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第32話 教皇、会議を踊らせる


「では、これより対魔王同盟会議を開催いたします」


魔王軍の先制攻撃を退けた翌日、プリエール王国王城にて対魔王同盟会議が議長である教皇レノンの

宣言で始まった。


「すでに魔王の復活も確認された今、やつらの先手を打って攻めるのがいいと思うが」


「しかし、魔王軍も我らを迎え撃つ準備をしているでしょう。拙速な策は破滅をもたらしますぞ」


各国の代表が侃侃諤諤(かんかんがくがく)の意見を戦わしているのを黙って聞いていたレノン、彼女は同じく沈黙を

守っていたラングレー王国国王、ダミドに視線を向ける。


「ダミド陛下、貴国では従来の弓やバリスタを遥かに上回る強力な兵器を開発されたそうですね。魔王軍

に対抗するために、ぜひご協力いただきたいのですが、いかがでしょうか」


「ええ、しかし教皇猊下、その兵器は製造に手間がかかる上に、お恥ずかしい話ですが先のプリエール

王国との争乱にてそのほとんどを失ってしまいました。今残っているのは今回護衛用に持参したものが全て

という有様でして、、、ご協力したいのはやまやまですが、あれだけでは大した戦果は望めないでしょう」


なるたけ手の内は明かしたくないし、余計な手間もかけたくないダミドはレノンの要請をやんわりと断った。

だが、それもレノンの想定の内であったのだ。


「あら、それでしたなら技術に優れたドワーフ族の国であるグランツ王国で、貴国の兵器を生産してみたら

いかがでしょうか。まあ平時なら自国の最新兵器を他国になど知られたくないでしょうが、現在は世界を

脅かす魔王が復活したという異常時です。ここは各国が利害を乗り越え、一致団結して事にあたるのが

女神ルーシャス様のご意志にも沿うものではありませんか」


「うむ、確かに教皇猊下のおっしゃる通りですな。我がグランツ王国としても、協力は惜しみませんぞ」


レノンの言葉にグランツ王国の代表も乗っかってきた。これにはダミドも渋い顔をしてしまう。レノンが事前に

ドワーフ族と口裏を合わせ、火縄銃やロケットの製造方法を開示させるように仕向けたことがわかったからだ。


「ダミド陛下、無理を承知でお願いいたします。どうか魔王の脅威からこの世を救うため、お力を貸しては

いただけないでしょうか」


ダミドに向けて両手を組み、祈るような表情で新兵器情報の公開をお願いするレノン。他の出席者たちも


「確かに今は世界の危機だ。ぜひラングレー王国にもご協力をいただきたいものですな」


「女神ルーシャス様のご意志の元、我ら団結して事にあたらねばなりますまい」


などと、次々にダミドに対して協力を迫ってゆく。


”こ、この女、やってくれたな、、、、それが狙いだったのか”


ダミドは表情が引きつるのを押えることができなかった。もしここでレノンの要請を断れば、彼はツーロンで

最大の権威を誇る女神ルーシャスの意志に反した、不信心者と世界中からみなされてしまうからだ。


「はい、ぜひご協力させていただきたいと思います。しかしそれには条件がございます」


「ダミド陛下、条件とは」


「ええ、これは我らの想像を超えた強力な兵器です。もし、国同士の争いに使用されたら戦場はさぞかし

今以上に悲惨な様相となることでしょう。開発した我が国が言うことでもないでしょうが、魔王との戦い

以外ではその使用を制限する条約を結びたいと存じます」


「はい、ダミド陛下のおっしゃる通りですね。それにつきましては次の議題に含めることにいたしましょう。

さすがダミド陛下、その慧眼にこのレノン、感服いたしましたわ。どうか貴国にルーシャス様の加護があらん

ことを」


そう心から感謝の意を表しているかのように見えるレノンに、ダミドは引きつった笑顔を返すことしかでき

なかった。


「陛下、今回はあの教皇にしてやられましたな、、、、」


「ああ、少し彼女を甘く見すぎていたな、、、前教皇以上のタヌキだぞ」


結局、使用の制限を条件にラングレー王国は火縄銃とロケット兵器の情報を全て開示せざるを得なかった。

もし断れば、各国から商取引の停止など制裁を加えられる恐れがあったからだ。さすがに世界から村八分

にされればいくらラングレー王国といえど、干上がってしまう。ダミドは渋々火薬兵器のライセンス生産を

認めたのであった。


「まあ、今回制限をかけたのは火銃と爆火矢だけだ。魔王戦には間に合わないが、早く連発銃と大砲の

開発を成功させねばなるまいな」


「はい、帰国したら兵器開発部にも発破をかけましょう」


彼らも火縄銃やロケットの弱点は先のプリエール王国との戦いで理解している。地球世界と同様、更に

強力な兵器の開発を秘密裏に進めようとしているのであった。


「・・・・なーんていうことを、今あの人たち考えていると思うのよ」


「でしょうか、教皇猊下、、、、」


そんなダミドたちの思惑は、地球世界の知識を思い出したレノンには筒抜けだった。今この場には彼女の

他にはゼノア枢機卿、カルスとブラッド、リシュー、エリスの6人が先の会議の様子を検証していた。


「まあ、条約で制限したのは火縄銃とロケットだけだ、と言い張るでしょうねえ」


さすがのダミドもレノンが前世の記憶持ちだとは想像もしていない。彼らは完全にレノンの手のひらの上

で踊らされていたのである。


「うふふ、午後の部が楽しみねえ」


そう微笑むレノンにカルスたちは、彼女だけは絶対に敵に回してはいけないと心に誓うのであった、、、


「我が神聖法国は、魔王討伐に際し神聖騎士団全軍を出撃させます。この私も先頭に立ち、偉大なる

女神ルーシャス様のご意志を実現すべく、命を賭ける所存であります」


「なんと、教皇猊下みずからご出陣されるとは、我がリューム王国も近衛騎士団を全軍出撃させましょう!」


「プリエール王国は王都直轄騎士団全軍を出撃させますぞ」


「うむ、我がビース森林帝国は遊撃師団を出撃させよう」


レノンの言葉に人族の国はもちろん、すっかり取り込まれたエルフや獣人、ドワーフ族も全ての戦力を供出

すると表明した。もちろんラングレー王国も主力を出すことを表明せざるを得なかったのである。対魔王同盟

会議はすっかりレノンの独壇場と化していたのだった。


「では、魔王討伐軍の出陣は1か月後のこの日にいたしましょう。皆に女神ルーシャス様の加護があらん

ことを」


こうして、魔王討伐の日取りも決定したのだが、それに不満を持つ者が約1名存在した。


「えっ、1か月も先なのか。なあレノン、我らだけでさっさと魔王の首獲りに行かないか。もう待ちきれんの

だがな」


「あんた、生まれ変わっても血の気が多いのは相変わらずねえ、、、、一応国同士のしがらみもあるからさ、

1か月我慢してよ」


そうぶーたれるレーナにレノンは額を押えながら、”お楽しみは後にとっておいた方がいいでしょ”などと

何とか説得するのであった。


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