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「一人で何もせずにいるから妄想をしてしまうのだからお父さんやお母さんのお手伝いでもしたらどうかな」
サトシは提案してみた。
「パパの仕事かあ。家でする仕事なら汚れた旅装を洗うくらいだけど、もう洗ってるよなあ」
「じゃあ私の話を聞いてよ、パパ」
クリップ一家の雰囲気はサトシの家のそれを思い起こしたのだ。
「僕はママのお手伝いする」
「僕もママのお手伝いがいい」
「じゃあ後で夕食を作るの手伝ってちょうだい。今はお茶を飲んでゆっくりしましょう」
小さい頃、仕事から帰ってきた母にお茶を出して肩を揉み、一息ついたら夕食を作る手伝いをしていたのだ。
「じゃあママの肩たたきする」
「僕は肩揉みする」
「うーん、二人一緒にはできないかな」
大きかったその背中が小さく感じたのはいつだっただろう。
「僕が右側叩くね」
「僕は左側もむね」
「お手柔らかにね」
ただ、それまでママと呼んでたのを母さんって呼ぼうと決めたのは覚えてる。
「サトシさんの私物に私の刺繍を入れるのはサトシさんと付き合ってるんですって周りに言いふらすことと同じだってママが言って…」
「ままま待てエミリーお前サトシのことがあぁぁ…」
立派になっていっぱい返そう、親孝行しよう…。
「…サトシさん」
「お前、何泣いてんだ」
もう返せない。
「みなさんを見てると俺の母を思い出してしまって」
こんな親不孝はない。
「母さん絶対心配してる」
こんな酷いことはない。
「死ぬまで俺のこと心配してる」
どうしたらいいんだ。
「ごめんなさい…母さん」