異世界人、副業をする。
第6話
「うう・・・」
ツウチョウという預けた金の額を見れる物を見ながら、俺は呻く。8500円。これが現在の残金だ。先日、家具を購入した際、買いすぎてしまった。ただいま、絶賛もやし&コンビニ飯が食事となっている。
「どこかに楽して金稼げる職は無いのか?」
職が大量に載っている本を見ながら、呟く。そこで、俺の目にとまった職があった。
『荷物運びの要員、募集中!時給3000円』
これだ!と思った俺は下に降り、公衆電話に番号を打ち、電話をした。
「やあ、ここの責任者、山田 筋肉(やまだ まっする)だ!君がナロク・ローグ君だね?」
「は、はあ。」
「今日はよろしくね!」
俺がやって来たのはノダ・コーラの工場。バスで行ける距離にある飲み物の工場だ。やたらと筋肉質な男と挨拶を済ませると、彼は仕事の説明を始める。
「この箱をあの車に運ぶだけ。初めての人は3箱運ぶと、息切れしてギブ。君もそうなるかもね。」
本当か。しかし、これは仕事。頑張らない訳には行かない。
「よっこらしょ。」
結構重い。ふらつく。どうにか1箱運び終える。この調子だと次の箱で倒れてしまう。こんな時は、
「筋肉強化<マッスル・ストロンガー>」
小声で呟く。これで俺の筋力は倍以上だ。
「おっ、新人、がんばるなあ。」
周りの人からも高評価だ。
こうして4時間がすぎた。
「いやー、ありがとうね。これ、お給料。あと、乗りな。家まで送るから。」
「ありがとうございます。」
軽く会釈し、乗り込む。
「君、最初少し怖かったんだよね。」
「へえ、そうなんですか。」
「前、君に似た雰囲気の子に少し怒られたんだよ。赤い短髪に青い瞳、長い緑の服を着ていた子でね・・・」
「なっ・・・」
俺はそれを聞いて、1人しか思い浮かばなかった。長い緑の服というのはおそらくノース・ローラン帝国魔術学校の制服のローブ。そして赤い短髪に青い瞳と言えば・・・
俺を転移魔法でここに転移させた男・・・フェネク・フシトリしかいないのだから。