【ざまぁ回】第40話 元勇者、強制労働施設【裏冒険者ギルド】で奴隷紋を刻まれる
――強制労働施設、裏冒険者ギルド。
今日はここに、元勇者ハロンが連れてこられた。
今回も呪術師メルツが付き添っている。
それをキキとカカが見つけて、笑顔で駆け寄ってきた。
「あー! 勇者様もここに来たんですね!」
「やーい勇者様の借金債務者ー!」
「黙れ! 今の私は勇者ではない!」
「「えーと、じゃあ元勇者様だ」」
「そんな屈辱的な呼び方をするな! ハロンと呼べ!」
そのとき、ふとハロンの目がキキとカカの腹に止まる。
「そ、そのピンク色したハートの紋様は、まさか……!」
愕然とするハロン。
「本で読んだことがあるぞ、施された者をえっちな気分にさせて、えっちな仕事をさせやすくするという紋様だな! もしや私にもそんな仕事をさせる気か、おのれ裏冒険者ギルドめ! 許せぬ!」
「していません。そういったクエストは裏冒険者ギルドも扱っていないので……」
「だが、私の身体は好きにできても、私の心までは好きに出来んと知れ……!!」
「どうしましょう。この人話を聞いてくれない……お姉ちゃん、助けて……」
呪術師メルツは、少しくじけかけていた。
「こほん。ハロンさん、あなたの右腕には奴隷紋を刻みました……。逃げようとしたり命令に逆らったりした時に電流が流れます」
ハロンの右腕には、星型の青い奴隷紋が刻まれていた。
「施設の説明です……。あちらにトイレがあります。その隣の扉は地上への通路ですが、絶対にそこから逃げてはいけませんよ……」
「分かった。ところで少し、用を足しに行かせてもらうぞ。間違って隣の扉を開けてしまうかもしれんがな」
”ビリビリビリッ!!”
「ぐわああああああああぁ!」
逃げようとしたハロンの身体に電流が流れる。
そしてハロンはよろめいて、近くにいたキキとカカの腕を掴む。ハロンの腕を伝って電流がキキとカカにも流れた。
”ビリビリビリッ!!”
「ぐああああああ! なんで俺たちまでええええええ!?」
「こんなに人の話を聞かないなんて……。ナットさんは、こんな人達とパーティーを組んでいたんですね、お気の毒に……」
呪術師メルツが手帳をめくる。
「ここ裏冒険者ギルドでは、毎日クエストを強制受注してもらい、その報酬金で借金を返済してもらいます。今日のクエストは、闘技場の決闘の後片付けです。ステージを片付け、観客席の掃除をしてもらいます」
「ことわる。勇者に値するこの私が、なぜそんな雑用のようなことをやらねばならないのか!」
「俺も嫌だぜ、そんな下っ端みたいな仕事! なあ弟よ!」
「兄者の言うとおりだ! もっと冒険者らしい仕事をさせろー!」
”””ビリビリビリッ!!”””
そのとき、命令を拒否したハロンたちに電流が流れた。
「「「ぎゃああああああああああああああぁ!!」」」
「だから命令を拒否したら電流が流れると……説明したのに……この人達、話を聞かなさすぎる……。助けてお姉ちゃん……。引き取って、ナットさん……」