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最終話 新たなる旅へ

「やったんだな、僕たちが伝説の階層守護モンスターを打ち倒したんだな……!」


 未だに実感が湧かず、夢のような感覚だ。


 人類が階層守護モンスターの元まで辿り着き、倒したのは記録にある中では数十年振りのことで、歴史的偉業と言える。


 マロンが、湖中央に取り残されていたキャト族の仲間にこれまでの事情を説明する。


「ナットさん、おかげで仲間たちを助けることができました。ありがとうございましたニャ!」


「「「ありがとうございましたニャ!」」」


 キャト族の皆さんが一斉に頭を下げる。空腹で、全員フラフラだ。


「とりあえず、皆さん食事にしましょう」


 水位の下がった湖では、魚がほとんど身動きの取れない状態になっており、獲り放題だった。獲った魚は片っ端からアルカの火で焼いていく。


「一週間ぶりの食事ニャ! 美味しいニャ! 美味しいニャ!」

「諦めなくてよかったニャ!」

「お代わりが欲しいですニャ!」


 キャト族の皆さんが、涙を流しながら魚を頬張る。ネコの姿のキャト族の皆さんが美味しそうに食事をしているのをみると、なんだか癒される。


 僕も魚を食べながら、メネストサウルスの巨体を眺める。


 子供の頃に抱いた、遠すぎる夢。『S級ダンジョンの最奥に到達する』という目標に、本当に手が届くかもしれない。


 食事を終えた後、僕はインスタントゴーレムを何体か作ってメネストサウルスを解体する。


「……あった! メネストサウルスの魔石だ!」


 大きさは、フレアウルフのものとは比べ物にならないほど巨大だ。雪のように美しい白色をしており、手で触れるとひんやりしている。


「伝説の階層守護モンスターの魔石だ。市場に出したら1千万ゴールド……いや、数億ゴールドの値がつくだろう。でも、これは売らずにアルカの改造に使う」


「いいのですか!? そんな高価なものを私に使ってしまって!?」


「ああ。一度魔石を手放してしまったら、二度と買い戻すことはできなくなる。僕は階層守護モンスターの魔石を使って、ゴーレムがどこまで強くなれるか。その可能性を見てみたいんだ」


「わかりました。どんな形態を追加していただけるのか、今から楽しみです!」


 この魔石を使って追加した形態は、間違いなくこれまでのどの形態よりも強くなる。僕も、アルカがどれだけ強くなるか楽しみだ。


「そして、メネストサウルスの残りの素材は冒険者ギルドに売ろう。一度地上に戻って、素材の出張買取の依頼をしないとな。階層守護モンスターを倒した報告もしないといけないし」


 というわけで、僕たちは一度地上に戻ることにした。


––––––––


「……以上が、階層守護モンスターを倒した経緯です」


 冒険者ギルドは、騒然としていた。


 僕はカウンターで冒険者ギルドの支部長相手に報告しているのだが、他の冒険者たちが後ろで熱心に聞き耳を立てているのが気配でわかる。


「そうか……まさか私の代でそんな歴史的偉業に遭遇できると思わなかったよ。この仕事に就いていて良かった。心の底からそう思うよ」


 ギルドの支部長さんが、感慨深そうにそうこぼす。


「それで、ダンジョン奥地への、素材の出張買取をお願いしたいのです。アルカの魔法では、一部しか格納できなかったので。頭部を持ってきたので、これで全体の大きさを推測してください」


 ギルドの前の広場に移動し、アルカが異空間にしまっていたメネストサウルスの頭部を取り出す。


「こ、こんな巨大なモンスターを倒したというのか!?」


 冒険者ギルド支部長さんが目を見開く。そして、冒険者ギルドのカウンターの奥に走っていき、重そうな袋を抱えて戻ってくる。


「2000万ゴールドある! これが今、冒険者ギルドにある現金全てだ! とりあえずこれを素材の前金として受け取ってくれ! すぐに現金は用意できないが、後1億ゴールド払う! もちろん、魔石以外の素材の値段だ」


