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第65話 パープートリオ、禁術に手を出す


「イッサ長老、このたびはお世話になりました」


「いやいや猊下こそ、我らオーガ一族との友誼を結ぶことご決断していただき、一族を代表して感謝を

申し上げますわい」


3日間の滞在を終え、レノン一行が神聖法国に帰る日がやってきた。朝は懐かしい和食に前世を思い出し、

取り乱していた彼女だったが、今はすっかり教皇としての顔に戻っていた。


「レーナさんもまた遊びにきてくれよ。いつでも歓迎するからさ」


「ああ、ジュウゾウよまた一緒に狩りに行こうぞ」


レーナもすっかり里のオーガ達と親友になっていた。ちなみにキングボアやグリフォンなど強力な魔物を

一撃で仕留める彼女は、力を尊ぶ彼らから尊敬を集めている。


「では、そろそろ出発を、、、と、エリス様はどこに行かれたのでしょうか」


「あれ、さっき私が起こしたはずなんだけど・・・・」


いざ出発という段になり、姿の見えないエリスをキョロキョロと探し回る一行、そんな時、ジュウゾウの妻

ハルカが困ったような表情で屋敷から現れた。


「ええと、聖女さんコタツの中で熟睡してるけど、どうしましょうか・・・・」


「全くあのヒキニート聖女め! 引きずり出してくれるわ!」


「ごめんレーナ、首に縄つけてもいいから連れてきてちょうだい」


こうしてレーナは、”わたくしはコタツ天国で一生過ごしますわ!”と抵抗するエリスを、本当に縄でぐるぐる

巻きにして担いできたのであった・・・・


「ああ~、コタツ天国が、、、桃源郷が遠ざかっていきますわ、、、」


「こら、そなたのようなぐうたらにいつまでも居つかれたら、オーガ達も迷惑するだろう!」


「まあ、今度は3人でお役目抜きで遊びに行きましょうか」


現在一行は神魔の森を抜け、神聖法国に向かって一路帰還中であった。


「それに、お土産もたくさんいただいたしね。うふふ、帰ってからの一杯が楽しみだわ~」


レノンはコメシュやグラウンドクラーケンのスルメなどをどっさり贈られ、ホクホク顔だ。これらはレノン以外

の人族の酒飲みにも好評で、後にオーガの里の名産品として各国に輸出されることになる。ちょっとした

和ブームがツーロンでも起きたのであった。


「畳やお布団も送ってもらうようにお願いしたから、後で私とエリスの部屋も和室に改装するわよ」


「レノンお姉さま、ぜひコタツも入れてくださいませ」


神魔の森を抜けてから馬車で移動中の彼女たちは、そんなとりとめのない会話を続けていた。と、その時、

レーナの雰囲気がガラリと変わる。


「ところでレノン、例の計画は本当に進めてよいのか。すでに師匠には内諾は得ているが」


「ええ、これはもうやるしかないわね・・・・」


「レーナお姉さま、レノンお姉さま、このわたくしも全力を尽くしますわ」


日頃”働いたら負け”を座右の銘にしているエリスがやる気になっている。彼女達は一体、声をひそめて

何を話し合っているのだろうか。不幸にもゼノア達は他の馬車に乗っていたため、このパープートリオが

またやらかそうとしていることを知ることはなかった・・・・


・・・・そして一か月後、ルーシャス神聖法国聖都シャノン、壮麗な女神神殿に密かに存在する地下空間、

ここに教皇レノンと聖女エリス、英雄騎士レーナが再び顔を合わせていた。


「ほう、これだけスペースがあれば十分だな。しかし、良くこんな所があったものだな」


「ええ、ここは歴代の教皇しか知らない秘密の空間なの。ここで昔は、禁術まがいの儀式をしていたそうよ」


レノンが教皇の座に就いた時、前教皇からここの事も引き継いだらしい。死刑囚を生贄に捧げた教皇も

いたそうで、神聖法国で最もタブーな空間でもある。


「ふう、やっとできたわ。レーナちゃん、後は魔力を通せば発動するわよ」


「ありがとうございます師匠。これは師匠の助力なくしては完成できませんでした」


この場には彼女達だけはなく、プリエール王国魔導師団長、残念アラサーのスタックも同席していた。なお

スタックは魔王戦後王国で行われた慰労会で具合の悪いフリをし、介抱しようとしたベッカーと別室で無理

矢理関係を結んでしまい、しっかり婚約まで結んでいた。


「まあいいわよ。教皇猊下に私達の結婚式を祝福してもらえるし、このくらいお安い御用よ」


彼女の足元の床には、エリスと協力して構築した精緻な魔法陣が刻まれている。魔法については天才的

な才能を持つスタックと、聖女としてあらゆる魔導技術に精通するエリスの二人が揃って、ようやく完成した

ものだ。


『なあレーナよ、本当にやる気なのか。これは、この世の(ことわり)に反する行いに等しいぞ』


そして、スタックの他にも神竜シャイン始め四竜、魔狼ルーディ、真祖バンパイアのテスラ14世も勢揃い

していた。彼らはいずれも、”この世界の未来にかかわる相談事がある”という理由で、聖都シャノンまで

レーナに連れてきてこられたのだ。


「心配するなシャイン、すでに女神ルーシャス様からも内々に承諾の神託は得てあるからな」


「ええ、その辺は抜かりなくやっているから、大丈夫よ」


シャイン達が連れてこられた本当の目的は、魔法陣を起動させるための魔力要員としてだった。すでに

女神ルーシャスの許可まで取り付けているという周到さに、シャインから呆れの混じったため息が漏れる。


『しかし、そなたらもこういう事には手間ヒマ惜しまず熱心なのだな・・・・』


「ははは、まあこの術式が成功すれば、シャインも我らの気持ちがわかるというものだ」


『そうか、じゃあみんな、魔法陣に手をかざせ』


シャインの指示で四竜やルーディ、テスラ14世、それにレーナやエリス、スタックが魔法陣に手をかざし

持てる全てのマナを注ぎ込む。


「森羅万象を司る偉大なる創造の女神ルーシャス様、(いにしえ)の盟約に則り今こそ新しき世界我らに見せたまえ。

この世の全てに祝福を与え給え」


レノンがその聖気を全開にして詠唱を紡ぐ。ほどなくして魔法陣が青く輝き出す。


「魔法陣の起動は成功したわ。みんな早く離れてちょうだい!」


レノンの言葉に全員魔法陣から距離をとった。やがて一際輝きを増したかと思うと、”ドンっ!”という音と

ともに女神神殿が地震のように揺れる。


「や、やったか・・・・」


「どうだろう、まだまぶし過ぎて何も見えないわ」


そして、輝きが納まった後この地下空間に現れたのは・・・・


『何だか、珍妙な建物だな』


(あるじ)よ、あんなボロ家のためにわざわざ我らを使ったのか・・・・」


この世界ツーロンにはない様式の建物だった。しかし、前世を日本で過ごしたレーナ達にはお馴染みの、

まるで寅さん映画に出てきそうな昭和の雰囲気たっぷりなレトロな建築物だ。そこに掲げられた看板には、

”宝来軒”と屋号が描かれていたのである・・・・


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