表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/237

40 天才の証明

いつも読んでいただいてありがとうございます。

とりあえずここまでが楓くん回です。


今日はもう一度更新しますので読んでいただけますとありがたいです。

 

 3分4R、グローブは10オンス、ヘッドギアは無し。


 バリバリの実戦形式である。楓も慧も出走前の競走馬のように昂ぶっている。

 グローブをつけてもらっていると夕月達が近付いてきた。


「……楓……かっこいい!」

「だろ? おとなしく見とけ」

「あんたもその格好の時はいい男なのにね。残念な奴」

「ほっとけゴリラ女」


 夕月はスマホを取り出すと楓に向けてボタンを押す。


 カシャ!


「何撮ってんだよおまえは!」

「……楓ちゃんの……勇姿を」

「オカンか」


 夕月と話していると力が抜ける。だがいい感じだ。丁度いい具合に緊張がほぐれた。


「俺は動画撮っておくぞー! 後で見たいだろ?」

「それは助かるな。頼む」


 準備は整った。リング中央へ行くと慧と両手を合わせる。


「人気者だね楓くん。うらやましいよ」

「モテそうな顔して皮肉が上手いな」

「ははは。本心さ! 彼女なんてできたこと無いよ」


(彼女なんて必要無いって顔だろうがそれは。狸め)


 再びコーナーへ戻りセコンドについてくれた会長と話す。


「とりあえず1Rは様子見だな。まずは距離を身体で覚えるんだ。多少貰っても構わん、芯を外せばいい。勿論隙があったらKO狙え」

「了解」


(そんなすんなりいったら苦労しないな。貰いすぎるのは危険だ)


 両者それぞれの思惑が渦巻く。ゴングが鳴った。


 楓はオードソックスに両手を顔の前に構える。

 慧はノーガード、軽快にステップを刻む。


 それは一瞬だった。


「っ!!」


 楓の頭が後方に弾け飛ぶ。ガードの隙間から的確に角度を変えて左を3発。

 打ちを終わりを狙って右を振るがそこにもう姿は無い。


(くそ! 速すぎるだろこいつ!)


 楓もミドル級にしてはかなり速いほうだ。パワーとスピードを備えた万能型の天才。だからこそ周囲の評価も高い。


 だが慧は違う。完全にスピード特化の戦闘スタイル。縦横無尽に駆け回り左を雨のように放り込んでくる。そして隙を見て右ストレート。


「っ!!」


 楓の顎にジャストミート。剃刀のような右は意識を躊躇なく奪いにくる。かろうじて意識は繫ぎ止めたが……ダウン。


 片膝をついてその場に蹲る。これが開始30秒の出来事。慧は悠々と自コーナーへ戻ると楓を見下ろす。カウントが入る。


(残念だなあ。この程度か)


「ちょっと楓なにしてんのよ! 立ちなさいよバカ!!」

「……楓」


 心配そうに見つめる夕月は小さく楓の名前を呟く。響の大声より、その小さな声が楓の耳には澄んで聞こえた。


(心配すんなよ。ダメージはそれほどねえ)


 カウント7まで休むとゆっくりと立ち上がりファイティングポーズを取る。その姿を見て慧もご満悦のようだ。にこやかな表情を作りゆっくりと楓に近付いていく。


(なんだその笑顔は。気に入らねえ!)