「え、魔石以外の部位もそんなに高く買ってもらえるんですか!?」


「当然だ。階層守護モンスターについて研究できるまたとない機会だからな。そして、研究に使い終わった素材は、武器に加工して冒険者に売却して……」


「え!? 階層守護モンスターの素材を使った武器が市場に出るのか!?」

「支部長さん、それはいつ、どこで買えるようになりますか!?」

「手に入ったら、俺は一生の宝にするぜ!」


 聞き耳を立てていた冒険者たちが一斉に冒険者ギルド支部長に詰め寄って、辺りは一時騒然とした。


 階層守護モンスターの素材を使った武器は、後程一定ランク以上の冒険者に抽選方式で販売されることとなった。


「……では明日、冒険者ギルドの輸送要員を、階層守護モンスターを倒したという湖に向かわせる」


「わかりました。お待ちしています」


 現地で階層守護モンスターの素材の引き渡しが終わったら、いよいよダンジョンの第二階層に挑戦だ。


 第二階層は一体どんな風景なのか。どんなモンスターが待っているのか。そして、ダンジョン最奥には何が待っているのか。


「楽しみですね、マスター」


「ああ。今からワクワクしているよ」


––––––––


「今回のあなたたちの仕事は、ナットさんの倒した階層守護モンスターの素材を、傷つけないように地上に運ぶことです」


 冒険者ギルド本部所属の呪術師メルツは、強制労働施設“裏冒険者ギルド”の冒険者たちを引き連れてS級ダンジョン奥地に来ていた。


「勇者たるこの私に、そんな誰にでもできる雑用をさせようというのか! もっとモンスターの討伐とか、冒険者らしい仕事をさせろ!」

「しかも、なんでよりによってナットの倒したモンスターの素材運びなんだ!」

「兄者のいう通りだぜ! 俺たちに階層守護モンスターを倒させろ! 俺たちにかかれば階層守護モンスターなんてイチコロだぜ!」


 冒険者ギルドにとって、階層守護モンスターの素材がどれだけ重要なものか、素材を運ぶ仕事がどれだけ大変かは事前に何度も説明した。だが、ナットの元パーティーメンバー、元勇者ハロンとキキ・カカ兄弟は全く話を理解していない。


 管理役のメルツはため息をついた。


「……あなたたちが運ぶのは、階層守護モンスターの内臓です。武器の素材としては使えませんが、階層守護モンスターの生態を知るための大事なサンプルです。衝撃に弱いので、ゆっくりでいいので慎重に運んでください。慎重にですよ、慎重に」


 メルツは、荷台に乗せられた巨大なビンを指し示す。中には、液体に巨大な内臓が浮かんでいた。


「まかせておけ! 勇者の名にかけて、地上まで最速で運んでみせる! 行くぞお前たち! 荷台の後ろを押せ!」

「おうよ! 俺たち兄弟のコンビネーションにかかれば、こんな仕事なんでもないぜ! 全力で押すぜ!」

「兄者のいう通りだぜ! 他の連中より早く、素材を地上に運んでやるぜ!」


 3人は、勢いよく荷車を押し始める。


 そして、岩につまづいて荷車がひっくりかえる。


“ガッシャアアアアン!”


 階層守護モンスターの内臓を詰めた瓶が割れて中身が散らばる。


「馬鹿な、勇者であるこの私が荷運びに失敗しただと!?」

「一体何が悪かったっていうんだ!?」

「荷車の下敷きになっちまった! 引っ張り出してくれ兄者!」


 メルツはそんな様子を見て、大きくため息をついた。


「……弁償してください。3000万ゴールド分、3人とも強制労働4年延長です」


「「「そんな〜!!」」」


––––––––––––––––––完––––––––––––––––––


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