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7 少女は気になります

なんと日間ランキングで17位をいただいておりました(;゜Д゜)


読んでいただいている皆様のおかげです!

引き続き生暖かい目で見守っていただけましたら幸いです(・∀・)

 

「あと5分…じゃねえよバカか俺は」


 楓は普段より遅めの時間に目を覚ました。昨日は夕月を家まで送った後に帰宅。そのままベッドで寝てしまっていた。


 いつもはランニングに合わせて目覚ましをセットするのだが、昨日はそれをする前に寝落ちていた。時刻は朝の6時。けれども一般的な男子高校生であればこれでも早いほうかもしれない。


 冷蔵庫の中から適当に朝食を用意し済ませる。

 テレビを見ながら軽く柔軟をした後は、軽めの筋トレをした。


「今日は午後から雨ねぇ…最近の天気予報は当たるからなぁ。傘持っていかねえとな」


 ちょっと早めではあるが家を出た。鍵をかけてアクビをしながら階段を下りていく。すると何やら声が聞こえてきた。


「キミめちゃくちゃ可愛いねマジで!」

「連絡先教えてよ。俺らこの辺だと顔広いからさぁ、面白い場所連れて行ってあげるよ」

「……………結構…です」


(朝からなにやってんだかあいつは)


 ふぁ、と再びアクビをしながら近付いていく。その足取りは実に怠そうである。


「おまえら。そいつ俺の連れだからいじめんなよ」


 眠そうな目を擦りながら楓は男達に話しかける。


「は? なんだよおまえ。邪魔すんなよ消えろ」

「………神代…くん!」


 夕月は楓の姿が見えた途端、その背中にしがみつくように隠れた。身体は少し震えている。


 頭を撫でて「心配すんな。少し離れてろ」と優しく笑う。


「ふぁ…で? おまえらどうすんの? やんの?」

「ぐっ…」


 楓の迫力に気圧されている、だが男の一人が突然殴りかかった。


(おっそ…カウンター何発打てるんだこれ)


 それを皮切りにして次々と殴りかかるが、楓はそれを全て避ける。

 まだプロになっていない練習生とはいえ、喧嘩に拳を使うのはよろしくない。ボクサーの鍛えられた拳は頭蓋を砕く威力があるのだ。その拳は凶器扱い。素人に手を出したら最悪逮捕されてしまうだろう。


(さてと。なら練習するかなぁ)


 両の拳を顔の前に構える。男達が殴りかかってくる全てにカウンターを繰り出した。寸止めで。


「こいつ…まじかよ」

「ボクサーなら手出せねえだろ? 袋叩きにしようぜ」


 見当違いな会話をしている男達。楓は無造作に近付いていくと一人の頭を正面から鷲掴みにした。ギリギリと締め付ける。


「…それはやめとけ。心の清いボクサーならやられっ放しかもな。残念なことに俺に限ってそれは無い。あまり怒らせるなよ? 俺はどちらかというと悪人寄りだ」


「てめえが話せないように口を裂いとけばいいか?」の一言がトドメとなった。「わ、悪かったよ許してくれ」とそそくさと姿を消した。


(くだらねえ奴らだな。無駄な事してる時間あったら寝てればいいのに)


 少し離れた場所で見ていた夕月にゆっくり近付いていく。正面に立つと膝を曲げて視線の高さを合わせた。

 まだ少し身体が震えている。瞳も若干潤んでいる。気丈に見えたが結構無理をしていたようだ。


「よう、怪我ないか?」

「………神代…くん…ごめんね」


「なんでおまえが謝るんだよ」と笑いながら頭を撫でる。それから数分、夕月が落ち着くまで撫で続けた。嫌がる素振りを見せたらやめるつもりだったが、そうではなさそうだったので続けた。


