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第9話 掃除

なんとか青年、アルフォートの家に滞在することを許されることになった私。


「ふふふ!」


そしてその喜びにアルフォートから与えられた部屋の中で私は浸っていた。

理由はわからない。

けれども、何故かこの屋敷に滞在することをアルフォートに許してもらえたということが私は嬉し感じたのだ。

それからしばらく私は一人で頬を抑えてにまにまと笑みを浮かべていたが、壁に掛けられていた時計に、いつのまにか時間がかなり過ぎていたことに気づく。


「やっちゃった!」


次の瞬間、私は手早くアルフォートから手渡された彼の古着に身を包むと、部屋を飛び出し走り出した。


実は私がソファで目覚めた時にはすでにもう、天窓からもう朝日が部屋の中を包み込んでいた。

……つまり私はソファで一晩明かしていたのだ。

天窓から差し込む日光に、そのことに気づかされた私は衝撃で少しの間呆然としていたが、少ししてあることを心に決めたのだ。


怠けてしまった分、働かなければならぬと。


そう決めた次の瞬間、私はアルフォートから掃除道具のありかと、今の動きにくいドレスの代わりに来てもいい古着を入手して与えられた部屋へと走り出した。


けれども最初着替えるために私はその部屋に入ったのに、自分の部屋を見ているうちにどうにも頬が緩んできて、いつのまにか無駄な時間を過ごしてしまっていた、というのが先程までの経緯だった……


今私がいるのは確かにある程度大きいが、それでも使用人が複数人必要になるような屋敷ではなく、家でしかない。

けれども、現状私しかいない状況を考えると、時間を無駄にできない。


「……気を引き締めないと」


だからこそ、私は緩みかけていた顔を引き締めそうぽつりと漏らしながら、走っていった。







◇◆◇







「これで、今日はいいかな……」


それから数時間後、見違えるように綺麗になった家を見つめて私はそう頷いていた。

この家で使われていたのはほんの一部だけで、それ以外の部屋はほとんど使われておらず、かなり埃が溜まっていた。

そしてそんな状態からここまで来るのには、仕事ぶりから侍女頭まで上り詰めた私でもかなり時間がかかって、今の時間帯まで掃除することになっていたのだ。

けれどもその甲斐あり、現在家はまだ完璧とは言わないまでも、かなりマシになっていた。


「ふふん~ふんふふん~」


その家の状態に思わず私はご機嫌に鼻歌を漏らす。

しかも、掃除によって私が得た成果は綺麗になった部屋だけではなかった。


「これ、かなりいい野菜だよね?」


そう、それは食材のありかだった。

お昼、掃除をする私の元にアルフォートが持ってきてくれたのは、野菜に火を通したものと、冷たいパンというあまりにも酷いものだった。

もちろん、私だけならばどんな食事でも、食べられる物があるだけで気にはしないが、居候させてもらっている現状、お昼と同じようなご飯をアルフォートにあげるのは看過できない。


「よし!」


だから私は自信満々に腕まくりして……

その次の瞬間だった。


「こ、これは!?」


「っ!」


外から帰還したアルフォートの驚愕した声が響いたのは……

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