第58話 令嬢、四竜たちをブートキャンプに放り込む
「カルス陛下、王都直轄騎士団第一部隊所属レーナ、ただいま帰還した次第にてございます」
「は、はは、、よく無事で戻ったな騎士レーナ、ところで、上空におわす方々は一体どこのどなたかな」
プリエール王国王都フラックの王城、その前ではレーナの帰還挨拶を受けた国王カルスが顔を引きつらせて
いる。
「はい、この度私と”魂の盟約”を交わした神竜シャイン殿と、その眷属である空竜のエア殿、地竜アース殿、
水竜アクア殿、火竜フレイム殿にてございます」
「ははは、うんブラッドよ、どうやら私は悪い夢を見ているようだ。後は頼んだぞ」
「陛下、現実を直視なさいませ。これは現実でございますぞ」
想定外の出来事に現実逃避をし始めたカルスをたしなめるブラッド。気付け薬を飲んでようやく落ち着いた
彼は、詳しい話を聞こうとレーナを城内へと誘う。
「ドラゴン殿はさすがに城に入れぬから、外でお待ちしていただく他ないが」
「陛下、それならご心配に及びません。シャイン、皆に人化してもらえぬか」
『わかった』
まばゆいばかりの光に包まれるドラゴンたち、それが納まった後現れたのは、美男美女の面々であった。
王国側の人間はお口あんぐりの状態だ。
『これなら城内にも入れるであろう。さあ、中に案内してくれぬか』
「わ、わかり申した、、、おい、騎士レーナとドラゴン殿をご案内しろ!」
こうして、レーナご一行は王城内にと入っていく。広間では完全に疲れ切った表情のカルスが、レーナの
説明を受けていた。
「・・・・なるほど、ラングレー王国からの魔信は偽りではなかったのか」
「はい、お騒がせしたようで申し訳ございません」
「それで騎士レーナよ、そなたはこれからどうするつもりなのかな」
内心カルスは、魔王バルダックなぞ比較にならぬほどの戦力を手に入れたレーナが、何をやらかす気かと
戦々恐々としていたのだ。なにしろ彼女が望みさえすれば、この世界ツーロンを支配することも可能なの
だから。
「はあ、休暇も終わりましたので、騎士団の勤務に戻りますが、、、、」
「「「「「「ええっー!」」」」」」
世界を支配できる力を持ちながら、これまで通り騎士団勤務を続けると言明したレーナに、周囲は大声を
上げてしまう。ベッカーだけは”まあ、彼女らしいねえ”と苦笑していた。
「それにあたって、陛下にお願いがございます」
「ふむ、私でできることならそれを叶えること、やぶさかではないぞ」
「はい、シャイン始めこの四竜たちの、王都直轄騎士団への入団をお認めいただきたいのです」
「「「「「「はえっ!」」」」」」
レーナの言葉に王国側だけでなく、四竜たちも妙な声を上げてしまう。
『ちょっと、、、どうして私達が人族の騎士団に入らなくちゃならないの!』
『アクアの言う通りだぜえ、なぜ今さら、、、』
『貴様らは黙っていろ!』
ブーブー不満を口にし始めた四竜たちであったが、シャインの一喝でその口を閉じた。
『これは、私とレーナが相談の上決めたことだ。異を唱えることは許さぬぞ!』
シャインもレーナと四竜の戦闘を見、更にレーナから火薬兵器の話を聞いて危機感を覚えたのだ。最強の
存在だと驕り高ぶっていては、遠くない未来に人族に敗れることは確実だと。
「それで、、、、伝説のドラゴン様ご一行が騎士団に入団したと」
翌日、騎士団の訓練場では人化して騎士団見習いの服装を着ている四竜たちを前にして、隊長のルミダス
がため息をついていた。
「ルミダス隊長、彼らには命令に従うようよーく言い含めてありますので、新兵と同じ扱いでかまいません」
「そうか、ではまず剣の腕を確認させてもらうとするか。レーナ、相手をしてやれ」
だが、レーナは四竜たちの模擬戦の相手に自分ではなく、舎弟たちを指名したのである。
「姉御、さすがにドラゴンが相手では無理ですよう、、、」
「大丈夫だ、これは純粋に剣の腕を見るだけだからな」
そうして、ビクビクしながら四竜と対峙する舎弟たち、だが・・・・
「あれ、まだ一合も打ち合っていないっスけど・・・・」
「剣の動きは、完全にド素人っスねえ・・・・」
この世界で強大な力を誇るはずの四竜たちは、模擬戦でレーナの舎弟たちにボコにされるという醜態を
さらしてしまった。
『うう、、、なんで我らが人族なんぞに・・・・』
「これがお前らの今の実力だ。これまで鍛錬を怠っていたツケだな。だが安心するがよい。私はもちろん
皆がそなたらを一人前の騎士にするべく手ぐすねひいて待ってるからな」
そう獰猛な笑顔を見せるレーナに、四竜たちは震えあがるのであった・・・・
『ひい、、ひい、、、もうダメだあ、、、』
『お願いレーナ様、もう腕が限界なのう、、、、』
まずは体力づくりだと、四竜たちは訓練場で腕立て伏せを行っていた。100回を超えたところで彼らから
泣き言が聞こえてきた。
「あれえ、、、ドラゴンの方々空身なのに、もう泣き言入ってるっスよ」
「意外と体力ねえんだな、、、これは鍛えがいがあるぞ」
そう、四竜たちは空身なのに対し、騎士団の面々は背中に5枚の石板を乗せて同じ回数腕立て伏せを
行っているのだった。
『しかし、、、なんでそなたらは平然としているのだ、、、』
同じく腕立て伏せを行っていたシャインが呆れたように言う。彼も四竜たちよりはマシだが、それでも背中に
重しを乗せての腕立て伏せはさすがに厳しかったのだ。
「なに、気合があれば可能なことだ」
「そうですよ、シャイン様たちならすぐに10枚くらい乗せて腕立て伏せができるっスよ」
『そうか・・・・』
あまりにも脳筋な彼らの言に、シャインは考えることを放棄した。
『もらったっ! ぐえっ!』
「甘いわっ!」
体力錬成の後は、ドラゴンの姿に戻っての空中戦の訓練だ。レーナはシャインに騎乗し四竜を一度に相手
にする。一斉に飛びかかる四竜を軽くかわし、即座に彼らの背後をとって撃墜判定をもぎとっていった。
「ふーむ、、、これでは地球の戦闘機相手にしたら瞬殺されるな」
3時間の模擬戦を終え、息も絶え絶えの四竜を見てレーナは不満気な表情だ。そしてそれは、シャインにも
向けられていく。
「シャインよそなたもだ、今の動きでは地球の戦闘機や皇国の竜騎士を相手にしたら、赤子の手をひねる
ようにやられるぞ」
『わかった、努力しよう・・・・』
彼もレーナから前世地球や皇国の戦力を聞いているので、それが現実であることを認識していた。彼らの
鍛錬はレーナの厳しい指導の元、文字通り月月火水木金金で続けられていった。




