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第62話 令嬢、悪夢に震撼する


「こらっ! 皆ここからは土足厳禁だ!」


『す、すまぬレーナ、こういう建物に入るのは初めてなのでな』


「ゼノアさんたちも、ここからは履物を脱いで上がってね」


「は、はい猊下、、、かしこまりました」


日本の伝統的な茅葺き屋根とそっくりなオーガの里の建物、いざ中に入る段になり、シャインと四竜、神聖

法国の使節の面々は早速テンプレなことをやらかしそうになり、レーナとレノンに注意されていた。


「わあっ、畳の部屋なんて久しぶりだわ」


この世界ツーロンには、畳の文化はこのオーガの里以外に存在しない。レノンは畳の輸入も行おうと頭の

中で皮算用をはじき始める。


「では、改めて挨拶をいたしましょうぞ。わしがこの里の長老イッサじゃ」


「ルーシャス神聖法国教皇、レノンと申します。本日は私達人族の使節団を受け入れていただき、代表

してお礼を申し上げます」


こうして、話はオーガと人族との和解と今後の交流について進んでゆく。レノンは過去にオーガ一族を迫害

したことを詫び、教皇として他種族融和を進めていくことなどをイッサに説明した。


「ほう、、、魔族の国とも交流を進めていくと」


「はい、教皇レノンの名において、他の人族の国にもこれまでの人族至上主義は偉大なる創造の女神、

ルーシャス様のご意志に反する行為であるとお触れを出しております」


保守的な国からは反発もあったのだが、レノンは”破門”をちらつかせて抑え込んだ。中には彼女を教皇

の座から追い落とそうと、神聖法国に工作を仕掛けた者もいたのだが、すでに法国自体、カラオケなどの

日本文化浸透により”教皇さまマンセー”の状態になっていたため、その目論見は潰えていたのである。


「レノン殿の誠意、このイッサしかと見せていただきましたぞ。今日より我らは友人として、子々孫々まで

付き会って参りましょう」


「イッサ長老、ありがとうございます」


オーガ一族と人族との歴史的な和解は、このようにして成されたのである。その後両者は長い友好関係

を続けていくことになったのだ。


「ところであれ? ゼノアさんエリスはどこいっちゃったの」


「確か先ほどまで、私の隣りにいらっしゃいましたが、、、、」


いつの間にか姿を消してしまったエリス、レノン達は周りをキョロキョロしながら探していた時、隣の部屋

のふすまを開けジュウゾウが現れた。


「あー、、、コタツの中に女の子が入り込んでいるんだが、、、」


その言葉にレノンやレーナが様子を見にいくと、オーガサイズの巨大なコタツから首だけを出すコタツムリ

状態で、熟睡しているエリスの姿があった・・・・


「ちょっとエリス! まだ長老さんとお話し中なんだから、そんなとこで居眠りするんじゃないの!」


「そなたは一応聖女だろう。きちんとお役目果たさぬか!」


「むにゃむにゃ、、、わたくしはもう一生この素晴らしいコタツの中で暮らすのですわ、、、、」


レーナ達の叱責もなんのその、引きこもり街道を驀進中の聖女さまだった・・・・


「それでは、この歴史的な和解を祝って乾杯!」


「「「「「「乾杯!」」」」」」


その日の夜、里の鎮守の広場ではレノン達使節一行を招いての宴会が行われることになった。乾杯の

お酒なもちろんコメシュ、精霊王国のコメシュが日本で言う洗練された大吟醸なら、オーガの里は昔ながら

のどっかとした味わいの日本酒だ。


「さあさ、おかわりはいくらでもありますので遠慮なくお召し上がりください」


料理は巨大イノシシな魔物、キングボアのシシ鍋だ。今回は醤油、味噌味双方が用意されレーナやレノン、

そして匂いにつられてコタツから這い出てきたエリスも舌鼓をうっている。


「いやー、コタツもお布団もあるし最高ですね。わたくしここに移住して一生引きこもりますわ」


「エリスよ、頼むからオーガ一族にパラサイトするのはやめてくれよ、、、、」


このぐーたら聖女、騎士団に放り込んで思いっきり鍛錬してやろうかと本気で考えるレーナだった。


「おねーちゃん、たこ焼きまーだー」


「はいはい、今焼きあがるから待っててね。いくらでもあるから大丈夫よ」


一方、レノンは持参のたこ焼き器でオーガ達にたこ焼きを振る舞っていた。子供たちにも大人気のようだ。


「しかし、あのデビルオクトパスがあんなにうまかったとは、思わなかったなあ、、、」


「ジュウゾウよ、他にもたこわさとか色々な調理方法があるから、後でレシピを教えるぞ」


「おお、レーナさんそれはありがたいな」


この時まではとってもなごやかな時が流れていた。この時までは・・・・


