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第18話 アルフォートの頼み

「レシアス嬢、貴女に頼みがあります」


「……え、頼み?」


……散々覚悟を決め、アルフォートの部屋を訪れた私を迎えたのは、そんな言葉だった。


「あ、あれ?化粧のことは……」


その言葉に私は数瞬硬直し、それから呆然とそんな風に言葉を漏らしていた。

私の状態を悟った上でのアルフォートの呼び出しだと思い込み、私はここまで来たのだが、アルフォートの口ぶりからは全くそんな響きは存在していなかったのだ。


「え、化粧?……ああ、たしかに少し前から顔が変わったなとは思ってました」


「……そうですか」


……そして続く言葉に私は、そもそも化粧をしていたことをアルフォートが気づいていなかったと理解する。

うん。虚しい。

ただただ、どうしようもなく虚しい。

決してアルフォートに好意を持たれているとか、私のずっと見てくれているとか思っていた訳ではないが、ここまで驚かれるとまるで自分が自意識過剰だったみたいな感覚を覚えてしまうのだ。

……化粧をしたことに気づくだろうというのは決して自意識過剰なんかではないはずなのに。

いや、私の外見では化粧程度で変わる訳がなく、つまり自意識過剰だったりするのだろうか……

と、少し私は落ち込むことになった。


「レシアス嬢、貴女に頼みがあると言いましたよね」


「………え、あっ、はい!」


次の瞬間、私はアルフォートの言葉によって我に帰った。

正直、少しアルフォートの態度に対して何も思わなかった訳ではないが、けれどもアルフォートの言葉に一体私はそれらの思いを胸の奥に抑え込んだ。

いや、その言葉を発したアルフォートの真剣そのものの態度に口を噤んだと言うべきか。

一体何がアルフォートにこんな重い空気を纏わせているのだろうか。

私には何もわからない。

けれども、アルフォートの言葉が何であっても受け止める覚悟を決めようとして。


「貴女には数日中に、いえ、明日にでもこの家を後にして欲しい」


「………え?」


……しかし、次の瞬間私はそんな間抜けな声を漏らすことしか出来なかった。

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