第41話 令嬢、聖女とパンダを天秤にかける
「よし、隊列を組み直せ! 負傷者は治癒術師へ運ぶんだ」
教皇レノンの暗黒しょ、、、もとい聖気により、レイスの群れは一掃された。だが、まだ彼らを指揮している
者が残っていたのだ。
「みんな油断しないで! 四天王と同じ、いえ、それ以上のマナが近づいているわ!」
「あ、あれは首なし騎士!」
「まさか、デュラハンか!」
スタックの警告と同時に、死霊軍団を率いていたデュラハンのリークがその姿を現した。彼は連合軍が
まだレイスに受けたダメージから立ち直っていない隙をついて、本陣にいるエリスをさらっていく。
「きゃあっ、何を!」
「貴様! エリスを離さぬか!」
突然のことで対応が遅れ、エリスはリークの腕に難なく抱えられてしまう。
「メヂューサ様より賜った死霊軍団を破ったそなたらの手腕、見事であった。だが、このまま手ぶらで帰る
訳にもいかぬのでな。そなたらに捕らえられたデルザー様の身、返してもらおうか」
「もし断ったら、、、、」
「聖女の命、亡きものになると心得よ!」
リークはエリスと引き換えに、獣王デルザーの身柄引き渡しを要求した。しかし、それにレーナとレノンの
パープーコンビは渋い顔だ。
「そんな、そんな、、、シァンシァンを引き渡せだなんて・・・・」
「レノンよ止むを得ん、エリスには尊い犠牲になってもらうしか・・・・」
「ちょっとお姉さまあああああっ! 私とパンダどっちが大事なんですかあああああっ!」
自らの欲望のために、自分を切り捨てようとするパープーコンビに対して、エリスは魂からの叫びを上げる
のであった・・・・
「あ、あー、、、今何と言ったのかな。聖女よりもデルザー様を取るというように聞こえたのだが・・・・」
リークの方も想定外の反応に、何だか困惑したような表情だ。
「教皇猊下、騎士レーナ、聖女様のお命には代えられません。デルザーを引き渡しましょう」
「ううっ、せっかく前世からの夢をかなえられたというのに・・・・」
「レノンよ今は我慢しろ。必ずや魔王の手からシァンシァンを取り戻すこと、騎士の名誉にかけて誓おうぞ!」
「あのー、、、私を取り戻すとは誓ってくれないんですか・・・・」
「聖女よ、そなたも苦労しておるようだな・・・・」
この期に及んで未練たらたらのパープーコンビを見て、リークもエリスに思わず同情してしまった。しかし、
引き出されてきたデルザー(改めシァンシァン)を確認すると、今度は彼の目が点になってしまう。
「おいっ、なんだその小動物はっ! デルザー様を引き渡せと言っただろう!」
「えーデュラハンさん、信じられないかもしれませんがあれが獣王さんなんです」
「まさか、そんなことがあるものか!」
声を荒げるリークにエリスはかくかくしかじかと、デルザーが子パンダと化した経緯を説明する。当初憤怒
の表情であった彼の顔が、次第にお口あんぐりの状態になっていった・・・・
「よし、、、聖女よ、向こうへ戻るがよい」
「えっ、私を解放してくれるんですか」
「私の気が変わらぬ内に、向こうへ行け」
リークはなぜかせっかく捕まえたエリスを解放する。連合軍側に戻ったエリスをレーナとレノンが出迎えた。
「エリス、無事だっか!」
「大丈夫、どこもケガしてない?」
「・・・・・・・・・・」
白々しいセリフを吐く二人を、エリスはジト目で見つめていた。
「お二人とも、私よりパンダの方が大事だったのですね。もう魔王軍に寝返ろうかと思いましたわ」
「は、ははは、何を言うエリスよ、もちろんそなたの身が一番であるぞ」
「そ、そうよ、、、レーナの言う通りね、おほほほ」
視線を泳がせながら苦しい言い訳をする二人、だが、一度失った信用はもう取り戻せないのであった・・・・
「メヂューサ様より賜った死霊軍団を破ったそなたらの手腕、見事であった。だが、このまま手ぶらで帰る
訳にもいかぬのでな。このリーク騎士として一騎打ちを望むぞ!」
そんな時、リークの言葉が戦場に響いた。どうやらデルザー云々はなかったことにして、最初からやり直す
ことにしたらしい。
「ほう、、、魔族にも騎士道を理解している者がいるのか。では期待に応えてやらねばいけないな」
リークの呼びかけに早速レーナが相手に名乗りを上げた。
「私よりもパンダを選ぶのが、騎士道なのかしら。デュラハンさんの方がよっぽど騎士らしいですわ」
というエリスの恨み言は聞こえないフリをしつつ・・・・




