表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元最強クラスの《悪魔狩り》のセカンドライフは、アホな弟子によって振り回される。  作者: owlet4242
一章 無職の元《悪魔狩り》とアホな弟子一号
14/15

ミニチュアダックスフントは意外に凶暴性が高い

まさかの続投です。


実は、ハーメルン様で連載していた二次創作が結構な人気になってしまいそちらに注力してました。


不定期にこちらも更新予定ですのでまたよろしくお願いいたします。

接敵(コンタクト)!」


 ミリアの声を皮切りにして、俺たちは茂みから一気に駆け出す。

 視界が開けると同時にミリアの口から状況確認の指示が飛ぶ。


「敵、12時方向、4足、狼型3。10時方向、同型1。以上(オーバー)!」

Rog(ラジャー)。12時の3は俺がやる。戦闘(コンバット)開始(オープン)

「Rog! 戦闘開始!」


 よし、冷静に指示が出せてるじゃないか。上出来、上出来。


 戦闘中の指示はできる限り短く、必要な情報だけを正確に伝える。円滑にパーティを回すためにはこれが鉄則だ。だらだらと会話をしているうちにも状況は刻一刻と動く。鮮度を失った情報に価値はない。


 俺はミリアが俺のありがたい教えを守って、ちゃんと指示を出せたことを心の中で誉める。声に出して誉めるとまた調子に乗るだろうし、誉めるのは今回の依頼が全部終わってからでも十分だ。


 とりあえず、サクッと殺るか。


 俺は目の前に意識を集中し、12時方向の3頭の魔物《狼犬(ウルフドッグ)》を屠りにかかる。

 《狼犬》は、犬をそのまま大型化したような魔物で、危険性もそれに準じる。

 厄介なのは、狼のように群れでの狩りを好むので必ず集団戦になるという点と、劣勢になると遠吠えで近くの仲間を呼び集める点だ。

 故に、《狼犬》相手には速攻、この一手しかない。


 そして、俺の目の前には三頭の《狼犬》、仮にそれぞれのポジションから《左》《中》《右》と名付けよう。


 《左》は三頭の中で一番奥、こちらを向いて俺の存在を視認している。

 《中》は三頭の中で前後配置でも中央、先ほどミリアのダガーを受けたのがこいつで、体は俺の方を向きながら、脚に刺さったダガーを気にして俺への注意は散漫。

 《右》は三頭の中で最も俺に近い。ただし、《中》の様子を気遣うように体は俺とは反対を向いているし、意識もこちらに向いていない。


 この三頭の《狼犬》、果たしてどれから処するべきか。俺の頭は風の速さで飛び出した肉体と同じく、一瞬で標的の優先順位を決める。


 最初はお前だ。とりあえず死んどけ。


 そう頭の中で呟くとーー


「ーーっるぉら!」


 俺は茂みから飛び出した速度を一切殺さないまま、《()》の脳天にめがけて真一文字にスクラマサクスを振り下ろした。


 魔物との戦闘での鉄則は「とにかく脅威度の高い敵から倒すこと」である。「脅威度」とは「敵がこちらにダメージを与えてくる可能性」と言い換えてもいい。

 初心者《悪魔狩り(スレイヤー)》がよくやりがちなミスとして、少しでも頭数を減らそうと弱った魔物に止めを刺しているうちに

健常な魔物に襲われて怪我をするというものがある。

 魔物との戦闘はテーブルゲームのようにターン制で順番が回ってくるわけではない。頭数を減らしたからといって攻撃の回数が減るわけではないのだ。


 今回、俺はこちらを向いて、怪我もしていない《左》を脅威度が最大の獲物と定めた。《中》のように怪我をしていればそれだけ攻撃の手は鈍るし、《右》のように体の向きが反対ならこちらを向き攻撃体勢をとるまでには時間がかかるからだ。

