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武装少女  作者: 荒魏 螢
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墓場で会いましょう

この国は、人と人形が共に生きている。

しかし、それも短い歴史だ。

最初から人形に感情があるわけではなかった。

国やドゥルジは感情には興味を示さない。

そんな中で

開発チームだけが【感情】というプログラムを作る。

ディーテは言う。


「お人形さんで遊ぶ時、

その場その場で表情が変わるようになったら面白いでしょ?」


そう言って、彼女は武装少女を含める他の人形にも

感情を与えていった。


そして戦争が終わり

兵器を処分していく国は

開発チームの研究ラボにて

人形に感情を持たせるプログラムを見つけ

今に至る。


人間と人形は共存を歩む。

しかし、多くの問題がある。

その中の一つが寿命。である。

人の寿命は決まっているが

人形は決まっていない。

生まれるのは知っていても

死ぬのは知らない。

一つ、

主を失った人形はどうなるのか?

大体が回収され

リサイクル。または廃棄される。

それが嫌と言う人形は

人形の墓場(ファントマー)へと流れ着く。


モイライは1人、そこに来ていた。


モイライは前を見る。

そこには煤汚れた人形達が

異物を見るような目でモイライを睨み付ける。


その場所には相応しくない

緋のゴシック服。

モイライは構わず前に歩き出していく。

ノイズが酷く交じる声が

辺りに響き渡る。

ここは墓場だ。こいつらはもう死んでいるんだ。

と同時に、これらは大事な記憶を守っている。

過去の楽しい記憶も悲しい記憶も

これらは捨てずに大事に守っている。


モイライはそんな人形たちを

尊敬し、嫉妬する。


ここは墓場だ。

この世を捨てた人形が集まる墓場だ。


モイライはただ前だけを歩く。


真永はハッと目を開ける。


「モイライ...?」


辺りは暗く、圧迫感が真永に襲いかかる。

起き上がろとするも

身体に力が入らない。

次第に脳が活性化していき、

真永は今、自分が置かれている状況を理解し始める。


「そうだ...私、何かの爆発で...」


真永は、地面が異様に濡れていることに気付く。

なんだろうと思い、目を下に向ける。


「暗くて、...よく分からないな」


ちょうど喉が少しかわいていたので

真永はそれを舐めとる。


「っ!?」


口の中に鉄錆の様な味が広がる。

本能がこれは血の味だ。と真永に告げる。

頭から、腹から血が流れだしていた。

真永は不安と恐怖に駆り立てられる。


「モイライ...嫌だよ...。

まだ、...死にたくない...よ」


真永は大粒の涙を零しならが

力無き声で言う。

その声は弱々しく、今にも消えてなくなりそうだ。


モイライは瓦礫の山から

真永を必死に探す。

焦りが募るモイライは真永を呼び続ける。


モイライは何時間もかけて真永を探す。

襲撃を受けて1週間。

モイライは独りでずっと探している。

その間、見つけた者は全員、息絶えていた。壊れていた。

そしてモイライは真永を見つけた。


「真永....っ!?」


そこには涙の跡を残し

冷たく眠っている少女の姿があった。


モイライは泣けない。

こんなに悲しい気持ちなのに

涙一つでない。


モイライは顔を覆い、呟く。


「何故、人形は泣けないんだ...?

なんで、ないちゃいけないんだ...?」


....。

墓場を歩く少女が一人いた。

そこを歩くモイライに

少女が一人、声をかける。


「モイライ、ここで何をしてるのです?」


聞き覚えのある声に

モイライは振り向く。


そこには蒼のゴシック服を纏う

墓場(ここ)には相応しくない少女がいる。

モイライはその蒼の少女を見て

その少女の名を言う。


「...アプサラス」


それが第5武装少女、アプサラスとの出会いだった。

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