正直者、神経衰弱
普通に、カードを開いて、閉じる。
何を見ていたんだ、俺。激しい既視感で慌てる。またもや出る意外な心の残像。とっくに知っている人だった。けど、会ってみるまで誰か、分からなかった。
結婚していた、あの人と俺。仲は普通にいい。アレ、結婚したら、ずっと知らない人だった。
初めて読む小説みたいに。時を忘れる程に、時おり、笑いかけてくれるけど、こんな笑い方だったか。気付かなかった。
シリーズ物の、長期スケール小説。
いきなり最新刊を読むと、ほとんど会ったことのない人の家に、入ったような、立ち尽し感で、困る。読んでない感覚が、たくさんあった?
「俺のこと、嫌い?」
「好きだよ、絶対」
後ろから、ハグされた。恋愛的反則だよ、コレ。
俺のこと分かってて、選ぶなんて。外国の絶対的観光地以外を歩いたときみたいな不安だった、俺。正直、想定外にイチャつくのだった。ドキドキタイマーをまた、未定未来にセットしてしまった。
終