 そして、俺に向かって飛びかかる素振りを見せた《左》は、しかしその動作をすることなく脳天を爆ぜ飛ばして絶命する。


「ゥワォン!」「グルァオゥ!」


 弾けとんだ《左》の脳漿を体に浴びて、ようやく俺の存在を意識した《中》と《右》が唸り声をあげる。


 だが、今唸っているような段階では既に手遅れだ。


「ふっ!」

「ギャウ!?」「ギャワン!?」


 《左》の脳天からスクラマサクスを引き抜きざまに、俺はその勢いを利用して《中》を《右》の方へと蹴り飛ばす。武器での攻撃を警戒していたであろう2頭はそれよりも速く繰り出された俺の蹴りに対応できず、縺れるように地面を転がる。

 そして、それは一流の《悪魔狩り》の俺を前にしては、文字通り致命的な隙だった。

 2頭が体勢を整える前に肉薄すると、素早くその脚を刻む。4足の獣は1脚でもその脚を失えばそれだけで機能不全を起こす。最早こいつらは俺の敵ではない。


「ミリア、切り替え(スイッチ)だ!」

「……! Rog! ミリア、スイッチします!」


 「切り替え(スイッチ)」はその名の通りポジションを入れ替わるときの符号だ。もう止めを刺すだけの2頭をミリアに任せ、俺はミリアが戦闘していた。10時方向の《狼犬》と対峙する。


「グルルル……」

「よう、大将。仲間が殺られてご立腹かい?」


 口腔から涎を垂らし唸りをあげる《狼犬》に、分かりはしないだろうが軽口を飛ばす。

 目の前の《狼犬》は先ほどの三頭よりもやや体格に優れている。三頭から離れて位置取りをしていたことからも、こいつがこの群れの主だ。だから、経験を積ませるためにミリアにこいつを当てた。

 《狼犬》は部下を殺られて怒髪天というところだろうが、毛並みに刻まれた無数の傷によるダメージは隠しきれない。


 ミリアめ、中々上手くやってるじゃないか。


 スイッチしたときに少し複雑な表情をしていたミリアは、恐らくこいつを倒しきれなかったことを悔やんでいたのだろうが、元からミリアにこいつは荷が重い相手だった。

 俺からすれば無傷でこいつを削れただけでも上出来だ。


 あんまりおだてるのも癪だが、褒められる時に褒めてやらないと褒める機会がないから……なっ!」

「ギャウォン!」


 そんなことを考えている最中に飛びかかって来た《狼犬》をスクラマサクスで迎撃する。あちらからすれば俺の思考の隙を突いたつもりだったのだろうが、傷だらけのその体では俺の隙を突くにはいささか遅すぎた。

 俺に軽口を言わせる時点で、もうとっくに戦いの時間は終わっていたのだ。


「ゲヒュッ! ゴフュッ!」


 横薙ぎの斬撃によって両前足と下顎を削り飛ばされた《狼犬》は立ち上がることはおろか呼吸すらままならず地面で悶える。

 そんな《狼犬》を俺は冷めた目で見下ろしていた。


「次に生まれるときは人間様に媚を売れるように芸でも覚えとくんだな」

「グゲッ!」


 言葉と共にスクラマサクスを振り下ろす。刃は寸分の狂いもなくその首をはね飛ばし《狼犬》のボスはその活動を永久に停止した。


「アッシュ、戦闘(コンバット)終了(クローズ)

「あっ、ミリア、戦闘終了、です!」


 俺の戦闘終了報告に、慌ててミリアの報告が返ってくる。どうやら、俺よりも先に止めを刺し終わっていたらしい。


「よし、戦闘完了(オールクリア)。手分けして素材を集めるぞ、もたつくなよ」

「は、はい!」


 こうして、深度3《魔界(リンボ)》での初戦闘は終わった。

 しかし、これはこれから何度も経験する戦闘の初戦でしかない。そして、俺たちには全ての戦闘で一敗することすら許されてはいない。


 ーー敗北は、即ち死。


 いそいそと《狼犬》の毛皮を剥ぎ取るミリアを尻目に、俺は森の奥、まだ見ぬ次の獲物に鋭い視線を注ぐのだった。

というわけで魔界での戦闘でした。


最近は戦闘描写のない作品ばかり書いてたので感覚が戻るか不安ですが頑張ります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ファッ!?投稿再開してるやんけ! お前の小説を待ってたんだよ! [一言] (遅れてた理由)道理でねえ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