目を覚ます紅の少女 【前】
平和に見えるこの世界の裏側では
常に争いがある。
イド歴34年。
イベルア大陸にて、ゲリラとの戦争が始まる。
この大陸の国皇は、ゲリラに対し、武力を持って制することを命じる。
武装勢力はいつの時代も人々に恐怖を与えた。
このため、人々は
いつだってその武力に恐怖しながら
毎日を過ごしていくハメになる。
やがて国は
武装人形という兵器をつくる。
人工兵器人形と呼ばれるそれは
自ら考え、最善と思われる行動で敵を攻める
多目的戦闘特化型人形である。
一つは人の為に。
一つは反逆のために。
一つは終わらせるために。
その結果はどうだろうか?
武力は武力であり
更なる火種をまき散らす。
そこには終わりなんてない、犠牲の連鎖が続いていた。
ドゥルジ軍は
これにより多くの死者を出した。
更に国は、武力への執着が強くなり
不毛な戦争を巻き起こす。
ドゥルジ軍の開発者ザッディー=ケルトマンは
対抗するべく一つの兵器を創り出す。
殲滅兵器と呼ばれるその兵器は
無差別な破壊を求め、
大陸中に死体の山を築き上げる。
国の武力を持ってもその兵器には無意味であった。
それから3年。
ゼタ歴1年。
終わらない争いに一つの光が差す。
多目的救出人形開発チームは
独自の技術による武装少女を生み出す。
長く続いたこの争いも
武装少女の活躍により
戦争は終わる。
やがて平穏を迎えるこの大陸に
武力は不必要と判断した国家は
各自、人形の破棄を命じる。
ドゥルジ軍はそれに反対し、逃亡し
行方を眩ませる。
武装少女もこの命を受けるが
開発チームも反対した。
これにより、開発チームは反逆罪とみなされ
ほぼ全員が死刑を言い渡される。
武装少女も多くが破棄されていった。
モイライの生みの親である
ディーテはとある人に頼み
モイライを隠した。
別れ際、モイライはディーテに言う。
「私も、気が向いたらそっちに行くよ」
イベルア大陸は平和を取り戻した。
それから数十年後。
ギムリアム歴14年。
このイベルア大陸は
人形と人が支え合いながら
今を生きている。
そこに一人の少女がやってくるところから
また、人形は動き出すのだった。
「うーみだぁーっ!!」
彼女は船の上で喜びを叫ぶ。
彼女の名は伊吹 真永。
長期の休みを利用して
遠い親戚の家に止まる予定である。
真永がはしゃいでいると
向こうにイベルア大陸が見えてくる。
「あれが、イベルア大陸!
人と人形が住む国。
どんなワクワクが待ってるかな....楽しみ!」
高鳴る期待の真永は嬉しそうだ。
程なくして
船は港町グリューネに停泊する。
真永は下ろされた階段を駆け下り、
その大地への一歩を踏み出す。
周りを見渡すと
人形達が歩いてるのが目に映る。
「凄い!!本当に人形がいる!!」
興奮している真永に一人の老人が声をかけてきた。
「人形が珍しいかい?お嬢さん」
真永はその声が聞こえる方へと顔を向ける。
振り向くと
そこにはブライド=ブリューナクの姿があった。
「ブライドおじさん!」
「やあ、真永ちゃん。久しぶり。
迎えに来たよ」
そう言うと
ブライドは真永を車へと迎え入れる。
真永を乗せた車は
自宅へと走り出すのだった。