第20話 令嬢、魔剣を見学する
「はあ~あ、、、、」
「姉御、最近ため息ばかりついていますね」
王都直轄騎士団の訓練場、大きなため息をつくレーナに舎弟たちが心配げに言葉をかける。
「いや、、、当分の間6割の減給になってしまってなあ、、、、」
「でも、食事は騎士団の食堂で出ますし、食いっぱぐれることはないでしょう」
舎弟の言う通り、騎士団の寮で生活している者は基本食堂で3食とも提供されるため、極端な話給金ゼロ
でも飢えることはないのだ。
「いや、お金を貯めて自分用の剣を買おうと思っていたのだが、当分の間先になりそうで、、、、」
「剣ですか、騎士団の剣じゃ何か問題あるんスか」
舎弟が疑問に思うのも当然だ。騎士団に支給される剣は大量生産品だが、その質はヘタな特注品よりも
上質なものだ。ルミダスは通常よりも一回り大きい特注品の剣を使用しているが、それは例外でベッカー
やバスクも支給品の剣を使用している。
「う~ん、、、普通に斬り合うだけならそれで間に合うんだが、これでは攻撃魔法のマナエネルギーに
耐えることができないんだ」
レーナが前世得意にしていた攻撃魔法、剣にマナエネルギーを纏わせ敵方に一閃させる、数百の敵兵を
ミンチにすることができる技が、普通の剣では不可能なのだ。前世はオリハルコンの聖剣”ガレル”と契約
を交わしそれを可能にしていたのだが、前世で寿命を終えるとともにその契約は解除された。おそらく現在
別次元にある”ガレル”と再度契約を交わすことは無理だろう。
「資金ができたら、ドワーフの名工に発注しようと思っていたのだが」
「ちょっとした家1軒分くらいしますもんね・・・・」
ドワーフなら”ガレル”とまではいかないまでも、相当な名剣が打てるのだが、その分お値段もかなりの
ものだ。レーナがあきらめかけた時、舎弟の1人が余計なひと言を口にする。
「それなら、どこかで手柄を上げて報奨金手にするしかないっスね」
「それだっ!」
その言葉にレーナの脳内に天啓のごとく(ろくでもない)アイデアが閃いた。
「どうだ、ラングレー王の首を獲れば報奨金もはずんでくれるんじゃないか」
「おおっ、それいいっスねえ。ルカの敵討ちも兼ねてやりましょうか」
物騒な話で盛り上がるパープーな親玉とその舎弟たち、そんな彼らにゴホンゴホンと咳払いをしながら
近づく者がいた。なぜか最近危機察知能力が大幅にアップしたベッカーである。
「あー君達盛り上がっているところ悪いが、すでにラングレー王国とは話がついている。頼むから余計な
ことはしないでくれたまえよ」
「大丈夫ですよ団長、サクっと獲ってきますから無問題です」
「だから首獲り自体が問題だと言ってるんだ。もしやったら君に報奨金つけてお尋ね者にするからな!」
お気軽に他国の王の首を獲ると言い放つレーナに、ベッカーは胃痛を覚えながらお説教をするのであった。
「ふーん、、、レーナちゃんその攻撃魔法そんなにすごい威力なの」
「はい師匠、威力を押えたものならこの剣でもできますから、やってみましょうか」
「そうね、ちょっと興味あるから見せてくれるかしら」
翌日、スタックの元を訪れて魔法を教わっていたレーナは、成り行きで攻撃魔法を披露することとなった。
もちろん廃棄する予定の訓練用の剣なので、今度はさすがに訓練場を破壊するほどの威力ではない。
「では、撃ちますよ」
レーナが剣にマナエネルギーを纏わせ、的に向けて剣を一閃させる。次の瞬間的の鎧は細切れになって
いたのだった。
「レーナちゃんすごいじゃない! これで最大威力ならラングレーの火薬兵器も目じゃないわよ!」
そう感嘆するスタックだったが、当のレーナは渋い顔だ。
「しかし師匠、この剣を見てください」
「ああ、、、もうボロボロね、これはさすがに普通の剣じゃ使えないわねえ、、、」
この程度のエネルギーでも普通の剣では耐えられないのだ。レーナに続きスタックもしばし思案顔になった。
そして、とある噂話を思い出す。
「そういえば、王城の地下に誰も使うことができない”魔剣”があるって話だけど、、、」
「スタック師匠、その話もっと詳しくお願いします!」
早速、エサに食いついたレーナだった・・・・
「おう、、、あの剣のことか、確かに地下に封印してあるが、、、」
「何でも、レーナ嬢がすごい興味を示しているらしくて、見るだけでいいからとベッカー団長を通じて申請が
上がってきましたが、、、、」
その後、実際にレーナの攻撃魔法を見たベッカーも、対魔王はもちろんのこと、ラングレーの火薬兵器に
対しても有効な手段に成り得ると判断し、魔剣の見学申請をブラッドに提出したのであった。
「しかし、誰も触ることすらできぬ剣だからのう、、、」
「はあ、でも見せるくらいならいいでしょう。ダメならさすがに彼女も納得するでしょうし」
渋る国王カルスに、ブラッドはラングレー王の首獲りに行かれるよりはマシでしょうなどと説得し、レーナの
見学を許可したのだった。
「レーナ君、ここが魔剣を封印してある部屋だよ」
翌週、魔剣の見学を許可されたレーナはベッカーとブラッド、そして聖女エリスの付添いの元、魔剣が封印
されている王城の地下室へと赴いた。
「レーナお姉さま、すごい”念”がドア越しでも感じますわよ」
「ああ、これなら”ガレル”の代わりになれるかもしれないな」
常人なら腰が抜けてしまいそうな強い念を前にして、レーナは臆することなくそう言い放つ。ベッカーや
ブラッドももしかしたら彼女なら、この魔剣をわが物にしてしてしまうのではないかと思ってしまうのであった。
「ではドアを開けるぞ。エリス様、浄化魔法の準備をお願いします」
ブラッドがドアを開けると、更に強力な念が押し寄せてくるのが感じられた。確かにこれでは普通の人間では
とても扱えるものではないだろう。しかし部屋の灯りが点けられ、中央に安置された”魔剣”を目にした時、
レーナはもちろんエリスも驚愕してしまったのだ。
「なっ! この剣は、、、」
「まさか、なぜこの剣がツーロンに存在しているのですか、、、、」
その魔剣は本来ならこの世界には存在していないもの、、、”日本刀”であったのだ。




