異世界人、警察に補導される。
第1話
「で、名前と住所、早く言ってくれねえか。」
俺はあの後、紺色の服を着た男によくわからない建物に連れて来られた。この男、顔も怖いがなかなかに声も怖い。
「俺の名前はナロク・ローグ。 ・・・普通名前は聞いた方が先に名乗る物じゃないのか?」
「そいつぁ悪かったな。俺は権田正太郎(ごんだ しょうたろう)だ。38才妻子持ち。ここ最近の悩みは10才の娘が俺に対して冷たい事だ。」
「ふむ、ゴンダ、お前も大変だな。
「わかってくれるのか・・・。小さい頃は『パパとけっこんするー!』って言ってくれてたのによう・・・。最近は『臭い、キモイ、こっち来んな。』のオンパレードだぜ・・・。」
「うんうん。年頃の娘は気難しい物だからなぁ。」
「本当にな・・・。 おっといけねぇ、仕事に戻らねえとな。でナロク、住所は?」
「ジュウショ?なんだそれは?」
聞き慣れない言葉だ。祖国にそのような物があっただろうか。
「なっ・・・ マジかよ。ホームレスか・・・?」
ほーむれす。これもまた知らない言葉だ。ここは、本当に違う国なのか?
「なら!なら出身国!分かるだろ!」
出身国か。それなら
「ノース・ローラン帝国だが。」
「どこだよ!聞いた事無ぇぞンなとこ!」
おかしいな。ちゃんと答えたんだが・・・
「ええい、わからん! ・・・そうだ!地図描け地図!」
そう言うとゴンダは紙と・・・なんだこれ?
「む?んんん??」
「ボールペンも分からないのか!?貸せ!」
カチッ
「うわっ!何かでてきた!」
「いいから描け!」
えーと、確か。四角描いて触覚生やしてヒレつけて・・・。うん、これぞ祖国。
「できたぞ!」
「ほう、どれどれ。」
ごすっ ←俺が殴られた音
「いってえ!何すんだ!」
「北海道じゃねえか!いつまでも夏葉原気分のままでいんな!」
ナツハバラってなんだよ!と内心キレつつ、答える
「いや、これノース・ローラン帝国だ。」
「むう・・・どうも怪しいが信じてやろう。何か特技は?」
「魔法が使える。」
「嘘つけ!」
本当なのだが。数秒後、ゴンダはポケットから棒を出してくわえて
「じゃあ、この煙草に火、つけてみろ。」
火をつけるのか。それなら
「発火<プロミネンス>!」
魔法を唱えるときっちり火がついた。
「おお、マジか。それなら・・・」
ゴンダは立ち上がり、奥へ行った。1分後、鍋をもって帰ってきた。
「よし、この鍋の水を30秒で湧かしてみろ。」
30秒か・・・。なら!
「煉獄<インフェルノ>!」
ぼんっ!と音がした後・・・
鍋が持ち手を残して消えていた。さすがのゴンダも口をあんぐり開けている。
「お、おお。って、えぇ、いや・・・」
ゴンダは後ろを向いて何やらブツブツ言っている。ときおり「監獄か・・・?それとも・・・」
など、多少不穏な言葉も混じりながら、何か考えている。
たっぷり10分悩んだ後、
「よし!お前に家と金、そして働く場所を紹介しよう!」
ゴンダは少し焦った様子で、そう宣言した。
第2話に続く
これからも不定期投稿になると思いますが、よろしくお願いします!