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第19話 令嬢、また懲戒処分を受ける


「うっ、うっ、、、、ああ、、うううっ、、、ひっく、、、、」


突然の落雷音に驚いたルミダスたちが駆け付けると、そこには体にシーツを巻きつけて泣きじゃくるスタック、

その横で神妙な表情で正座しているレーナ、なぜか髪の毛をチリチリにしているブラッド、そして、イスに

へたり込み頭を抱えているベッカーの姿があった・・・・


「団長、、、一体何が起きたんですか」


「ルミダス隊長、実はな、、、、」


ベッカーはこうなってしまった顛末をかくかくしかじかと語った。聞いていたルミダスや他の騎士たちも、

次第にお口あんぐりの状態になってしまう。


「はあ、、、するとスタック部隊長が団長の気を引こうと痴女のような格好で待ち構えていたら、宰相殿が

現れて雷撃魔法をぶちかましたと、全く本部内で人騒がせなことはやめてくださいよ」


「いやルミダス君、人騒がせどころじゃないぞ。私は危うく死にかけたんだ」


ブラッドはとっさに障壁を展開したものの、完全には防ぎきれず髪の毛はチリチリの状態だ。先日のレーナ

のファイヤランスの巻き添えといい、最近の彼は厄続きであった。


「ううう、、、もう恥ずかしすぎて死ねる、、、」


「スタック部隊長、私の方が死ぬかと思ったんだがね・・・・」


しかしそんなブラッドの皮肉も通じず、スタックはグズグズと泣き続けていた。ブラッドは”はあ”とため息を

つき、ベッカーに話を振る。


「ベッカー団長、全てとは言わんが君がスタック部隊長の気持ちにはっきり返事をしなかったのも一因だぞ。

断わるなら断るではっきりしてあげないか」


「わかりました、、、スタック部隊長、私は残念ながら君の気持ちに応えることはできないんだ」


その言葉に、スタックの顔が絶望に染まる。まるでこの世の終わりのような表情だ。


「私にはかつて心から愛した婚約者がいてね、、、、彼女のことを未だに忘れられないんだよ」


「ああ、ニーナのことか、、、」


ベッカーの言葉にブラッドが補足する。彼女は12年前王都を襲った流行病(はやりやまい)、地球でいうインフルエンザ

によってわずか17歳でこの世を去ったそうだ。近世初期レベルのツーロンの医療レベルではこの猛威に

太刀打ちできず、大勢の死者を出してしまったのだ。


「そ、そんなことが、、、グレイス様、今まで付きまとってしまい申し訳ありません。私はもう魔導部隊やめて

奥地の修道院にでも入ります、、、、」


「うむ、だがな」


完全にあきらめかけたスタックに、ここでベッカーは救いの手を差し伸べる。


「いきなり恋人同士というのは難しいが、まずは友人として付き合うことから始めてみないか。まあ、君の

気持ち次第だがね」


「お、、、おおグレイス様、こんな私を友人として見ていただけるのですか!」


そう感涙するスタック、だが、彼女を除くレーナやブラッドたちは知っている。


”お友達から始めましょう”


そう言われて恋人まで発展した事例は、まず無いということを・・・・


「では、我々はこれで引き上げますので、、、部隊長がご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした」


その後スタックは連絡を受け慌ててやっきた部下に引き取られ、自宅へと戻っていった。ルミダスや騎士団

の面々も”では、これで”などと自室に戻っていった。


「では自分もこれで、、、」


「レーナ君、ちょっと待ちたまえ」


ルミダス達と一緒にさりげなくばっくれようとしたレーナだったが、”氷の宰相”ブラッドが見逃すはずもない。

すさまじい絶対零度な冷気を放出させながら、彼女の肩をガッシリと掴んだのである。


「よくも、スタック部隊長に妙な入れ知恵をしてくれたね」


「あ、あはは、、、まあ師匠があまりにも気の毒で、、、」


とりあえず笑ってごまかそうとするレーナに、ブラッドは断罪を下す。


「君の減給4割から6割にするから、それと反省文30枚を明日の昼までに団長宛に提出するように」


レーナはorz姿勢となってしまった・・・・


「ということが昨夜ありまして、、、、」


「宰相の髪の毛は、そういう理由でなってしまったのですか、、、、」


「レーナお姉さま、、、、何やっているんでしょうか、、、、」


翌日、ブラッドから顛末を聞いたリシューやエリスもお口あんぐりの状態であった。まさか短期間で次々と

レーナがやらかすとは思わなかったのだ。


「うん、、、我がままご令嬢だった彼女が可愛く見えてきましたよ」


「はあ、本当に、、、」


そうため息をつくブラッドとリシュー、だが、エリスが更に不吉なことを口にしてしまう。


「レーナお姉さま、魔法も使えるようになったのでしょう、、、たぶんまたなんかやらかしますわよ」


「エリス! 聖女の君が言うと本当になりそうだからやめてくれ!」


「いえ、、、もしかすると魔王の方が可愛く見えるかもしれませんよ。前世でもこんなものではありません

でしたから・・・・」


リシューの叫びにエリスは更に不吉なことを口にする。彼らはこの”聖女の予言”がはずれることを、心より

創造の女神ルーシャスにお祈りするのであった・・・・


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