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異世界転生した僕は強くなるしかない

掲載日:2020/06/05

異世界転生した子供の話。 @短編22


ほぼ毎日一話書いてます。

ぼくは異世界転生でこの世界に来た。


前の世界で、ぼくは7歳で死んだ。


そしてこの世界の、15歳の体に『蘇った』のだ。


おかあさん、おかあさん、たすけて。

おとうさん、たすけて。

にいちゃん、にいちゃん・・・


ぼくは泣き続けた。15歳の体で子供の様に泣き叫んだのだ。


こんな有り様だから、ぼくの元の人格を知っている人は、気が狂ったと思ったようだ。


厄介者となったぼくを家から追い出し、魔塔という場所に放り込んだ。

そこは魔法を極める者が集う場所だった。そこの雑用として雇われたのだ。


「こいつは馬鹿だから」


15歳の体をぼくは受け入れられなくて、この世界が、魔法が、みんなが嫌いだった。




1年過ぎた頃には、僕もなんとか受け入れようと頑張った。

きっかけは魔塔のビムスが魔法を使った時、眩い光をキラキラさせて、それが螺旋を描いて。


ああ、なんて綺麗なんだ。

僕にも出来るかな。


そこから僕は頑張った。字の勉強をして、本を読めるようになったら、魔法の本をいっぱい読んだ。

もう夢中だった。


魔力が驚くほどの量があったそうで、その頃には親しくしてくれるようになっていた魔塔のみんなが、オレに魔法を教えてくれるようになっていた。オレの覚えが良かったらしく、みんなが面白がっていろんな魔法を教えてくれた。そしてみんなと、オレはもっと仲良くなった。





そして中のぼくが15歳、この世界の()()が23歳になった頃には、万能型と言われる魔道士になっていた。

中のぼくも多分、年数で言えば15だろうが、大人の中で揉まれて生きてきたから、精神年齢も23歳になっているかな、と思う。


この世界に来る前に、ぼくは誰か知らない女の声を聞いた。神の声・・女神だろう。


「魔法のスキルを強化してあげます。貴方は小さいのだから。魔法の国でも生きやすく・・・」


だからこの魔塔に放り込まれたのは、結果良かったのだ。


魔塔を今日出ていくオレは、冒険者になるために故郷?・・いや。オレの故郷は魔塔だ。

魔塔のみんながオレの家族だ。みんなが頑張れよと、手を振って見送ってくれる。


「何かあったら此処に行くが良い」


魔塔の長老が住所の書かれた紙をくれた。オレは何度も手を振り、魔塔を後にした。





ぼくがこの世界で目が覚め、此処を追い出されるまでたった4日。

4日しか居なかった場所が故郷なものか。


以前15歳の『前の人格』を知る人と話す機会があったが、前の人は公爵家の嫡男で、優しくて大人しい子だったそうだ。婚約者もいたが、もう他の男と結婚したそうだ。今オレと同い年なら23歳だからな。




