異世界転生した僕は強くなるしかない
異世界転生した子供の話。 @短編22
ほぼ毎日一話書いてます。
ぼくは異世界転生でこの世界に来た。
前の世界で、ぼくは7歳で死んだ。
そしてこの世界の、15歳の体に『蘇った』のだ。
おかあさん、おかあさん、たすけて。
おとうさん、たすけて。
にいちゃん、にいちゃん・・・
ぼくは泣き続けた。15歳の体で子供の様に泣き叫んだのだ。
こんな有り様だから、ぼくの元の人格を知っている人は、気が狂ったと思ったようだ。
厄介者となったぼくを家から追い出し、魔塔という場所に放り込んだ。
そこは魔法を極める者が集う場所だった。そこの雑用として雇われたのだ。
「こいつは馬鹿だから」
15歳の体をぼくは受け入れられなくて、この世界が、魔法が、みんなが嫌いだった。
1年過ぎた頃には、僕もなんとか受け入れようと頑張った。
きっかけは魔塔のビムスが魔法を使った時、眩い光をキラキラさせて、それが螺旋を描いて。
ああ、なんて綺麗なんだ。
僕にも出来るかな。
そこから僕は頑張った。字の勉強をして、本を読めるようになったら、魔法の本をいっぱい読んだ。
もう夢中だった。
魔力が驚くほどの量があったそうで、その頃には親しくしてくれるようになっていた魔塔のみんなが、オレに魔法を教えてくれるようになっていた。オレの覚えが良かったらしく、みんなが面白がっていろんな魔法を教えてくれた。そしてみんなと、オレはもっと仲良くなった。
そして中のぼくが15歳、この世界のオレが23歳になった頃には、万能型と言われる魔道士になっていた。
中のぼくも多分、年数で言えば15だろうが、大人の中で揉まれて生きてきたから、精神年齢も23歳になっているかな、と思う。
この世界に来る前に、ぼくは誰か知らない女の声を聞いた。神の声・・女神だろう。
「魔法のスキルを強化してあげます。貴方は小さいのだから。魔法の国でも生きやすく・・・」
だからこの魔塔に放り込まれたのは、結果良かったのだ。
魔塔を今日出ていくオレは、冒険者になるために故郷?・・いや。オレの故郷は魔塔だ。
魔塔のみんながオレの家族だ。みんなが頑張れよと、手を振って見送ってくれる。
「何かあったら此処に行くが良い」
魔塔の長老が住所の書かれた紙をくれた。オレは何度も手を振り、魔塔を後にした。
ぼくがこの世界で目が覚め、此処を追い出されるまでたった4日。
4日しか居なかった場所が故郷なものか。
以前15歳の『前の人格』を知る人と話す機会があったが、前の人は公爵家の嫡男で、優しくて大人しい子だったそうだ。婚約者もいたが、もう他の男と結婚したそうだ。今オレと同い年なら23歳だからな。
ギルドで登録した後は宿屋で1泊。家に寄るつもりは無い。あちらもオレの顔など覚えて無いだろう。
何故追い出されたか。それは気が狂ったと思われたからだ。
でも仕方が無い。ぼくは7歳の知能しか無かったのだ。いきなり15歳の知能を求められてもね。
急にぼくの家族が知らない人達に変わったら、誰だって驚き、叫び、大泣きするだろう。
神様も酷いよな。せめて子供の体に『入れて』くれれば良いのにな。
でも、それももうどうでもいい事だ。魔塔という家族がいるから。
魔塔に放り込まれた時、名前も変えられた。今の名はマキオト。
泣いて自分の名を叫んでいた。ここの奴にはそう聞こえたんだろう。
元の世界の名は『真』だからな。
魔道士と見ただけで分かる、榛色のローブを身に纏い街を歩くと、周りの誰もが振り返る。
自分で言うのも何だが、髪は美しい琥珀色、瞳はペリドットカラー。人目を引く美貌だった。
依頼で指定された場所に向かいながら、街を見渡す。
何一つ見覚えの無い街並みは、どこかの外国の様だ。
王都には魔塔の長老の知り合いがいるそうなので、そこを目的地とする。
まずは路銀を稼がなくては。
「レイバード?」
自分の名前とは思わないオレは、歩みを止めずに進む。
「ねえ、レイバード!レイバードでしょう?」
腕を掴まれ、初めて自分を呼んでいるのだと分かった。綺麗な女性が必死な表情でオレを見つめる。
「誰だ?」
「私よ!ロナンデ伯爵家のシリエよ!」
前の人の知り合いは、記憶に残っていない。嘘はなく答える。
「知らないな。では」
「嘘!私よ!婚約していたのに」
あ。ああ。話で聞いた婚約者か。知らんものは知らんのだが・・
「オレは記憶をほとんど失って、気が狂ったという烙印を押されて追い出されたそうだ。だから15歳よりも前の記憶は全く無い。すまんな」
「そんな・・・記憶が無いなんて・・」
「ついでに言えば、オレは廃嫡された。平民だから寄らない方がいい」
「レイバード・・私はあなたの事がずっと、いいえ今も」
「おい、言わない方がいいぞ。今の生活を捨てる気があるなら別だが。それにオレから離れろ」
この世界、誰が聞いてるか分かったものでは無い。貴族はそういう汚い部分を隠している。
元貴族の魔塔メンバーが言っていた。うん、貴族汚い。オレも賛成だ。
「レイバード!お前、何故ここに!!」
あちゃあ・・・巻き込まれ必至?前のオレを知っている奴、また登場か?
