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【ざまぁ回】第3話 勇者パーティー、ゴーレム技師が居なくなったことで雑魚モンスターにもボコボコにされる&ポーション浪費で大赤字になる

 ――S級ダンジョン奥地。


 木が鬱蒼と茂る森の中で、女勇者ハロンのパーティーがモンスターと戦闘を繰り広げている。


 最前線で戦うのは、戦闘用ゴーレムだ。3メートルを超える巨体でモンスターの攻撃を受け止め、殴り返す。タンク兼物理アタッカーだ。


 女勇者ハロンはレア職業の魔法剣士。ゴーレムがモンスターの攻撃を止めている間に、超火力の魔法と鮮やかな剣技を叩き込み、仕留めていく。


 双子のキキとカカは、弓使いとヒーラー。キキが弓で仲間を援護し、カカが傷を癒す。


 こうしてモンスターを蹴散らしながら女勇者ハロンのパーティーはダンジョンの奥へ奥へと進んでいく。


 モンスターから取れた素材はとても高くで売れる。


 モンスターが強いほど素材も重くかさばるようになっていくが、ゴーレムが大荷物を全て背負って運んでいる。ゴーレムがいないととてもこれだけの量を運ぶことはできない。


 このパーティーが黒字を出せているのは、ゴーレムのおかげだった。


 勇者ハロンが、ゴーレムの腕の動きがおかしいことに気付く。


「ゴーレムの具合が悪いな。さっきの戦闘で傷めたか。キキ、カカ。メンテナンスしろ」


「「了解しました勇者様!」」


 双子がウキウキしながらゴーレムの背中にある、コア部分の蓋を開ける。ナットを追放したことで自分たちの報酬の取り分が増えることがまだ嬉しいのだ。


「さーてナット、お前なんていなくてもなぁんにも困りはしないってところを見せてやるぜ……あれ? 弟よ、これは一体なんだ?」

「俺にもわかんねぇよ兄者!」


 コア部分の中身は、双子が想像したより遥かに複雑な構造になっていた。


 様々な色の魔石が埋め込まれ、何重にも重なり合った繊細な魔法陣が描かれている。


 モンスターの返り血が中まで入り込んだらしく、魔法陣の一部が汚れている。


 双子は何度も、”親切なおじさん”にもらった本とゴーレムの中身を見比べる。


 しかし何度見ても、本に書かれているのと実物のゴーレムの魔法陣は全然違う。実物のほうが圧倒的に複雑だ。


「と、とりあえず汚れた部分を拭いてみようぜ弟よ」


「いい考えだな兄者!」


 これが失敗だった。

 

 勢いあまって、汚れと一緒に下の魔法陣も一部拭きとってしまったのだ。


 ゴーレムの左腕がだらんと垂れ下がる。


「も、もしかして左腕を壊しちまったのか?」


「そんなわけないだろう兄者! おいゴーレム、左腕を上げろ!」


 しかし何度命令しても、ゴーレムの左腕が動く気配はない。


「そうだ弟よ、消してしまった部分の魔法陣に適当な模様を描いてみよう。ナットにできたことが、俺たちにできないはずがない」


「流石兄者、いい考えだ。こう、キュキュッと描いて……」


 するとゴーレムが、その場で暴れだした。


 巻き込まれて、兄のキキがすさまじいパワーで吹っ飛ばされた。


「グハァーーーッ!!」

「あ、兄者ー!」


 弟のカカは慌てて今描いた模様を消す。


「弟よ、適当な模様を描くのはやめよう……危険すぎる」

「分かったぞ兄者」


 兄弟はゴーレムの背中の蓋を閉じる。


「クソっ! お前たちが余計なことをしたせいでゴーレムの左腕が動かなくなって戦力半減だ! どうしてくれる!」


「「ご、ごめんなさい勇者様~!」」


 女勇者ハロンが、今度はゴーレムの右腕の一部が欠けていることに気付く。


「これくらいなら私でも直せるぞ。ナットがやっていたように、そこら辺の土を拾って、魔力を込めて、くっつけて――」


 ボロッ。


 女勇者ハロンが土をくっつけたとたん、ゴーレムの右腕がちぎれて落ちた。


「なんだと!?」


「「あーーーー!! 勇者様がゴーレム壊したー!」」


「だ、黙れお前たち!! お前たちだって左腕を壊しただろうが!」


 ナットはゴーレムの欠けた部分を直すとき、土の不純物を取り除いたり、丁寧にこねたり、ゴーレムの体に馴染ませながら塗りこんだりしていた。


 しかし勇者ハロンは適当に魔力を込めただけの土をいい加減にくっつけただけだった。結果、中途半端にしか土はゴーレムに馴染まず、ゴーレムの右腕はとても脆くなってしまったのだ。


