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67 夕月の仕返し【2】

いつもご感想をいただきありがとうございます。

そして今回はレビューまでいただいてしまいました!感謝の気持ちでいっぱいです!


本当にありがとうございます。

 

 いきなり押しかけてきた陽と響は「いやー暑いなぁこの部屋」などと随分と勝手な事を言っている。暑いのは真夏の夜だから、というだけではないようだ。


 よく見ると二人とも艶っぽく、頰も上気したように朱く染まっている。陽はラフな格好ではあるものの楓の目から見てもお洒落に映る。全体的に緩めの格好であるのは、気を遣わなくていい楓の家だからであろう。


 響はというと、ジーンズに薄いピンク色の半袖のTシャツ、という至ってシンプルな格好だ。外行きの格好にしては地味なのでやはり目的は最初から楓の家だったのだろう。

 

 そして火照ったような二人の姿から連想される事……


「帰れ」

「「やだね」」

「チッ。こいつら」

「……どうぞ……狭い所……ですが」

「おい!!」


「お邪魔しまーす」と遠慮なく中へと入っていく二人。持参している荷物の量からしても確定だ。


(こいつら……泊まる気満々だな。クソが)


 話を聞くとどうやら当たりだったようで、夕月から連絡を受けた陽はすぐさま響に連絡。「なにそれ! 超楽しそうじゃん!」と響は即答。で、風呂を四人で使い回すのはさすがに申し訳ないと思ったらしく、来る途中でホテルの浴場を利用してきたらしい。


 控えめに言っても美男美女の二人は、風呂上がりという事も手伝って艶っぽい色気を放っている。

 特に響である。完全には乾いていない茶髪が濡れていると黒っぽく見える。普段の天真爛漫な雰囲気は鳴りを潜め、大人っぽく妖艶な空気を作っている。


「……響ちゃん……綺麗」

「でしょー? 知ってる! あ、夕月ちゃんは勿論今日も可愛いよ!!」

「ゴリラ女、さっさと髪乾かせ」


 ドライヤーを投げてやると、「チッ、さんきゅ」と舌打ちと感謝の言葉が同時に飛んできた。


 そして気になるのは陽の荷物である。

 見るからに重量のあるそれは、床に置かれると「ゴトリ」と予想通りの音が聞こえる。


「なんだよそれ。重そうだな」

「ん? ふふ……まぁ楽しみにしてて!」


 夕月と陽は視線を合わせると「ニヤリ」と笑っていた。嫌な予感がする。


「泊まるのはわかったけどよ。夕月は着替えとかねえだろ? どうすんだ?」


 その言葉を聞いた途端、夕月は部屋の衣装ケースの一番下の棚、その最奥から大きめの袋を取り出した。「夕月の!開けないで!」と書かれている。

 私服がそれほど多くない楓は、衣装ケースなど形ばかりであまり使わない。それを逆手に取ったのか、引き出しの一番下には見事に夕月スペースが作成されていた。ジャンプーやボディソープ、そしてスキンケア用品が所狭しと並んでいる。


 それを見た楓が絶句したのは言うまでもない。


「いつ仕込んでたんだよそれ……」

「……少しずつ……増やした」


 なぜか誇らしげな表情の夕月を見ていると怒る気が失せてくる。響にドヤ顔で棚の中を見せていた。


「やるねぇ夕月ちゃん!」

「…………うむ」


「気が付かない楓の負けだ」と陽はポンポンと楓の肩を叩いている。


「普段から身なりに気をつけていれば衣装ケースだって開けるだろ?」

「それはそうだけどよ。これは不法占拠だろうが」

「いいじゃん彼女なんだし。夕月ちゃんにここまで慕われてるんだから、素直に喜びなさいよボクシングバカ」

「くっ!」


 ここまでが夕月の策略であった。


 楓と二人の時にこのスペースを暴露したら間違いなく撤去されてしまう。なので味方を増やしておいてからタイミングを見計らって開放。これなら楓は四面楚歌だ。


「…………あきらめよ」

「うるせえ!」


 結局は楓が折れる形で落ち着いた。甚だ不本意ではあるものの、全員が敵というのはさすがに分が悪い。「いつでも泊まれる」となるべく思わせないようにしてきたのだが、全てが水泡に帰した。






 ◇ ◇ ◇



「で、なんで泊まんの?」

「夕月さんから聞いてない? 明日はロードワーク終わったら四人で遊びに行くんだろ?」


 すぐさま夕月に視線を移すと、夕月は知らんぷりしながら口笛を吹いている。ちなみに音は出せていない。


「おい、こっち向けこら」

「…………」


 マシュマロのような柔らかいほっぺを両手で引っ張る。


「おい、どういうことだ? 聞いてねえぞ?」

「……ひってひゃい」


 手を離す。


「……言ってない……し」


 楓は大きく溜息をついた。夕月が不気味に笑っていたのはこういうことか、と納得した。


 だが……実はそれは違う。


 陽は夕月と見つめ合うと、小さく頷いてから口を開いた。


「せっかく遊びに行くんだからさ、勝負しない?」

「勝負? なにするんだ?」

「そうだなぁ……ボウリングなんてどうだ?」

「は? 面倒臭え。やる訳ねえだろうが」


 楓がこのように言うのは当然の事であった。しかし何も聞いてなかった者がもう一人いた。


「え? ちょっとそれ私も聞いてないんだけど! てかボウリング苦手だからやりたくないし!」


 どうやら響も初耳だったらしい。


「ふーん、二人とも逃げるんだねー。いいよ別に。夕月さんと二人で遊びに行くから」

「「は? 誰が逃げるって?」」

「…………かかった!」


 夕月は小さくガッツポーズをしている。挑発された楓と響は、陽を睨んでいて夕月の様子が見えていない。


「ならさ、俺・夕月さんVS楓・響で勝負しようよ」

「クソが。いいぜ泣かせてやる」

「運動神経で楓と私に勝てると思ってるの? いいわ、やってやろうじゃない」


 陽と夕月は「ニヤリ」と笑っている。


「じゃあさ、勝った方がお互いの恋人に一つお願いを聞いてもらう、ってことで」

「は? 何言ってんだおまえ? 断る」

「なんでそんな条件つけるのよ。嫌よ」

「あれー? 勝つ自信ないんだ。ぷっ!」


 楓と響はわなわなと身体が震え出す。二人揃って大声で口を開いた。


「上等だよ!! やってやる!!」

「わかったわよ!! 叩き潰してあげるわ!!」


 思惑通りに事が運んだ夕月は、悟られないように必死に笑いを堪えた。


 ――――――――


 その夜は一種の冷戦状態であった。

 普段と違うところといえば、楓と響が意気投合している光景であろうか。


「ぶっ殺す」や「捻り潰すわ」などと物騒な単語が聞こえてくる。


 そんな中、夕月と陽はヒソヒソと会話をしている。


「うまくいったね夕月さん」

「…………成功」


「どう料理してやろうかなぁ」と夕月と陽は楽しそうに笑っていた。



面白いと感じていただけましたら、下の評価欄から評価いただけますと幸いです。


それを励みに頑張ります!

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