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第30話 令嬢、魔王に言伝をする


「うりゃあああっ!」


「ギギィッ!」


ルミダスの剛剣は相変わらず冴えわたり、魔人兵を真っ二つに両断する。奇襲から20分あまり、異形の

軍勢はその兵力を王都直轄騎士団の活躍により、ほとんど失いつつあった。一方騎士団の方はかすり傷

を負った者が数名と、圧倒的なキルレシオであったのだ。


「ほう、さすがにプリエール王国の騎士は精鋭揃いだな。魔王の尖兵をも鎧袖一触にするとは」


「これは、確かに斬り合いでは我が軍は敵いませぬな。火銃と爆火矢の戦術を早く確立させなければ、、、」


ダミドやハレスなどは、もはや魔人兵よりもプリエール王国の戦力分析に入っている。だが、仮にも魔王軍

がこんな脆弱な戦力だけを送ってくるはずがない。ベッカーの剣技に悶えつつも警戒は怠らないスタックが、

新手の敵を感知した。


「強大なマナが接近しているわ! 全員警戒してっ!」


その言葉と同時に、破れたステンドグラスから1人の男が現れた。魔人兵と同様背中に蝙蝠のような羽を

生やしているが、その他の外見は人族とほぼ変わりない。だが、その口元からは人間には有り得ない牙

をむき出しにしていたのだ。


「ほう、下等生物も少しは強くなったようですねえ」


「貴様、何者だっ!」


「ほほほ、下等生物に名乗るのもおこがましいですが、わたくしは栄えある魔王軍四天王、不死の王である

真祖バンパイア、テスラ14世と申します」


ベッカーの誰何(すいか)にそう名乗りを上げるテスラ14世、それに周囲は”えっ、真祖バンパイア” ”どんな攻撃

を受けても再生するというヤツか”などと動揺が広がりつつあった。


「ほほほ、貴様らのような下等生物なぞ、魔王様の手を煩わせるまでもない。この私が全て始末して差し

上げましょう」


「そうはいかんな。王国の剣としてこのベッカー、貴様を倒す!」


「ほざけっ! 下等生物が!」


テスラ14世はその両手の爪を全て剣のように伸ばし、ベッカーへと襲いかかる。


「貴様が魔王様に捧げる生贄第一号だっ!」


「おっと、魔王の生贄なんぞ御免こうむるよ」


テスラ14世の攻撃をかわし、ベッカーはその剣を彼の腹に叩き込む。もちろん、


「はあああん、さすがグレイスさまあ~、バンパイアなんていっちゃってくださいませええええっ!」


と、残念なアラサーの声援付きで・・・・


「ほほほ、下等生物にしてはなかなかの腕ですねえ。だが、ただの剣でこの不死の王たる、、、ぐぎゃっ!」


ベッカーに斬られたもののすぐに再生したテスラ14世だったが、その彼を強烈な雷撃が襲った。


「おい、グレイス様にせっかく斬って頂いたというのに、何勝手に蘇ってるんじゃワレえっ! おとなしく

死んどけやゴラアァァァァッ!」


「ねえレーナ、あの魔導師さん団長とバンパイアとでは、ずいぶん言葉づかいが違うんだけど、、、」


「レノン、だからあれが師匠の通常営業だ。とりあえず慣れてくれ、、、」


だが、スタックの怒りの一撃で消し炭になったかと思われたテスラ14世であったが、真祖バンパイアの

名は伊達ではない。すぐに元通りの姿に蘇ったのであった。


「ふう、、、下等生物の魔導もずいぶん進歩したものですね。この私に何度も再生させるとは」


「こいつ、今度こそは息の根を、、、と、レーナちゃん、どうしたの」


「いえ師匠、あんまり熱くなりすぎてはあやつの思う壺ですよ。まずはやつの弱点を、、、」


そうスタックをたしなめるレーナであったが、次のテスラ14世の不用意一言で


「ほほほ、あなたが魔人兵どもを一掃した女騎士ですか。まるでメスゴリラですな」


「あ、てめえ今なんつった!」


完全にぶち切れてしまった・・・・


「だからメスゴリラと、、、あべえっ!」


”ぐしゃっ”という音が会場一帯に響き渡る。レーナの蹴りがテスラ14世の股間にヒットしたのだ。それを

見ていた周囲の男性陣も、思わず自分の股間を手で押えてしまう。


「くくく、今のは少し油断しただけ、、、ぶげしっ!」


今度はレーナの蹴りがテスラ14世の顔面にヒットする。再生したばかりの彼は再び地面にもんどりうった。


