ。

 その瞬間、敵の次の攻撃がどのようなものかを察知。そしてそのあまりの攻撃範囲にさとってしまう。次の敵の一手、シンヤではどうあがいてもかわせないことに。


「消え失せろ!」


 ヤバイと思ったまさにそのとき。活性化した黒雷の塊から無数の雷撃が放たれた。

 なんとそれはガルディアスの前方すべてを薙ぎ払う雷。かわせる隙間がほとんどなく、しかもそれが連続で降りそそぎ続けるのだ。距離を詰めすぎたのと、攻撃に集中したため範囲外にもはや逃げることはかなわない。

 どうやらガルディアスはこれまでの戦いで、シンヤに対する対抗策を考えていたらしい。全体を一気に薙ぎ払うことで、回避そのものをさせないという方法を。さすがにこれには回避に自信があるシンヤでも、お手上げ。一番とられたくない戦法であった。


「かわせない!? くそ!」


 ホークアイでどう動いても当たると確信し、防御態勢をとるしかない。

 いくらマナで魔法を軽減したとしても、あの掃射をくらったらタダでは済まないだろう。思わず目を閉じたそのとき。


「シンヤ!」

「え?」


 なんとトワがものすごい勢いで疾走し、シンヤの前に飛び込んできたのだ。

 これにはあまりにも予想外。彼女の嫌いな雷の魔法が無数に降りそそいでいるのにも関わらず、怖じ気づに飛び込んできたのだから。さっきのガクブル状態の彼女からは、想像もできなかったといっていい。


「極光よ!」


 トワが極光をまとった剣を前に突き出し、ガード体勢を。

 これにより降りそそぐ雷撃は、あふれんばかりの極光の光に次々と阻まれていく。


「こしゃくな! このまままとめて八つ裂きにしてくれるわ!」


 だがここでだまっているガルディアスではない。今が二人まとめて倒すチャンスだと、さらに魔法へ力を入れる。それにより雷撃がシンヤたちがいる一点に絞られていき、集中砲火を。

 そんな押し寄せる雷撃の数が数だけに、極光の光が弱まっていく。いくら闇を払う極光の光とはいえ、ここまで受け続けたらさすがにきついらしい。そのため次第に受けきれなくなって、雷撃の余波が押し寄せてきた。


「がんばれ、わたし! 雷は怖いけど、シンヤが傷つく方がもっと怖いんだから!」


 耐えながらも、必死に己にかつを入れるトワ。そんな彼女の身体は震えており、怖くて怖くて仕方がないのがわかる。しかしシンヤのため、恐怖を押し殺して駆けつけてくれたらしい。そして今シンヤを守るため、全力をそそいでくれていた。


「――トワ……」


 そのシンヤのために勇気を振り絞り立ちふさがる健気な姿に、もはや感動せずにはいられない。


「ッ! やるなら、今しかないよな!」


 だがいつまでも彼女を見守ってはいられない。このままでは雷撃の集中砲火にトワが耐え切れず、二人まとめてやられる可能性が。なので早くなんとかしなければならなかった。

 防いでくれているトワの横を抜け、リボルバーをかまえながら雷撃の中へと突っ込むシンヤ。さっきより降りそそぐ雷撃の数が少なくなっているため、今ならば間をかいくぐりガルディアスに攻撃を仕掛けられるはずだ。


「チッ!? くるか!? 小僧!」

「くらいやがれ!」


 迎撃してくる雷撃をホークアイで最小限の被害に抑えながら、とっておきの一撃をお見舞いしようと引き金を引いた。そして放たれた必殺の銃弾は、またたく間にガルディアスへと向かっていく。


「それぐらい撃ち落としてくれるわ!」


 だが銃弾目掛けて漆黒の雷撃が放たれ、そのままシンヤの攻撃は飲み込まれてしまった。


「ははは、今回の弾丸は特別性なんでね」

「なんだと!?」


 しかし次の瞬間、飲み込まれたと思った銃弾が雷撃を食い破ったのだ。そして標的へ猛威を振るおうと、くうを切りながら突き進む。

 それもそのはずあの銃撃に使った弾丸は、とっておきの代物。生成するときマナを圧縮しまくり、威力を大幅に上げた弾丸なのだ。ゆえに連射性に優れ威力が落ちた雷撃では、止めることかなわない。シンヤにとってまさに必殺の一撃であった。ただこの技だが、少し難点も。マナをかなり消費するのと、限界以上に圧縮しているため、放っておくとマナがどんどん四散していき通常弾に戻ってしまうという。なので生成後やリボルバーに装填したあとも、常に意識を集中させ圧縮のヒモを緩めないようにしないといけないのだ。そのため今のシンヤでは、一発を維持するのが限界。必殺の弾丸で連射といった芸当はできそうになかった。


「グハッ!?」


 シンヤの必殺の一撃は雷撃で少しそらされたらしく、ガルディアスの右肩を盛大に撃ち抜く。しかも今回のは威力が高いため、くらった側の反動もでかい。ガルディアスは後方に大きくよろめき、体勢を崩した。


「トワ!」

「わかってる!」


 そこへ全速力で駆け、ガルディアスに突っ込むトワ。

 今の攻撃で降りそそいでいた雷撃も止まり、彼女の進撃を脅かすものはなくなった。ゆえにあとは斬るのみ。


「これでとどめ!」


 トワは体勢を崩した敵のふところに。そして極光をまとった剣を振り降ろし。


「極光よ! 斬り裂けーーー!」


 そして魔を払うまばゆい極光の一閃が、ガルディアスを見事斬りせるのであった。













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