榛色のローブを見て、その男は顔を歪ませた。
「魔道士?気が狂っていたわけでは無いのか?」
「気は狂ってはいなかったさ。だが、記憶を失っていた」
「記憶?」
「子供の頃の記憶だけ、それより成長した記憶は無くなってな」
「だから・・兄さんは・・あの時子供の様に泣き喚いて・・・」
ふん。会った事も無いが、弟ね。
「すまんな。子供の頃の記憶もあやふやで、あんたが弟って事もわからん」
「父上や母上に会ってくれないか?」
「何故?オレを魔塔に放り込んで、それからは連絡一つ無い人にか?御免蒙る」
そろそろ行かなければ、依頼の時間が少なくなる。
オレは二人を残して立ち去った。
依頼を終え、ギルドのカウンターに並ぶと、一人の騎士がこちらにやって来た。
「レイバード様か」
「まず名乗れ・・ああ、貴族名で言うから抑圧的な返事になった。オレは今はマキオトだ」
「失礼。マキオト、フーバァ侯爵の名でお迎えに上がった。ついて参られい」
「断る」
「断るか・・・では、乱暴も辞さないが」
「いいよ?魔法で反抗するから。それで、業火絢爛でいい?」
業火絢爛は室内用の火魔法で、部屋を焼かずに標的だけ焼き殺す上級魔法だ。
「・・・!」
「こい。榛ローブの力、存分に見せてやる・・と言いたいところだが、ここはギルドだ」
オレは指を滑らかにくるんと回し、
「捕縛」
見えない何かが騎士を縛って身動きが出来ないようにする。
「30分くらいそのままだ。じっとしてれば消える」
そしてギルドカウンターで依頼の報酬を受け取ると、さっさと宿に戻った。
宿屋でゆっくりと寛いでいると、宿屋の親父がドアをノックする。
「誠にすみません。公爵様の伝令が来て・・ご迷惑でしょうが、会っていただけますか?」
宿屋の親父は悪く無い。仕方が無い。もう引き払おう。親父にチップを渡す。
「親父、こっちこそ迷惑を掛けた。これだから貴族ってのは・・」
血の繋がりでの家族・・彼らも降って湧いた不幸に苦しんだのかも知れない。
期待の嫡男が、まさか気が狂うとは。まあ、オレがあのまま公爵家にいた所で、記憶も知識も全く無いのでは役に立たなかっただろう。婚約者もオレの前の人と幸せになっていたかも知れない。
こうして考えれば、ただみんな不幸だった。女神め・・何故転生させたんだ?
「聞いてみたいものだな、女神の言い訳ってヤツを」
外に伝令・・・と、兵と魔道士が合計7人か。大捕物だな。
「空間結界」
ガラス状の結界が何十枚も広がり、兵達を取り囲み、多角形のドーム状に形成。
中の彼等はどんどんと叩くが、音も微かだ。泡食っただろう、右往左往してる。
「魔法は使うなよ。反射するし、火魔法だと中が蒸し焼きになって死ぬ。30分程大人しくしていろ」
仕方がない、行くか。多分あの大きな建物が館だな。オレは浮遊して飛ぶ。
トッ・・
テラスに舞い降り、館の奥に足を進めると、人影を発見。
先程の男がいた。おお、急にテラスに人が現れたらびっくりするよな。
「弟くん、だっけ?お前の名前、知らないからな。で、オレに何の用?」
「・・!!兵が迎えに行ったはずだが」
「纏めて動けなくした。もしかして、オレを殺す気だった?」
ニコッと笑って見せたら、弟くんは青い顔をして後ろに下がった。
うん?オレの顔、もしかして今怖い?