 レフェリーの再開の合図とともに慧に向かって鋭く踏み込む。パワーを抑えてスピード重視の左ジャブを数発放り込んだ。お手本のような左だが。


 当たらない。


 慧はその全てをノーガードのまま皮一枚で躱す。それだけではなく数発カウンターを返す。打ち終わりには身体ごとその場からいなくなる。独特のリズムは楓に反撃の隙を与えない。


「チッ」


(さあどうするか。こいつやはり天才だ! しかも相当練習してるな……才能だけじゃない)


(……)


 楓は圧力を強めていく。当たらないがそれでもワンツーを繰り返す。その度数回カウンターを貰い顔も傷が目立ってきた。


 ここでゴング、1R終了の合図が鳴る。両者コーナーへと帰る。


「駿河慧か……うちの楓をここまで振り回すのか。期待の新星ってのは本当だな」

「あいつ強いです。しかも努力しまくってるのがわかる」

「やばそうか?」

「このままだとジリ貧です。まあ、なんとかやってみます」


 会長の表情は険しい。その才能の凄まじさは観客の表情を見てもわかる。


(さて、まずは1発当てる)


 ゆっくりと立ち上がる。





「うーん、なんか期待はずれかな。こんなものかあ」

「油断するなよ。神代はこんなもんじゃないはずだ」

「そうだといいんだけどね。わざわざ来たんだからもっと頑張って貰わないと」


 息も乱さず綺麗な顔をそのままに慧は笑う。やはり自分は強いし敵はいない。プロデビューしたらそのまま世界の頂点に行けるはずだ。唯一の懸念材料だった男も敵ではなかった。


(ま、いいけどね。僕が強すぎるのが悪い)


 自嘲すると立ち上がりゴングを待つ。



 2Rのゴングが鳴った。



 先に仕掛けたのは楓。体重を乗せた右ストレートを顔面めがけて放つ。慧は首を振ってそれを躱す。


(この右……当たるとやばいね。当たればだけど)


 1Rと展開は変わらず相変わらずの慧の独壇場だ。リズムに乗って軽快に動き回る。1分が過ぎこのままこのラウンドも終わるかに見えた。もしくは楓が倒れるのが先か。


 慧の右フックが入る。楓はガクンと膝を曲げるとたまらずクリンチ。瞼が切れて血が流れ出る。なんとか抱きついてダウンを逃れた。


(はあ……弱いなあ)


 無理矢理そのクリンチを振り払う。その時だった。


 右アッパーが慧の顔面めがけて飛んでくる。これをスウェーで回避。この瞬間楓は鋭く踏み込みそのままの流れで左ボディブロー。


 それも見えている慧は難なくガードを下げてブロック、したはずだった。


「がはっ!!」


 ブロックごと身体は弾かれる。たまらず距離を取ると信じられないといった表情を見せる。


(な、なんだこの威力。瀕死じゃないのか?)


 楓はその機を逃さない。矢のような左を顔面に放っていく。面食らった慧はガード上げるがそのままロープを背負う。


 隙を見て右ストレートの構え。


(だろうね! その右は警戒してるから当たらないよ)


 その右をフェイントに顔面にガードを集中させる。すると鬱憤を晴らすかのように再度左ボディブロー。


(死んどけ!!)


 深々と慧の身体にめり込みくの字に折れる。ボキ!と鈍い音が鳴る。


「っ!!」


 ロープに腕をかけてのスタンディングダウン。カウントが入る。


(なんてパンチだよ。肋骨持ってかれたなこれ)


 カウント8まで休み、ゆっくりとファイティングポーズを取る。


 だがここでゴング。2R終了の合図が鳴る。


 両者のろのろとコーナーへと帰る。





「やるじゃん楓! スカッとしたわよ!!」

「…………かっこいい」


 興奮した様子で2人は近寄ってくる。陽は興奮しすぎて何を話せばいいのかわからないようだ。口をパクパクさせている。


「会長……止まりますか?」

「……ダメだ。深すぎる。残念だがここまでだな」


 瞼からの夥しい流血。血は止まらずドクターストップとなりそうだ。


(はあ……もっとやりたかったけどな。仕方ねえか)


 落胆していると慧サイドのセコンドが近寄ってきた。


「すいません。うちの慧はもう無理です。肋骨が数本折れてるみたいで……」


 結果両者ドクターストップで引き分けとなった。


面白いと感じていただけましたら、下の評価欄から評価いただけますと幸いです。


私のモチベが上がります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