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第14話 令嬢、新兵器の洗礼を受ける


「行けえっ! 野盗どもを殲滅しろ!」


「があっ!」  「ぐわあっ!」


騎士団と領軍から寝込みを急襲された野盗たちは、混乱の極みにあった。まともに反撃もできず次々と

討ち取られていく。


「お頭、お頭たちはどうしたんだ!」


「天幕には誰もいねえぞ! みんな逃げやがったんだっ!」


野盗のお頭を演じていたラングレー王国の暗部の者たちは、いち早く攻撃を察知するとさっさと逃げ出した。

統率者を失った野盗たちの運命は、哀れだった。彼らは精鋭の王都直轄騎士団と復讐に燃える領軍に、

蹂躙されるだけだったのだ。


「うおおおおおっ!」


「うぎゃあああっ!」


「ひいっ、、、た、助け、、、ぐあっ!」


ルミダスの剛剣も冴えに冴えわたる。彼の目の前に立った野盗たちは、たちどころに真っ二つになるしか

道はなかった。


「ルミダス君、今日はずいぶん張り切ってるじゃないか」


「ええ団長、まだまだ小娘には負けられませんからなあ」


もちろんベッカーも、王国一の華麗な剣技をもってすでに30人以上の野盗を斬り捨てていた。


「ああんっ! グレイス様素敵、素敵いっ! もうリネイはいっちゃいますうぅぅぅっ! ああっ、いっくうっ!」


約1名、悶え狂っている残念なギャラリーの応援付きで、、、、


「てめえ魔導師かっ! ぐあっ!」


「小汚ねえ野盗がっ! グレイス様の雄姿を拝見すんの邪魔すんじゃねえよ!」


スタックに襲いかかった野盗が風魔法で一瞬にミンチになる。愛しいベッカーの応援を邪魔されてブチ切れた

彼女は、野盗どもの真ん中に雷撃魔法を喰らわした。


「ぎゃああっ!」


「ひげえええっ!」


数十人の野盗が直撃を喰らい、断末魔とともに黒コゲとなった。


「リネイ君、ケガはなかったか」


「あんグレイスさまあ、、、リネイとっても怖かったですう、、、、」


ついさっき野盗数十人をあの世送りにしたことなどなかったかのように、ベッカーにしなだれるスタック。


「ルミダス隊長、、、怖かったってさっき野盗黒コゲにしていましたよね、、、、」


「レーナ、だからあれがスタック部隊長の通常営業だ。もう気にするんじゃない」


「はあ、わかりました、、、」


そしてレーナも頭を切り替え、野盗の群れに斬り込んでいくのだった。ベッカーに甘えつつ裏で野盗を魔法で

ミンチにしているスタックのことは気にしないようにしながら、、、、


「もうダメだあああっ!」


「逃げるぞおおっ!」


完全に浮き足だった野盗たちは、一斉に逃亡を図った。もちろんそんなことを許すベッカーではない。


「1人たりとも逃がすな! 斬って捨てろ!」


逃げ道を塞がれた彼らは、これまでの狩る立場から狩られる立場へと変わったのだ。


「お願いです! 命だけは助け、、、」


レーナは股間からお漏らしをしながら命乞いをする野盗の首を、何の躊躇もなく刎ねた。


「姉御、今こいつ命乞いを、、、、」


「村の者が命乞いをした時、こいつはそれに応えたか。無用な情けは戦場では命取りになるぞ。そのように

心得よ!」


「「「「「はいっすっ!」」」」」


レーナの教えを受けた舎弟たちも、すでにいっぱしの騎士の表情になっている。彼らは油断せず、残存

勢力の掃討に取り掛かるのであった。


「イレム師団長殿、野盗どもはすでに壊滅状態です。足止めにもなりませんでした」


「そうか、、、数の差があれば王都直轄騎士団を半分とは言わずとも、2割くらいは削れるかと思っていた

のだがな、、、やむをえん。我が軍の全兵力をもってテオドル辺境伯領を落とすぞ!」


すでにアルシの近くまで侵攻していたラングレー王国第一師団長のイレムは、暗部の報告を聞いてそう

決断した。


「イレム師団長殿、我が軍の新兵器をもってすれば、あのプリエール王国軍と言えども問題にはなりますまい。

野盗なぞに頼らなくとも、勝利は間違いないでしょう」


「このバカ者が! そのような慢心が戦場では敗北を招くのだ! 次にそのようなたわ言を抜かしたら

更迭するぞ!」


「は、ははっ! 申し訳ございません!」


イレムは油断する部下を叱責し、部隊に漂っている楽勝ムードを引き締めた。そして、決戦の場へと軍を

進める。


「西の方角より新手の部隊が接近! 魔導部隊は全員迎撃体勢をとれ!」


ラングレー王国軍の接近を感知したスタックが、そう指示を出す。ベッカーに首ったけのように見えても

ちゃんと自分の任務は果している。残念なようで出来る子なのだ。


「はあああんっ! グレイスさまあ、ケチョンケチョンにしてやってえっ!」


出来る子だ、多分、、、、


「あの旗印は、ラングレー王国か!」


「はは、正規軍だろうがかまわん、真っ二つにしてやるぜ!」


そう意気込むルミダスたちだが、レーナは嫌な予感がしていた。それはラングレー軍が近づくにつれ確信

に変わっていく。


「スタック部隊長! すぐ障壁を展開してください!」


「えっ、、、なんで」


「いいから、早く!」


珍しく焦った様子のレーナに気圧されたスタックは、魔導部隊に障壁展開を指示する。と同時にラングレー

王国軍部隊から轟音が響き渡った。


「ぎゃっ!」  「ぎいっ!」


障壁の外にいた生き残りの野盗たちが、血しぶきを上げて倒れていく。


「な、なんなの今の攻撃は、、、なんの攻撃魔法なの!」


「スタック部隊長、そのまま障壁を維持してください!」


戸惑うスタックにレーナは叫ぶ。障壁がなくなった途端、”狙い撃ち”にされると理解したからだ。


「まさか、この世界でも開発されていたとは、、、、」


それは、ツーロンでは初めて登場した兵器、レーナにとっては前世地球でよく知っている兵器、”火縄銃”

だった。だが、ラングレー王国の手札はこれだけではなかった。プリエール王国は更に未知の兵器の洗礼

を受けることになるのだった。


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