第七幕。王宮裏の庭園にて。
パライソ山を消滅させた次の日の朝。
「昨日ので疲れたからちょっと休む」
と、エイミーさん。
「えっ、じゃあうちも休みたい」
と、クラリッサさん。
……いや、じゃあ、って何??
まあ、僕だけ『ヤバい本』の内容を理解できてないし、一人の時間が貰えるなら解読を進めよう。
ちなみにこの例の本、二人がずっと『ヤバい本』と呼ぶのでそれが呼び名になってしまった。
――そして7日後。
「やっぱ練習した方が良さげ。庭園使っていいか聞いてくる。ちょっと待ってて」
「わかった」
エイミーさんは復帰するなりそう言って王室に向かって行った。
――。
――――。
――――――。
「使っていいって」
「やったね」
それは良かった。
――。
「理屈はわかっても発音が難しいんだよね」
「うん」
僕も少しは理屈がわかってきたけど、確かにエイミーさんの言う通り。
「じゃあ何から始めよっか」
「んー」
呪文でできることには相当な種類があって、まずは簡単なものからやってみるのが良さそうだ。
「とりあえず庭園消す?」
「そうだね」
いややめろよ!!!!!!!!
とりあえずで何か消そうとするのをやめろ!!!!
しかも『消す』のは難しさも危なさもぶっちぎりで一番だったわ!!!!
というかエイミーさん、位置がずれたとはいえ一発勝負でよく山ひとつ消すことに成功したな……。
「あの、とりあえずもっと簡単な……地面とか空気とかに干渉するものから始めませんか?」
「え……」
「……」
……。
――そこまで興味無さそうな態度とります!?!?
簡単すぎて試すまでもないってか!?
チクショー!!!!
「まあ……うーん……まだやったことない、って言えばそう、だし……。一応、やる……?」
「うん……」
どこまで渋々アピールしてくるんだよ!!
やりたくないならそう言ってくれよ!!
返ってツラいわ!!!!
――。
「じゃあ、まず地面ね。足下を盛り上げるのやって、高いところまで行く。そのあと続けて掘り下げるのやって、元の高さに戻ろう」
「うん」
それをやるなら、呪文は……これと……これの組み合わせと、あと、こっちと――これと、これか。
「場所と高さは――あっ、四階のあそこ! 国王の部屋だ! あそこ覗いて戻ってこよう!」
「いいね」
……いいか?
ま、まあ、それなら呪文をさらに――これと、これを加えて、こうか。
だから、発音は――。
「じゃあ、みんなそれぞれやってみる? わたしは今すぐでもできるけど」
「うちもできる」
「僕は発音をもう少し確認したいので先にやっててください」
「うん、じゃあ先行くね」
「うちも行く」
「「……、…………、…………、……――」」
綺麗にハモってるな――そういえば事象の規模で呪文の長さもかなり変わってくるんだよな。
今回のは簡単なやつだし、そろそろかな。
「「……、…………ッ!」」
あ、唱え終わったな。
――ズッ。
――ゴ――ゴゴッ――ゴゴゴゴ……。
おお、昇ってる昇ってる――あ、止まった。
じゃあまた呪文唱え終わったら降りてくるかな。
――。
――ゴッ。
あ、来た。
――ゴゴゴ――ゴゴゴゴゴッ……。
――。
「どうでした? 国王、いました?」
「……」
「……」
えっ。
え、何? 何この空気??
何で目合わせてくれないの??
「えっ、ど、どうしたんです……?」
「……」
「……」
えっ……?
「……国王、白目むいて倒れた」
「……」
……。
国王おおおおおおおお!!!!!!!!
――国王は丸三日間、寝込んだらしい。
全十二幕で完結予定です。