『“大切なもの”に自分は入っていない』
貴方の大切なもの。
私の大切なもの。
昔から互いに背中を預けてきた相棒は、いつも私を守るように動く。戦っているのにいつも私を見ている。敵が迫っているのは君なのに、いつも私を救ってくれる。
君は傷を負っているのに。
私が君の背を守る、ということが君を傷つけてしまうなら、私がいる意味はない。と君に言ったことがあった。
君は、
「大切なものを守りたいだけだ」
と言って、私が君から離れることを良しとしなかった。
私からすれば君が大切だから、傷ついて欲しくはないのだけれど。どうやら君の言う“大切なもの”には『自分自身』は入っていないらしい。
それがわかってから、私は今のままではいられないと思った。守りたい人を傷つけてしまう実力なんていらない。そんなもの捨てて、超えてしまわなければ。
大切な人を亡くさないために一層鍛錬に励むようになった。君が君自身を大切だと思わないのなら、私が君のぶんまで君を大切にしよう。
前以上に自分と、そして君を守るように戦うようになって、君はそんな私を見て笑う。
無傷の君が私の誇りで、私の大切なものなのだから。“大切なもの”に自分が入っていない君だから、私が君を大切にして、君に傷一つつけさせやしない。
私は私に、そう誓って生きている。




