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第66話 パープートリオ、魔王を召喚する


ツーロン以外にも数多(あまた)ある世界、その中でも異質なのがほとんどマナが存在せず、科学技術で文明を

発展させてきた地球世界だ。時は西暦2099年、間もなく22世紀を迎えようとするこの世界の片隅に、

小さな島国が存在していた。その国の名は”日本”といった。


「どうもお疲れさまでした。師匠たちも良いお年を」


「おう、また来年もよろしくな」


西暦2099年の大晦日、東京都F市にある食堂では今年最後の営業を終えたスタッフ達が、店の主人に

あいさつして退勤していく。彼らを見送った店主は、彼の家族が待つ居間に戻っていった。そこは間もなく

22世紀を迎えるとは思えない、レトロな光景が広がっていた。畳敷きの和室にちゃぶ台が置かれ、卓上

には家族分の年越しソバが用意されている。22世紀どころかまるで20世紀中頃、ここだけは昭和時代

で時が止まったかのような光景だ。ただしテレビだけは精密な3次元立体テレビで、今が21世紀末で

あることを示している。


「あら魔王さま、もうみんな帰ったのですか」


「ああ、みんなで年越しソバ食べたら初詣でにいくか」


店主の妻は彼のことを、あなたでも名前でもなく、”魔王さま”と呼んでいた。そう、彼らはこの地球世界の

出身ではない。別の世界からひょんな事で日本に住みついた”魔族”であった。転移したばかりの店主は

この食堂で絶品のラーメンに出会い、先代店主に弟子入りして店を引き継ぎ、現在に至っているのだった。


「来年も無事営業できるよう、神様にお願いしておくか」


「そうですねえ、今年の夏も平均40度近くありましたから・・・・」


20世紀末から問題になっていた地球温暖化、すでに北極南極の氷は融けいくつかの国が姿を消した。

日本は海岸線に高い堤防を張り巡らし、海面上昇を何とか防いでいた。更には風速80mクラスの台風

が頻繁に襲うようになり、その度に大きな被害を被っていたのである。


「妾は、またお姉ちゃんたちに会えるようお願いをするのじゃ」


彼らの養女、ニールがそんな願い事を口にする。彼女もまた別世界の魔王なのだ。日本にきた頃はまだ

小学校低学年くらいの容姿だったが、現在では見た目20代前半の美女に成長していた。彼ら魔族と人間

とでは寿命の長さが違い過ぎる。ニールは毎年一緒に今は亡き親しい人間と初詣でに出かけていた頃を

懐かしんでいるのだ。


「そうだなあ、あいつらがいた頃は本当に賑やかだったな、、、、」


「ふふ、お店のお手伝いもよくしてくれましたねえ」


3人は仏壇に安置してある古い写真にに視線を向ける。そこには彼らの他に眉目秀麗な金髪の女性や、

やや吊り目の悪役令嬢風な女性などが写っていた。


「うん、初夢でいいから、また会えるように神様にお願いするのじゃ・・・・」


「ははは、でもあいつら夢の中でもパープーやってそうだぞ」


「お手伝いに来てくれたのはいいけど、コタツから出てこなかったりしてねえ」


しんみりした空気を払拭しようとする店主とその妻、しかしそんな彼らの顔にも寂しそうな表情が浮かんで

いる。いろいろ振り回されたこともあったが、今では楽しい懐かしい想い出なのだ。


「さてと、年越しソバも食べ終わったしな。あいつらに今年最後のあいさつをしてから出かけようか」


「ええ、あんまり遅くなると電車混みますから、、、あら、地震かしら」


彼らが出かけようとした時、カタカタと音を立てて建物が小刻みに揺れ始める。


「いや、これは地震にしては妙、、、何だ、このマナの波動は! イリス、ニール、床に伏せろ!」


「は、はいっ!」


その直後、”ドンッ!”という音とともに彼らの意識は暗転した。


「う、う~ん、、、みんな無事か」


「はい、魔王様、、、しかし今のは一体何だったのでしょう。地球であれほどのマナは使えないはずでは」


「なんか、外で話し声が聞こえるのじゃ」


ニールの言葉に店主が外を探索すると、確かに複数の気配が感じられた。しかも、いずれも強力なマナ

の持ち主である。


”やったぞ、召喚は成功だ!”


”おお、これで私達の野望が現実のものに!”


そんな声も聞こえてくる。どうやら自分達は、外にいる連中の”野望”とかのために、どこかの世界に召喚

されたと知った店主とその家族は眉をひそめる。


「ふむ、我らはどこぞの異世界にと召喚されたらしいな」


「魔王さま、一体何のために・・・・」


「さあな、しかしロクなものじゃないだろう。きっと魔王の脅威から世界を救ってくれとか、そんなものじゃ

ないか」


「あらあら、そんな理由でせっかくの初詣をフイにされたんじゃ、たまったものではありませんねえ」


「初夢も見られなくなったし、許すことはできないのじゃ!」


そう不快感をあらわにする三人、地球とは違いマナの豊富なこの世界では、彼らはその実力を遺憾なく

発揮することができる。そうして、臨戦態勢を終えた彼らは建物の外へと足を踏み出した。


”人化しているが、ドラゴンが5体か、それにフェンリルやバンパイヤまでいやがる”


”魔王さま、人族もおりますがいずれもかなりの強敵ですね。しかし、人族とドラゴン、魔族が一緒とは、

本当に何が目的なんでしょうか”


警戒しながらヒソヒソと話し合う店主夫妻、イマイチ相手の目論見を計りかねていた時、彼らの耳に懐かしい

声が響いたのだ。


「やっほー、久しぶりドラコさん。あ、ニールちゃんもずいぶんきれいになったわねえ」


「あ、綾香殿、、、どうしてこんなところに、それにその姿は一体!」


「綾香さん、もう30年以上も前に亡くなったはず、、、、」


いきなり軽いあいさつをかましたレノン、彼らの混乱ぶりに拍車がかかったのは言うまでもないことだった。


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