第35話 ゴーレム技師、新しい力で他の受験者たちを撃破していく
「マスター、テントにいた3人を撃破しました。……というか、勝手に降参しました」
「ありがとう、よくやった」
僕は、アルカの頭を撫でる。
アルカは嬉しそうに目を細める。
アルカは、周りに人がいないときには、よくこういうスキンシップを求めてくる。
「よし、じゃあ次の作戦を立てよう」
アルカには、今回新しい形態を追加した。
このサバイバル形式の試験なら、必ず役立つはずだ。
――――
”ドドドドドドド!”
大型のインスタントゴーレムたちが、勇者候補3人組を追いかけている。
インスタントゴーレムの足の速さは一般人程度。鍛えられた勇者候補達にはとても追いつけない。
だが、振り切られたとしてもまたインスタントゴーレム達は勇者候補達を見つけ出し、追いかけ始める。
今は5回目の追いかけっこの最中だ。
「なんで、なんで何度振り切って隠れてもすぐに居場所がバレるんだよ!? 俺たちに透明な監視役が張り付いて、ずっとあの土の使い魔に居場所を教えてるとでもいうのかよ!」
勇者候補3人組のリーダーが叫んだ。
その通りである。
勇者候補達のすぐ隣を、アルカが追いかけている。
隠密形態。
前に捕まえた、身体の色を変えて周りの風景に溶け込むモンスター、レインボーリザードの皮を使って搭載した機能だ。
普段は目元以外を覆った黒装束なのだが、必要な時には周りの景色と同化してほぼ完全に見えなくなる。
アルカには心臓の鼓動も呼吸音もないので、見つけることはほぼ不可能だ。
ちなみにデザインは、極東の国に存在するという幻の隠密職”ニンジャ”の服装を参考にしている。
専用の武器として、
光の反射で目立たないように黒く塗った、短い反った剣
同じく黒塗りの、独特の形の投げナイフ
を持たせている。
極東ではこれを”ニンジャト―”と”シュリケン”と呼ぶらしい。
「ええい、キリがない! こうなったらここで迎え撃つぞ!」
ヤケになった勇者候補3人組が剣を抜いてゴーレム達に挑んでくる。
だが、その背中はがら空きだ。
そこを見逃すアルカではない。
”ドスッ”
”ドスッ”
”ドスッ”
アルカが首筋に手刀を3回見舞い、勇者候補3人を気絶させる。
「この形態があれば、直接戦闘を避けて消耗を抑えながら一方的に相手を倒せます。流石です、マスター!」
勇者候補達がつけていたクリスタルを破壊しながら、アルカが嬉しそうに報告する。
「よし、それじゃあ次の相手を仕留めに行こう!」
――――
次の相手は、勇者候補6人組だ。
僕たちが作った砦ほどではないが、結構大掛かりな土の壁を作って、その奥に引きこもっている。
ゴーレムの群れを突撃させても、勝てるだろうがかなりの数が撃破されてしまうだろう。
正面から戦うのは避けたいところだ。
と、いうわけで作戦を立てた。
「アルカ、火炎放射形態だ」
「了解しました」
アルカが形態変更する。そして、火炎魔法で勇者候補たちの拠点の周りの樹に火を放つ。
「なんだこれ!? 山が燃えてる?!」
「やばいやばい、逃げろ!」
勇者候補達が拠点から飛び出してくる。
あらかじめゴーレムたちに周りの樹を切らせておいたので、炎が必要以上に広がる心配はない。燃えるのは、勇者候補達の拠点の周りだけだ。
周りは火事になっているが、勇者候補達は冷静だった。適当な方向に逃げず、全員でまとまって川の方へ逃げていく。
しかし、その先にも罠があるのだ。
「みえた、川だ! 飛び込め!」
勇者候補達が川に飛び込む。
「ぷはぁ、助かった――ゴバ!?」
水面から顔を出していた勇者候補達の1人が、急に水中に引きずり込まれる。
「何よこれ!? キャァ!」
「何が起きて――うわ!」
「水中だ! 水中に何かがいる――ぐわぁ!」
勇者候補達4人が次々と水中に引きずり込まれる。
周りが火事になったら水辺に逃げるだろうと思って、あらかじめ防水加工したゴーレムを水中に待機させておいたのだ。
ゴーレムは呼吸しないので、防水加工さえすれば何時間でも水中にいられる。
今頃ゴーレム達が水中で勇者候補達のクリスタルを破壊しているだろう。
溺れないように、ゴーレム達が引きずり込んだ勇者候補達を浅瀬に運んでいく。
「クソ、一体何が起こってるってんだ!」
何とか1人の勇者候補が岸まで上がってくる。
だが、そこには隠密形態のアルカが待ち構えていた。
”ボチャン!”
アルカが勇者候補を川に突き落とす。
「うわああああああああああああああああああぁ!!」
川に落ちた勇者候補は、水中のゴーレムたちにあっという間に引きずり込まれる。
こうして、僕とアルカは誰もケガなどさせることなく勇者候補6人組を撃破したのだった。
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