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第33話 勘違い

アルフォート視線、さいごです!

「……いえ、私は本当に、とんでもないことを。申し訳ございませんでした」


そう告げていた時のレシアスの顔に浮かんでいたのは隠しきれない恐怖だった。

私に拒絶されるかもしれない、この場所から追い出されるかもしれないということに対する恐れ。

………そして、そのレシアスの恐怖を私は知っていた。

何故なら私とレシアスの抱く感情は全く同じだったのだから。

私もレシアスと出会うその直前までは、その考えに支配され全ての人間を拒絶していたのだから。


自分は決して誰も受け入れられないと、そう思い込んで。


「っ!」


ーーー そしてだからこそ私はレシアスがそんな表情をすることが許せなかった。


レシアスがそんな恐怖を持っているということは、レシアスは私さえも信用していないのだ。

昨夜、あれ程までに言葉を尽くしたのにもかかわらず。


………レシアスは私、アルフォートにさえ受け入れらることが無いと思い込んでいるのだ。


そしてそのことがどうしても許せなくて。

誰にも受け入れないと信じ込み、勝手に傷ついていくレシアスを放っておくことが出来なくて。



「なぁ、レシアス。私は婚約者に対して失言程度で家から追い出そうとするような冷たい人間に見えるか?」


……気づけば私は、昨夜の決意をあっさりと破ってレシアスへとそう言葉を投げかけていた。


ーーー けれども、その時だけは後悔も忘れて、その言葉を聞いた時のレシアスの表情、それに私は満足げに笑った。







◇◆◇







「………絶対に嫌われた」


……レシアスの表情に満足げに笑ってきた自分、それを思い出し私は思わず乾いた笑いを漏らした。

確かにレシアスのあの表情は、私にとってどうしても許せるものではなかった。

……けれども、婚約者云々は明らかに言い過ぎだった。


「……はぁ」


そう考えて、私は再度気が狂わんばかりの後悔を抱く。


「ゔぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


「ーーーーっ!?」


………そして次の瞬間、レシアスの部屋から響いてきた叫び、それはまるで吐き気を催したかのような叫びで、私の心に容赦なく追い討ちをかけた。


「………死にたい」


顔にげっそりと隠しきれない衝撃を浮かべた私はその言葉を最後によろよろと歩き出す。


「なんれ!あのたいみんふでどっかいちゃうのよ!」


……そしてそんな私がその後に響いてきたレシアスの声にも、また吐き気を催すように感じた声はただ枕にくぐもっていたからだということにも、気づくことはなかった。

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