「「「「「「「今日もお酒が呑めるのはっ! ジュウゾウ兄いのおかげですっ!」」」」」」」


「「「「「「「それえっ! イッキっ! イッキっ! イッキっ! イッキっ!」」」」」」」


周囲のはやし立てる手拍子に合わせ、並々とコメシュを注がれた丼ぶりを飲み干すレノンとジュウゾウ、

そして、体格では遥かに勝るジュウゾウがガクッとその膝を地面についた。


「くはあ、、、もうこれ以上は飲めん、無念なり、、、、」


そうして、意識を失ってしまうジュウゾウ、対してレノンはケロっとした顔だ。彼女の背後にはレノンに挑んで

破れたオーガ達の屍が積み重なっている。今世もレノンの酒豪ぶりは健在だった。


「まさか、まさか、、、今世でも悪夢を見ようとは、、、、」


「あー、、、、教皇猊下またやっちゃいましたか」


「ゼノア枢機卿殿、”また”とは一体、、、、」


「実は、グランツ王国でも族長始め、ドワーフ達を飲み比べで潰してしまいましてな・・・・」


ゼノアの言葉にレーナも顔が引きつるのを押えられなかった。だが、悪夢は更に続いていくのだ。


『チッ、人族の小娘に潰されるなんて、オーガ達も情けねえなあ』


「フレイムやめろ! 酒であやつに勝てる者はこの世界には存在せんぞ!」


『ふっ、レーナ様、男には勝負に出なければいけない時があるんだぜい』


レーナの引き留めもむなしくレノンに勝負を挑んだ火竜フレイム、しかし彼も、レノンの前に無残にも敗北

してしまうのだった。


「なーんだ、ドラゴンやオーガの皆さんって、意外とお酒弱いのね~」


「そ、そんな、、、火竜フレイム様まで破れるとは!」


「くっ! 誰かあの小娘に勝てる者はおらんのか!」


前世同様調子ぶっこき始めたレノンと本気で悔しがるオーガ達、彼らは次の哀れな生贄に目をつけたの

であった・・・・


「こうなったら神竜様、あなた様におすがりする他ありません」


「そうです、あの小娘を止められるのは、神竜様以外におりませんぞ!」


「ちょ、ちょっと待てそなたら、私はフレイムより酒は飲めないんだ! レーナ、あの教皇を止めてくれ!

て、、、レーナ! 一体どこに消えたのだ!」


ヤバイ雰囲気を感じ取ったレーナは、隠行の術式を展開しその姿を消していた。もちろんエリスもさっさと

寝室の中へばっくれていたのである。


「「「「「「「今日もお酒が呑めるのはっ! 神竜様のおかげですっ!」」」」」」」


「「「「「「「それえっ! イッキっ! イッキっ! イッキっ! イッキっ!」」」」」」」


シャインの抗議の声は、酔っ払い共の手拍子の中へかき消されていった・・・・


「う、う~ん、、、もう飲めん、、、」


「うおっぷ、、、気持ち悪い、、、、」


1時間後、広場は神竜シャインと四竜、そしてオーガ達の墓場と化していた。その中で一人レノンだけは

未だ健在だったのである。


「あーはっはっはっ! このレノン様にもう敵はないわっ! この世界ツーロンは私のものよおぉぉぉぉっ!」


「おお、、、女神ルーシャス様、どうか猊下を正しき道に戻したまえ・・・・」


ハイテンションなレノン、彼女を止める者はもう存在せぬと思われていた時、ゼノアの祈りが天に届いた

のだ。突然空間が光り輝いたかと思うと、そこから一人の男性が姿を現した。


「レノン様、お久しぶりでございます」


「あら、セバスさんじゃないの。うふふ、次のお相手はあなたかしら」


そう挑発的な言動のレノンに、セバスはあくまでも慇懃な態度で答える。


「いえ、わたくしは(あるじ)ルーシャス様からのご伝言をお届けに参りました次第にございます」


「えっ! おかー、、、いえ、女神ルーシャス様からの伝言、、、」


これまで傲岸不遜な態度がウソのように、しおらしくなるレノン、セバスはそんな彼女に決定的な言葉を

告げるのであった。


「はい、”あんまり調子ぶっこいてると、簀巻きにして木に逆さ吊りにするわよ”、とのことでございます」


「申し訳ありませんでしたあぁぁぁぁぁぁっ!」


レノンは速攻で見事な土下座を決めた。そして女神ルーシャスへの懺悔の言葉を口にする。


「おお、偉大なる女神ルーシャス様、どうか、どうかその慈悲深い御心でレノンの過ちをお許しください!」


涙ながらに女神ルーシャスへ許しを乞うレノン。後世の歴史では、道を誤まりそうになった教皇レノンに

対し、偉大なる創造の女神ルーシャスは使徒を使わしそれを窘め、正しき道へと案内したと伝えられている。


この小説はフィクションです。今話に書いた酒の飲み方を強制すると、現在では

”アルハラ”になりますので、絶対にやらかさないでくださいね。

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