「用がないなら放っておいてくれ。明日にはこの街を出るんでね」
「・・・ここに来たんだ。父上達と会って行け」
「オレを厄介払いした奴に?治療も投げ、魔塔へ使用人として入れたんだ。公爵家嫡男をだぞ?」
そしてオレはふるふると頭を横に振る。
「ありえん。ありえんよ。魔塔の奴らでさえ、他人の子供を救って癒すのに。こっちは親子だぜ?」
そうだな。オレでなくお前に転生していたら、お前が同じ目に遭ったんだぞ。運が良かったな。
「レイバード!!」
おっさんの声だ。つまり、前の人の親父か。こんな声だったっけ?老けたのかね。
「このような者、家の恥だ。捨て置け」
汚いものを見るような顔をしてオレを見たよな。この声しか覚えてねーわ。何度も夢に見たわ。
「オレはマキオトだ。その名の持ち主は死んだ。そうだろう?」
ああ、オレが榛ローブを纏っているのを見てる。
魔道士になるには、ものすごく勉強をしないとなれないからな。
気が狂ったオレでは到底成る事など適わないもんな。しかも榛カラー、20代の上級魔道士様だぜ?
お。すごく悔しそうな顔をしている。好物件だったのに手放して惜しいって?
「もう二度と声を掛けてくるな。次はどうなるか身をもって知る事となる」
可哀想な公爵家。息子が気狂いになって、全てが変わってしまった。
せめて子供の頃に転生していたら、彼はオレの父として居てくれたのかも知れない。
全ては女神の所為だ。
オレの存在意味は何だろう。
公爵家を不幸にし、オレを苦しめた意味が、ちゃんとした内容だと信じているぞ。
もしも転生させた内容が、あまりにもお粗末だったら・・・
「絶対に許さん。許せいでか」
この旅は、オレの転生の意味を探す旅なのだ。
居心地の良かった魔塔を出てまで、オレを駆り立てた。
結局死ぬまで見つからなかったら・・・
「どうしてくれようか。そうだ」
『神殺し』って究極魔法があるそうだ。
旅のついでに、その道を極めてやろうかな・・・
旅の途中で子供を引き取る羽目になった。目が見えない女の子だった。
一緒に暮らしていた祖母が死に、目の見えない10歳の子供を引き取ってくれる人はいなかった。
昔のオレを思い・・・誰が引き取るかの騒ぎの中、女の子の手を引いて連れ出した。
それから・・オレはその子を育てながら旅を続けた。
物は試し、女の子・・アイに魔法を教える。
遅いながらもひとつひとつ覚えて。
そのうちアイの目を治す方法が旅の理由に変わり、オレ達は探した。
アイの目が見えるようになった時、アイは17歳。オレは30歳。
これでもうアイは普通に暮らしていける。
大きな街で彼女に別れを告げると、
「やだ!!マキオトといる!!お嫁さんにして!!」
・・・参った。
早々に子供が出来たので、オレ達は王都に居を構え、子供を育てる事にした。
初めての子供は男の子で、シルベスタと名付けた。
我が子シルベスタは、親バカと言わば言え。真の魔道の天才だったのだ。
18にはオレを超え、20に最高格の白ローブを身に纏ったのだ。
シルベスタは仲間と共に、旅に出た。
魔王討伐の旅だった。我が子シルベスタは英雄だったのだ。
各地での息子達の武勇伝が王都まで届き、妻と喜ぶうち・・・思い至るのだった。
女神はオレに・・シルベスタを、勇者を誕生させたかったのだ。
オレを魔道士にし、魔道を知るアイを娶らせ・・
・・・・そういうことか。
まあ、意味はあったなら、許そうか。
今日も王都には号外が貼られる。シルベスタと仲間の武勇伝だ。
オレは王都で魔道の教師となり、人材を育成している。オレのローブはクリーム色。
息子に追い抜かれたが、これでもまあまあの上位なんだ。
城下の人々が、息子を褒めそやすのがこそばゆいが嬉しい。
シルベスタは10年掛けて討伐を成功させて。
綺麗な娘を連れてきて、嫁にすると言って。
その子の腹がもうかなり膨らんでいて、大慌てで結婚式を用意して。
結婚式には公爵家を呼んで、遺恨を水に流して。アイが仲良くしろって言うからな。
時々曾祖母さんと曾祖父さんがやって来て、孫と遊んでくれて。
弟とも話をするようになって。いろんな相談を聞いたりするようになって。
孫がまた凄い才能が垣間見えて。学校をどうしようと、あのシルベスタがソワソワして。
曾祖父さん、曾祖母さんを見送って・・・
なんだかんだで、人らしく生きて・・・
最後に。
こんなオレの人生だった、だから女神はもう許した。
ほぼ毎日短編を1つ書いてます。随時加筆修正もします。
どの短編も割と良い感じの話に仕上げてますので、短編、色々読んでみてちょ。
pixivでも変な絵を描いたり話を書いておるのじゃ。
https://www.pixiv.net/users/476191