 こうして、ゴーレムは両腕を使えなくなってしまった。


「こうなってしまってはゴーレムはもう戦闘には出せない。……キキ、ゴーレムの代わりにお前が前衛に出ろ!」


 勇者ハロンが命令する。


「ええ!? 本気ですか勇者様!? 俺は弓使いですぜ?」


「本気だ。ゴーレムは私たちでは直せないが、お前の体は傷ついても弟に治してもらえるだろう?」


「そりゃそうですが、俺には前衛用の武器がないですよ」


「それなら、さっき拾ったイイ感じの木の枝をやろう」


 女勇者ハロンが太めの木の枝をカカに渡す。


「そんな無茶な……」


「カカよ。よく聞け。ゴーレムがこれ以上傷ついて動けなくなったらモンスターの素材が運べなくなり、稼げなくなる。お前はそれでもいいのか!?」


「よくないです! 木の棒だろうが何だろうが使いこなして前衛で戦ってやるぜ! 弟よ、回復頼むぞ!」

「任せてくれ兄者ー!」


 こうして、弓使いであるキキが前衛に出ることになった。しかし、前衛としての訓練などしたこのもないキキが、S級ダンジョンのモンスター相手にまともに戦えるはず等なく。


 モンスターに一方的にぼっこぼこにされるのだった。


――


「木の棒ではやっぱりモンスターに歯が立たん! 体力が尽きそうだ、助けてくれ弟よ!」


「今回復するぞ兄者!」


――


「でかい蛇のモンスターに睨まれてから体が重くなってきたぞ弟よ。まるで体が石になったみたいだ」


「本当に石化の状態異常をもらっているぞ兄者! 今解除する!」


――


「宝箱が自分から歩いてきたから、『ラッキー!』と思って開けたらミミックだった! 噛まれた! 助けてくれ弟よ!」


「大丈夫か兄者ー!」


――


 といった具合で、モンスター相手に普段とは比べ物にならないほど苦戦している。


「クソ! 普段は状態異常が効かないゴーレムが相手していたから気づかなかったが、このダンジョンのモンスターは強力な状態異常を使ってくるな」


 毒をカカに治療させながら勇者ハロンがため息をつく。

 

 しかし、勇者パーティーの苦難は、まだまだ始まったばかりだった。


 これまで料理や地図作成などの雑用は全てナットがしていた。


 ナットがいなくなったので自分たちで雑用をこなしているのだが、何もかもうまくいかない。


 料理をすれば、まずいのはもちろん、肉にしっかり火が通っていなかったので3人とも腹を壊し。


 地図を読み間違えたせいで道に迷い。


 モンスターを倒しても、素材の剥ぎ取りに失敗してレアな素材を無駄にし。


 歩いているだけでも、周囲の敵に気を配っていたナットがいなくなったせいで、モンスターに先制攻撃を何度も受ける。


 勇者パーティーの探索は、ナットを追放してから全然うまくいかなくなっていた。ふだんなら半日かけずに進む道を、3日かけてようやく進む。しかも、体力も精神も限界だった。


 そして何よりつらいのが、稼ぎがないこと。


 ナットがいなくなってレアな素材の剥ぎ取りがうまくいかなくなった。


 戦闘がうまくいかなくなり、倒せるモンスターの数が少なくなった。


 この2つが合わさり、戦利品を全然持ち帰れなくなってしまった。


 一方で、モンスターに普段より苦戦しているせいで装備はボロボロになり、ポーション類の消費も多い。


 今回は、戦利品を売った金よりも、支出のほうが高くつくだろう。つまり、赤字だ。


 こんなに苦労しても、銅貨1枚も儲からないというのがパーティーメンバー全員のやる気をなくさせている。


「……駄目だ。このままこれ以上探索を続けても意味がない。撤退する」


 勇者ハロンのパーティーは、ダンジョン探索を普段の半分以下の期間で切り上げることにする。


 街に帰り着いたときには、心身ともにボロボロになっていた。



少しでも面白いと思って頂けたら、ブックマークや評価をぜひお願いします!


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ポイントを頂けるとやる気がモリモリ湧いてくるのです・・・!


これからも面白い物語を提供していきたいと思います、よろしくお願い致します!


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