表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
補佐役として転生したら、ダメダメ美少女勇者さまのお世話をするはめに!?  作者: 有永 ナギサ
          1章 補佐役と勇者
1/117

プロローグ

1章 補佐役と勇者

 不気味な黒い雲におおわれた空の下。木々が風でざわめく暗い森の中。シンヤたちの目の前には禍々(まがまが)しいオーラをまとう魔人の男が、攻撃しようとしている。


「――う、うぅ……、戦わないと……、戦わないといけないのに……」


 そんな中、銀髪のはかなげな雰囲気をまとう少女がその場にくずれ落ち、恐怖のあまり震えながら自身の肩を抱いていた。

 だがそれも仕方のないことだろう。確かに彼女は女神により、世界を救うためつかわされた勇者。しかしいくら魔を滅する強大な力を与えられているとはいえ、この世界に転生する前はただの普通の女の子だったのだ。そんな少女がいきなり命をけた戦いに、身を投じられるだろうか。敵への恐怖心、傷つくのはもちろん最悪の場合命を落とす可能性や、のしかかるプレッシャー。さまざまな要因が葛藤かっとうとなり、締め付けられるのも無理はない。むしろ戦う覚悟かくごを持てという方が、どうかしている。


(――ははは……、実際オレもそこまで覚悟とかはないんだけどな)


 思わず心の中で笑ってしまう。

 もともと勇者の少女に任せていれば、すべて片が付くだろうとたかをくくっていたシンヤだったのだ。ゆえについてきたものの戦闘に参加して戦う気はあまりなく、サポートするぐらいの軽い気持ち。そのため正面切って目の前の強敵と戦うとなると、怖気おじけづきそうでたまらなかった。


(だけど戦わないと! こんなところで彼女の想いを、夢を踏みにじらせるわけにはいかない!)


 シンヤは知っている。どれだけ彼女がとうとい理想を抱いて、勇者としての責務を引き受けたのかを。生前に重いやまいのせいでずっと助けられてきた少女。だからこそ今度は自分が誰かを助け、笑顔にしてあげたい。その純真な想いとあこがれを。そんな少女の健気な夢を、こんなところで台無しにされるのが我慢ならなかったのだ。


「安心しろ。オレがなんとかするさ。なんたってオレはキミの、補佐ほさ役なんだからな」


 少女の頭にポンっと手を置き、やさしく笑いかける。


「――シンヤ……」


 すると少女は胸をぎゅっと押さえながら、うるんだまなざしを向けてきた。


(ははは、そういえばこんなこと初めてかもしれないな。ここまで本気になるなんて)


 生前は本気でやりたいことが見つからず、ただ流されるだけのつまらない人生を過ごしてきた。そんなシンヤであったが、ここにきてようやく胸を張って宣言できる自身のやりたいことを見つけた気がしたのだ。そう、すべてはこの少女の夢をかなえてあげたいと。


「さて、始めるとしようか。その眉間みけんに風穴を開けてやるから、覚悟しろよ!」


 そしてシンヤは愛銃のリボルバーを魔人の男へと突き付け、声高らかに宣言するのであった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