「こ、この、、、いい加減に、ぴぎいっ!」


また再生した彼の背後に回ったレーナは、その首を180度回転させる。前世彼女はSATで近接格闘の

訓練もたっぷりと受けている。今、その成果が異世界ツーロンでも遺憾なく発揮されているのであった。


「ぐっ、こうなったら血を補給して、、、ぶぎぃっ!」


ポーラ達の近くに蹴り飛ばされたテスラ14世、彼女らの血でエネルギーを補給しようとの目論見は脆くも

崩れ去った。”ガシュっ!”という音とともにポーラのピンヒールが彼の額に突き刺さったからだ。


「全く、レディの誘い方もご存じないとは、何て無粋な殿方なのでしょう。皆さん、やっておしまいなさい!」


「「「「「「はい、副会長!」」」」」」


”レーナ様を讃える会”の面々は、テスラ14世にゲシゲシとピンヒール攻撃の嵐を加えていく。ある業界の

方々ならそれは”ご褒美”なのだが、あいにく彼はその業界には属していなかった。レーナは元より荒事

には無縁なはずの貴族令嬢からもボコにされたテスラ14世、とうとうその心が折れる時が来たのであった。


「お、お願いでず、、、もうがんべんじでぐだざあい、、、、」


「おいおい、こちらはやっと準備運動が終わったところだぞ。さあ、四天王の本気の力、見せてくれないか」


「も、もうごうざんいだじまず、、、、いのち、命だげわあ、、、、」


テスラ14世はその顔を涙と鼻水でぐちゃぐちゃにしながら、恥も外聞もなく命乞いを始めた。もちろんレーナ

はそんな勝手な言い分は認めず、トドメを刺そうと近づいていったのだが、その時、またも彼女の脳裏に

ある(ろくでもない)考えが閃いた。


「テスラ14世とやら、場合によっては助けてやらぬこともないぞ」


「えっ、本当でずか、、、、」


彼の表情に、希望の光が射しこんだ。


「そうだ、貴様魔王がいる場所は知っているな。ここからどれくらいかかるのだ」


「は、はい、、、、私が飛んで3日くらいですが、、、」


「そうか、、、ベッカー団長、お願いがあるのですが、今日から1週間ほど休暇を頂けますか」


レーナはベッカーの方に振り向き、休暇願を申し出る。それを聞いた彼はイヤーな予感が走るのであった。


「一応その理由を聞いてもいいかね。まあ、ロクな予感しかしないんだがな、、、、」


「ははは、まあ大したことではありませんよ。コイツに魔王城まで乗せてもらい、魔王の首獲りに行って

くるだけですから」


”では、善は急げと言いますのでこれで”ときびすを返し、早速魔王城に向かおうとするレーナの首根っこ

をベッカーは掴んで引き留める。


「ぐえっ! 団長何するんですか、苦しいじゃないですか!」


「レーナ君、何勝手に魔王城へ行こうとしているんだ。これから他の国と対策を話し合って万全の体勢を

もって立ち向かわないといけない相手なのだぞ!」


つぶれたカエルのような声を上げながら抗議するレーナに、ベッカーはため息をつきたいのを我慢しながら

説教する。スタックからも例によって”レーナちゃん、グレイス様の言うことが聞けないの”と半目で睨まれ、

彼女は渋々魔王城への単独突撃をあきらめたのである。


「もう、サクっと獲りに行けば手間もかからないものを、、、、そうだ、テスラ14世とやら、貴様に頼みたい

ことがあるのだがよいか」


「は、はい、もう何でもお聞きいたしますですう!」


「うむ、魔王への言伝(ことづて)を頼みたいのだ。”貴様の首、このレーナが貰い受ける。首を洗って待っていろ”

とな」


「えっ! 魔王様にそんなことを、、、」


「そうだ、一言一句違えるなよ。もしこれを違えたら貴様、この世の地獄を見ることになるぞ」


そう獰猛な笑顔で脅しをかけるレーナに、真祖バンパイアは震えあがってしまった。彼にはコクコクと首を

縦に振るしか選択肢はなかったのである。


「ああそうだ、ちゃんと今の言葉紙に書いてやるから、これも渡すのだぞ」


「イエス、マム!」


こうして不死の王、真祖バンパイアのテスラ14世は、レーナのパシリと化したのであった・・・・


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