37 変わらない2人
気がつくとブックマークが2300を超えておりました。ビックリしました。
読んでいただいて本当にありがとうございます!
翌日の早朝。
陽と響も含めていつも通りのロードワーク。楓と夕月はというと……
「離れろ!!」
「……うぎぎぎ」
「暑いんだよ!!」
「…………うぐぐ」
晴れて恋人関係となったわけであるが、この2人にさほど変化はない。よく考えてみると付き合う前から恋人同士のようなものだったのかもしれない。
変わったとすればそれは楓の心境。そして夕月が遠慮なく積極的に特攻してくるようになったことだろうか。今も抱きつこうと頑張っている。
「よかったね夕月ちゃん! 楓が相手なのは納得いかないけど」
「……ありがとう……響ちゃん」
「ほっとけゴリラ女」
「あんたねえ!」
一触即発の2人の間に陽が割って入る。
「まあまあ。皆幸せってのはいいことだろ!」
「黙れシスコン」
「なんてこと言うんだおまえは!!」
「え? 陽はシスコン?」との反応からどうやら響はまだ知らないらしい。ジト目で陽を睨め付ける。指をポキポキ鳴らしながら近付いていく。
楓と夕月はニヤニヤして眺めているだけだ。勿論助けなどしない。これは眺めて楽しむのが吉。
「陽?」
「な、なに響?」
「あんたシスコンなの?」
「シスコンじゃない! 俺はただ妹を愛しているだけだ!!」
それを一般的にシスコンと言う。響はドン引きしている。楓と夕月はもう慣れた。
「妹が好きで何が悪い!」と叫ぶ陽は実に堂々としていた。
「そ、そう。あんたそういう系だったのね」
「陽凪は可愛い! 天使だ!」
「……」
彼氏は妹が好き。それをダメだ! と怒るのもおかしいと思ったのか、響にしては珍しく反応に困っている。
「……陽凪ちゃん……いい子」
「わかってるなあ!! さすが夕月さん!! そう!! そうなんだよなあ!!」
「…………」
ははは、と苦笑いの響。夕月はニコニコと陽と話している。水を得た魚のように生き生きしている。実に気持ち悪い。
ロードワークの最中も陽凪の話をしていた。付き合い切れないので、変態は響に任せていつも通り1人で先を走る。いや正確には2人か。
「今日は体力有り余ってるからな。おまえはついてこれねえ。残念だったな諦めろ」
「…………楓……口だけ」
「こ、この野郎! 言ったな!」
(ん? 待てよ?)
ただ走るのもいいがもっといい方法を思い付いた。夕月は走らない。だったら利用すればいい。
「夕月。自転車から降りろ。どっか邪魔にならないところに鍵かけて置いとけ。帰りに回収すればいい」
不思議そうに顔を傾げる。
「乗れ。おまえ軽いからちょうどいい」
「…………うむ」
楓の背中によじ登るとしっかりとしがみつく。
「よし! 行くぞ!!」
「…………ごー」
かなりきつい。走らなくても早歩きぐらいで十分な鍛錬になりそうだ。
「…………楓……遅い」
「……なんだと? いいぜ。本気出してやるよ」
夕月に煽られ不敵に笑う。息を大きく吸い、止める。全力で走り出した。
「…………お……おっ……おお……」
後ろの夕月を見ると楽しそうにしている。それを見てさらにスピードを上げる。折り返して陽達に合流したところでようやく止まった。
「はぁはぁ。さすがに、きつい」
「……楽しかった……もう1回」
「いや、きつい」
「…………楓……体力……落ちた?」
その言葉には悪意がない、だが負けず嫌いな男は火がついた。
(上等だよ! やってやるよ!!)
「しっかり掴まれ。恐怖を教えてやる」
「……うむ」
再び走り出す。限界に近いが煽られては仕方がない。楓の辞書に不可能の文字は無いのだ。
「あの2人は本当に相性いいなあ」
「凄いわよあれ。楓どう見ても限界なのにやせ我慢してる。いいトレーニングなってるわ。夕月ちゃんはカンフル剤ね」
夕月には弱っているところを見せたくない楓は常に意地を張っている。性格がうまく噛み合って良い効果を生み出していた。
実際一緒に走るようになってから楓のスタミナは増した。1人で走っていた時より明らかに効果が出ている。
陽もかなり走れるようになってきたため、響もたまに楓の横に並んで走る。響としてもいい刺激になっているようだ。
ロードワークを終える頃にはさすがに膝が笑い、息も絶え絶えといった様子。それでも夕月の前では弱味を見せない。見せたくはない。
(さすがに死ぬ)
座って息を整えていると夕月と響の会話が聞こえてきた。
「で! 楓になんて言われたの? あのバカが告白したの?」
「……うむ……愛している……と」
「言ってねえよ!!」
微妙に盛られた会話に自然と突っ込んでしまった。夕月は不満そうに頬を膨らませる。響はテンションが上がってニヤニヤしている。
「……じゃあ……嫌い?」
「なんでそうなるんだよ! わかるだろ!?」
「……わからない」
「ぐっ!」
「……ちゅーした……むぐっ」
その口を手で塞ぐ。放っておくと何を言い出すかわからない。だがそれも手遅れだったようで陽と響にはバッチリ聞こえていた。
「え!? なになに! キスは済んでるの? もしかしてその先も!?」
好奇心旺盛なその顔は厄介この上ない。ニヤニヤと楓を観察している。
「……キスだけだよ。しかもこいつからの不意打ちだ」
楓の手から逃れると夕月はすぐさま話し出す。
「……楓の……くちびる……やわらかい」
「だってさ楓! あんたこんな可愛い子とキスしたの? 控えめに言って死んで欲しいんだけど」
冗談なような口調だが響は真顔だ。この女どれだけ夕月が好きなのだろうか。 もう何を言っても無駄だなと諦めてストレッチをする。
「……楓……怒った? ……嫌になる?」
心配そうに目の前に立っていた。ため息をつくと優しく頭を撫でる。
「ならねえよ。言っただろ死ぬまで一緒だって」
「……うん!」
嬉しそうに抱きついてきた。そして忘れていた、陽と響がいることを。
「凄い破壊力ね。この2人。なんか目の前でプロポーズ始めたんだけど」
「無意識に非リア充を殺ってそうだな」
呆れたように楓と夕月を見ていた。
◇ ◇ ◇
「楓は今日はジム行くのか?」
「今日は夕方からだな。こいつも行くらしい」
夕月の頭にぽんぽんと手を置く。
「じゃあそれまでプール行かないか? 陽凪が夕月さんに会いたいって聞かなくてさ。頼むよ!」
「んー。俺は構わねえけど。泳ぐのもトレーニングなるし。夕月いいか?」
「…………うん……行く」
「私も行くからねー」と遅れて後ろから響も答える。
夕月の水着姿。小柄だがスタイルがいいのは服を着ていてもわかる。楓としては複雑な心境だ。
見たいのだが見せたくない。
そんな楓の心境がわかるはずもなく、夕月は嬉しそうに笑みを浮かべる。
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