プロローグ
久しぶりに浮上します、涼御ヤミです。
今回初となる魔法少女ものを書きました。
まだまだ稚拙で手探り感が否めませんが、お付き合い頂けたら幸いです。
俺がいつ空想上の存在である魔法少女について知ったのかと言うと、あれは気だるい夏の日、思い出す限り、確か幼稚園の年長だった時の話だ。
両親不在の中、エアコンが故障するという五才にして前代未聞の悲劇に見舞われた俺は、うだるような暑さから逃げるように隣家の幼馴染み宅まで避難。着の身着のまま来た俺をこころよく迎え入れた郁夏の両親に促されるままソファに座り、テレビの真ん中を陣取る郁夏と一緒に人生初となる魔法少女のアニメを見た。
正座し握りこぶしを膝に置いて目をキラキラと輝かせる郁夏とは対照的に、頬杖をついてあくびをする俺。子供向けアニメはあくまで子供騙しに過ぎず、俺にしてみればただただ退屈でしかなかった。
だが、それは取り留めのない日常シーンだったからで、悪役が現れ変身して戦うまでの間、俺はテレビから目が離せなくなっていた。
可愛い女の子たちが手を取り合って戦う姿は可憐でもあり格好よく、男でありながら、俺は子供心に魔法少女に憧れを抱いていた。
ただ冒頭でも述べた通り、魔法少女は空想上の存在。言わば神聖視されて然るべきもの。それを十分に踏まえた上で聞いてほしい。
「――これで、わたしが魔法少女だと信じたか?」
「……」
目の前で信じるに値する出来事を見せられ、俺は二の句が継げない。
悔しいが、こいつの言うことは全て真実なのかもしれない。そう思える根拠が、思い出してみればいくつもある。
――ここは家、俺の家。
かすみのいきれるような夕暮れ時、しかし日の届かない薄暗い廊下に俺たちはいた。俺と少女が互いに立ったまま向かい合い、その傍らに幼馴染みの女が一人とぽっちゃり――もとい、デブがいた。
俺もこいつも全身が汗でべったりと濡れているのが分かる。いつの間にこんな汗みずくになっていたのだろう。今すぐシャワーを浴びて服を替えたいくらい不快だ。
「お前は……」
口を開けるも、後に続く言葉がなかなか出てこない。まるで脳に洗剤をぶっかけられてたわしでゴシゴシと擦られたように頭が真っ白だ。
しかしこのままではダメだと喉を鳴らし、十分に息を整える。……これで少しは落ち着いたな。訊くべき内容もまとまった。
俺は胡乱な目を向ける少女に改めて質問を投げ掛けた。
「お前は、本当に魔法少女なのか?」
俺の言葉に少女の桜色の唇が開き――
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