ギルドで登録した後は宿屋で1泊。家に寄るつもりは無い。あちらもオレの顔など覚えて無いだろう。

何故追い出されたか。それは気が狂ったと思われたからだ。

でも仕方が無い。ぼくは7歳の知能しか無かったのだ。いきなり15歳の知能を求められてもね。

急にぼくの家族が知らない人達に変わったら、誰だって驚き、叫び、大泣きするだろう。

神様も酷いよな。せめて子供の体に『入れて』くれれば良いのにな。

でも、それももうどうでもいい事だ。魔塔という家族がいるから。


魔塔に放り込まれた時、名前も変えられた。今の名はマキオト。

泣いて自分の名を叫んでいた。ここの奴にはそう聞こえたんだろう。

元の世界の名は『(マコト)』だからな。


魔道士と見ただけで分かる、榛色のローブを身に纏い街を歩くと、周りの誰もが振り返る。

自分で言うのも何だが、髪は美しい琥珀色、瞳はペリドットカラー。人目を引く美貌だった。


依頼で指定された場所に向かいながら、街を見渡す。

何一つ見覚えの無い街並みは、どこかの外国の様だ。

王都には魔塔の長老の知り合いがいるそうなので、そこを目的地とする。

まずは路銀を稼がなくては。


「レイバード?」


自分の名前とは思わないオレは、歩みを止めずに進む。


「ねえ、レイバード!レイバードでしょう?」


腕を掴まれ、初めて自分を呼んでいるのだと分かった。綺麗な女性が必死な表情でオレを見つめる。


「誰だ?」

「私よ!ロナンデ伯爵家のシリエよ!」


前の人の知り合いは、記憶に残っていない。嘘はなく答える。


「知らないな。では」

「嘘!私よ!婚約していたのに」


あ。ああ。話で聞いた婚約者か。知らんものは知らんのだが・・


「オレは記憶をほとんど失って、気が狂ったという烙印を押されて追い出された()()()。だから15歳よりも前の記憶は全く無い。すまんな」

「そんな・・・記憶が無いなんて・・」

「ついでに言えば、オレは廃嫡された。平民だから寄らない方がいい」

「レイバード・・私はあなたの事がずっと、いいえ今も」

「おい、言わない方がいいぞ。今の生活を捨てる気があるなら別だが。それにオレから離れろ」


この世界、誰が聞いてるか分かったものでは無い。貴族はそういう汚い部分を隠している。

元貴族の魔塔メンバーが言っていた。うん、貴族汚い。オレも賛成だ。


「レイバード!お前、何故ここに!!」


あちゃあ・・・巻き込まれ必至?前のオレを知っている奴、また登場か?

榛色のローブを見て、その男は顔を歪ませた。


「魔道士?気が狂っていたわけでは無いのか?」

「気は狂ってはいなかったさ。だが、記憶を失っていた」

「記憶?」

「子供の頃の記憶だけ、それより成長した記憶は無くなってな」

「だから・・兄さんは・・あの時子供の様に泣き喚いて・・・」


ふん。会った事も無いが、弟ね。


「すまんな。子供の頃の記憶もあやふやで、あんたが弟って事もわからん」

「父上や母上に会ってくれないか?」

「何故?オレを魔塔に放り込んで、それからは連絡一つ無い人にか?御免蒙る」


そろそろ行かなければ、依頼の時間が少なくなる。

オレは二人を残して立ち去った。




依頼を終え、ギルドのカウンターに並ぶと、一人の騎士がこちらにやって来た。


「レイバード()か」

「まず名乗れ・・ああ、貴族名で言うから抑圧的な返事になった。オレは今はマキオトだ」

「失礼。マキオト、フーバァ侯爵の名でお迎えに上がった。ついて参られい」

「断る」

「断るか・・・では、乱暴も辞さないが」

「いいよ?魔法で反抗するから。それで、業火絢爛でいい?」


業火絢爛は室内用の火魔法で、部屋を焼かずに標的だけ焼き殺す上級魔法だ。


「・・・!」

「こい。榛ローブの力、存分に見せてやる・・と言いたいところだが、ここはギルドだ」


オレは指を滑らかにくるんと回し、


「捕縛」


見えない何かが騎士を縛って身動きが出来ないようにする。


「30分くらいそのままだ。じっとしてれば消える」


そしてギルドカウンターで依頼の報酬を受け取ると、さっさと宿に戻った。




宿屋でゆっくりと寛いでいると、宿屋の親父がドアをノックする。


「誠にすみません。公爵様の伝令が来て・・ご迷惑でしょうが、会っていただけますか?」


宿屋の親父は悪く無い。仕方が無い。もう引き払おう。親父にチップを渡す。


「親父、こっちこそ迷惑を掛けた。これだから貴族ってのは・・」


血の繋がりでの家族・・彼らも降って湧いた不幸に苦しんだのかも知れない。

期待の嫡男が、まさか気が狂うとは。まあ、オレがあのまま公爵家にいた所で、記憶も知識も全く無いのでは役に立たなかっただろう。婚約者もオレの前の人と幸せになっていたかも知れない。


こうして考えれば、ただみんな不幸だった。女神め・・何故転生させたんだ?


「聞いてみたいものだな、女神の言い訳ってヤツを」


外に伝令・・・と、兵と魔道士が合計7人か。大捕物だな。


「空間結界」


ガラス状の結界が何十枚も広がり、兵達を取り囲み、多角形のドーム状に形成。

中の彼等はどんどんと叩くが、音も微かだ。泡食っただろう、右往左往してる。


「魔法は使うなよ。反射するし、火魔法だと中が蒸し焼きになって死ぬ。30分程大人しくしていろ」


仕方がない、行くか。多分あの大きな建物が館だな。オレは浮遊して飛ぶ。




トッ・・

テラスに舞い降り、館の奥に足を進めると、人影を発見。

先程の男がいた。おお、急にテラスに人が現れたらびっくりするよな。


「弟くん、だっけ?お前の名前、知らないからな。で、オレに何の用?」

「・・!!兵が迎えに行ったはずだが」

「纏めて動けなくした。もしかして、オレを殺す気だった?」


ニコッと笑って見せたら、弟くんは青い顔をして後ろに下がった。

うん?オレの顔、もしかして今怖い?


