10 着せ替え人形
いつも読んでいただきましてありがとうございます<(_ _*)>
わざわざ感想やレビューまでいただきまして...
これからも時間が空いた時にでも読んでいただけましたら幸いです。
さて、今回のお話ですが。ちょうどいいところで区切ってしまい若干短めになってしまいました。ごめんなさいです。
さて今日は金曜日、時刻は午後4時半。
楓は陽とともに近くの大型ショッピングモールに来ていた。なぜかというと昨日の夕月との会話まで遡る。
――木曜日。放課後の下校中にて。
「で、土曜日は何の用なんだ?」
「…………買い物が」
「買い物が?」
「…………したいの」
どうやら土曜日は何か欲しいものがあり買い物に出かけたいということらしい。夕月翻訳もだいぶ慣れてきた。
「そうか。気をつけて行ってこいよ」
脛をゲシゲシと蹴られる。なにがしたいんだろうかこいつは。
「………だから…一緒に」
なるほど。どうやら一緒に買い物に付き合って欲しいということらしい。荷物持ちの人選としてパーフェクトだ。護衛も兼ねるからこれ以上の人選は無いだろう。
などと、楓は頭の中で考えていた。
「荷物持ち兼護衛か。なかなかおまえもハードに働かせるな」
「………ち!…ちがっ!……むう…」
少し間を置くと「…それで……いいよ…もう」などと頰を膨らませている。なぜご機嫌斜めなのか全くわからない。
それでも納得していないであろう夕月は交換日記を取り出すと、スラスラと書き始めた。考えながら書いているようだ。それでも話すよりは早いと判断したらしい。
①ジャージじゃなくてきちんとした私服で来ること。
②荷物持ちでも護衛でもなく友達と遊びに行きたいの。
③今回は藍原さんは呼ばないで。二人がいい。
楓の目の前で抗議の視線を送りながらノートを開いて見せた。大きな瞳には有無を言わせぬ迫力がある。
「…………制服も……NG…です」
「な、なんかよくわからんが了解した」
あまりの夕月の勢いに頷く以外に選択肢は用意されていなかった。
―――
「で、まともな私服が無いから俺のとこにきたと」
「話が早くて助かる」
夕月に口止めされていたにも関わらず陽に相談していた。なぜなら相談できる相手が楓には陽しかいない。
「なるほどなぁ。おっけー! おまえスタイルいいから着せ替え人形にして遊んでやるよ」
「…なるべく手短に頼む」
ということで現在ショッピングモールにいる。モール内にはセレクトショップなども多数あり、選択肢の幅は広い。ここで買うのも陽が提案してきた。有能である。
「よし。じゃあまず楓はどんな服が好みなんだ? とりあえず選んでみてよ」
「そうだなぁ…アレなんかどうだ?」
指差した先は紳士服屋。簡単に言うとスーツ。
「おまえ…まじかよ」
「いいじゃねえかピシッとしてて」
陽は呆れて絶句している。私服と言っているのにスーツをチョイスする抜群のセンスには脱帽だ。いや、スーツは悪くないのだ。行き先によってはバッチリハマる。
ただ今回は夕月とのデートだろう。買い物の付き添いにスーツとか完全にただのボディガードにしか見えない。
「そうか…おまえの頭の中にはグローブ入ってるの忘れてた。すまん」
「早く選んでくれ。疲れる」
楓に任せるのは無謀だと判断した陽は、キョロキョロと周りを見ながら見繕っていく。ある程度選んでくるとそれを渡して試着室に押し込む。
着替え終わった楓は困惑した様子でカーテンを開いた。
チャコールのスキニー、七分丈の深緑のカラーニット。足元は紺のキャンパスシューズ。
まずハズレの無い組み合わせ。着る人次第ではあるが。
試着した楓を見て陽は驚いた。
(これを見た夕月さんの反応面白そう)
ニヤニヤしている陽を見て若干不安になる。
「なぁ、これでいいのか?」
「ん? あぁ。それで完璧! カッコいいぞ拳闘少年」
「後は髪だな」と言われて鏡の前でワックスでのセットを教わった。ワックスで形を作ってスプレーで軽く固定する。髪はそれほど長くないため、軽く横に流すようにした。ワックスとスプレーは陽が使っているものを貰った。
「おぉ、これはマジで。なかなか…」
「これでいいのか? なぁ? なんか言えよ殴るぞ」
「いや予想以上で絶句してた」と笑う。
多少バタバタしたが服と靴を一式用意した。慣れない服装に違和感しかない。だからと言ってジャージで行ったら夕月の機嫌を損ねそうだ。
明日のことを考えると自然とため息が出た。
◇ ◇ ◇
――土曜日当日。
夕月との集合場所はとある喫茶店の前。目的地などは知らされていないため言われるがままに向かう。
陽に選んで貰った服を着て、髪もセットして集合場所を目指す。道中感じた視線はいつもと違っていた気がする。ヒソヒソ話すような声も聞こえていた。
(…この格好大丈夫なのか? なんか変に目立ってんじゃねえのか?)
喫茶店が見えてきた。その前には数人の男が誰かに話しかけているのが見えた。考えるまでもなく夕月が言い寄られているのだろう。ため息を一つ、ゆっくりとそこへ歩いていく。
「悪いけど通してくれ。そいつ俺の連れだからよ」
「なんだよおまえ、って……イケメンの彼氏いるんじゃねえかよ!期待させやがって! 帰ろうぜ」
随分と勝手な奴らだ。「ちっ」などと舌打ちをして姿を消した。
「よう。遅くなって悪かったな」
「………………え?………神代…くん?」
「見りゃわかるだろうが」
両手で顔を覆うと「…ちょっと…待って」と背を向けた。耳が異常なほど赤い。大丈夫だろうか。
少し心配になり正面へと回り、覗き込むように夕月の顔を観察する。両手で覆っている手。その指の隙間から覗いた瞳と視線が合う。
「……………あ……あぅ…」
「大丈夫か? 異常な赤さだぞ? 」
次はサッと楓の背後に回り背中にしがみつく。
「………ちょっと……待って」
どうしたもんかと困惑しながらも夕月が落ち着くまで黙って待っていた。前途多難な一日になりそうな気がした。
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