「……も…もう…大丈夫…だよ?」


 恥ずかしそうにしていたため「そうか悪いな」と手をどかした。


「……べ…べつに…嫌ってわけじゃ……ないから!」

「お、おう。そうか」


 夕月にしては珍しく大きな声だった。嫌がってるわけじゃないならよかった。


 それにしてもなぜここに夕月がいるのだろうか。しかもこんな早い時間に。学校に向かう途中ですらない、逆方向なのだから。


「で、どうした? こんな時間に」

「………一緒に…学校………いこ?」


 楓の服の裾を掴みながらそう言って見つめてきた。楓としては別に構わない。それよりも問題なのは…


「それは別にいいけどよ。もう少し自覚しろ。いいか? 小日向は美少女なんだ。それも超が付くほどのな。こんなとこに一人で立ってると、さっきみたいなタチの悪い奴に絡まれるぞ?」


 軽く説教しているはずなのに夕月の顔はどんどん真っ赤になっていく。


「…来るなとは言わねえよ。だからもし来るなら俺の部屋まで来い。中に入れるから、それなら安心だろ?」

「…………うん!」


 ようやく笑顔が戻ったことに一安心する。やはり小日向は笑顔がよく似合う。だが朝からこんな調子では先が思いやられるなぁとため息をついた。


 登校途中で夕月は交換日記を渡してきた。まぁそれはいいのだが、受け取った途端に楓をガン見である。ノートを鞄にしまおうとしたらその腕をつかまれた。


「…………読まない…の?」

「ここで読めというのか? 登校中で周りにもたくさん人歩いてるぞ? そんな状況で交換日記と書かれたノートを今すぐ読めと?」

「……………うむ…初回にしては…自信作……である」

「アホかぁ!!」


 え? なんで? みたいな顔を向けてくる。ただでさえジロジロ見られて目立っているのに、そんな中で交換日記など開いて読んでいたらどうなるのだろうか。夕月の人気を考えるとちょっとした騒ぎになりそうだ。陽なら爆笑しそうだが。


 夕月は納得いかないと頬を膨らませている。「……早く読んで」と袖を引っ張ってくる。それを華麗に無視しつつ歩いていると学校に着いた。


 教室が違うのでお互い別れるわけだが、別れ間際まで「…………読むの…だぞ?」と釘を刺された。夕月が見てないところで読もうと思った。


(てか、自分の書いたメッセージを目の前で読まれるのって恥ずかしくねえのかな? 俺は普通に恥ずかしいけど)


「待てよ。あいつもしかして俺がノート渡した瞬間に目の前で読み始めるんじゃねえか?」


 しっかりと釘を刺しておく必要があるな、と楓は強く決意した。






 ◇ ◇ ◇



 教室に着くと陽から「おはよ楓!」と聞こえてきた。


「…おはよ」

「なんだよ元気ないな。はい元気におはよー!!」

「おはよー。ふぁ」


 その声の大きさに頭がクラクラする。ボリューム抑えろと毎日言っているがその効果は薄い。


(ん?)


 今日の陽はなにかが違う気がする。なんだろうと考えてみる。だがわからなかったので諦めた。


「おいおいおい! ほらよく見てよ! 変化に気付いてよ! 諦めるな!!」

「んー………太ったか? 肥満は怠慢だぞ」


「ちがーう!!」と突っ込まれる。自身の頭を指差している。よく見ると髪の色が茶色から黒になっていた。そういうことかと納得した。


「あぁ、不良やめたのか?」

「いや、普通気付くからな!? 女心のわからない奴はこれだから」

「おまえ女だったの?」


 呆れ顔の陽からの小言に適当に相槌を打ちながら、鞄から交換日記を取り出した。それを見た陽は一瞬驚きの表情になり考える。すぐに納得したのか笑顔になった。


「あー、それ。そういうことね。おまえスマホ無いもんな。てか交換日記って…夕月さんむちゃくちゃ可愛いな」

「ん。こういうの初めてでな。ちょっと面白そうだからやってみることにした」


 早速ノートを開こうとしたら陽は視線を別に向けた。


「そういうのは俺が見ちゃいけないものだなぁ。読み終わったら肩叩いて教えて」

「……ずっと叩かなかったら、ずっとそっち向いてんの? アリだな」


「ナシだよ!」と突っ込まれて、冗談の通じない奴だなぁと思いながらノートを開いた。

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