「用がないなら放っておいてくれ。明日にはこの街を出るんでね」

「・・・ここに来たんだ。父上達と会って行け」

「オレを厄介払いした奴に?治療も投げ、魔塔へ使用人として入れたんだ。公爵家嫡男をだぞ?」


そしてオレはふるふると頭を横に振る。


「ありえん。ありえんよ。魔塔の奴らでさえ、他人の子供を救って癒すのに。こっちは親子だぜ?」


そうだな。オレでなくお前に転生していたら、お前が同じ目に遭ったんだぞ。運が良かったな。


「レイバード!!」


おっさんの声だ。つまり、前の人の親父か。こんな声だったっけ?老けたのかね。


「このような者、家の恥だ。捨て置け」


汚いものを見るような顔をしてオレを見たよな。この声しか覚えてねーわ。何度も夢に見たわ。


「オレはマキオトだ。その名の持ち主は死んだ。そうだろう?」


ああ、オレが榛ローブを纏っているのを見てる。

魔道士になるには、ものすごく勉強をしないとなれないからな。

気が狂ったオレでは到底成る事など適わないもんな。しかも榛カラー、20代の上級魔道士様だぜ?

お。すごく悔しそうな顔をしている。好物件だったのに手放して惜しいって?


「もう二度と声を掛けてくるな。次はどうなるか身をもって知る事となる」


可哀想な公爵家。息子が気狂いになって、全てが変わってしまった。

せめて子供の頃に転生していたら、彼はオレの父として居てくれたのかも知れない。

全ては女神の所為だ。


オレの存在意味は何だろう。

公爵家を不幸にし、オレを苦しめた意味が、ちゃんとした内容だと信じているぞ。

もしも転生させた内容が、あまりにもお粗末だったら・・・


「絶対に許さん。許せいでか」


この旅は、オレの転生の意味を探す旅なのだ。

居心地の良かった魔塔を出てまで、オレを駆り立てた。

結局死ぬまで見つからなかったら・・・


「どうしてくれようか。そうだ」


『神殺し』って究極魔法があるそうだ。

旅の()()()に、その道を極めてやろうかな・・・








旅の途中で子供を引き取る羽目になった。目が見えない女の子だった。

一緒に暮らしていた祖母が死に、目の見えない10歳の子供を引き取ってくれる人はいなかった。

昔のオレを思い・・・誰が引き取るかの騒ぎの中、女の子の手を引いて連れ出した。



それから・・オレはその子を育てながら旅を続けた。

物は試し、女の子・・アイに魔法を教える。

遅いながらもひとつひとつ覚えて。


 


そのうちアイの目を治す方法が旅の理由に変わり、オレ達は探した。




アイの目が見えるようになった時、アイは17歳。オレは30歳。

これでもうアイは普通に暮らしていける。

大きな街で彼女に別れを告げると、


「やだ!!マキオトといる!!お嫁さんにして!!」


・・・参った。




早々に子供が出来たので、オレ達は王都に居を構え、子供を育てる事にした。


初めての子供は男の子で、シルベスタと名付けた。


我が子シルベスタは、親バカと言わば言え。真の魔道の天才だったのだ。

18にはオレを超え、20に最高格の白ローブを身に纏ったのだ。


シルベスタは仲間と共に、旅に出た。

魔王討伐の旅だった。我が子シルベスタは英雄だったのだ。




各地での息子達の武勇伝が王都まで届き、妻と喜ぶうち・・・思い至るのだった。


女神はオレに・・シルベスタを、勇者を誕生させたかったのだ。

オレを魔道士にし、魔道を知るアイを娶らせ・・


・・・・そういうことか。

まあ、意味はあったなら、許そうか。



今日も王都には号外が貼られる。シルベスタと仲間の武勇伝だ。


オレは王都で魔道の教師となり、人材を育成している。オレのローブはクリーム色。

息子に追い抜かれたが、これでもまあまあの上位なんだ。


城下の人々が、息子を褒めそやすのがこそばゆいが嬉しい。






シルベスタは10年掛けて討伐を成功させて。


綺麗な娘を連れてきて、嫁にすると言って。

その子の腹がもうかなり膨らんでいて、大慌てで結婚式を用意して。


結婚式には公爵家を呼んで、遺恨を水に流して。アイが仲良くしろって言うからな。


時々曾祖母さんと曾祖父さんがやって来て、孫と遊んでくれて。


弟とも話をするようになって。いろんな相談を聞いたりするようになって。


孫がまた凄い才能が垣間見えて。学校をどうしようと、あのシルベスタがソワソワして。


曾祖父さん、曾祖母さんを見送って・・・



なんだかんだで、人らしく生きて・・・





最後に。

こんなオレの人生だった、だから女神はもう許した。



ほぼ毎日短編を1つ書いてます。随時加筆修正もします。

どの短編も割と良い感じの話に仕上げてますので、短編、色々読んでみてちょ。


pixivでも変な絵を描いたり話を書いておるのじゃ。

https://www.pixiv.net/users/476191

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