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二軍恋愛-知らない漫画のモブに転生したようです-  作者: 獅象羊
第一章「小学生編」(四年生)
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90.五年生に向けて

「いやー、今年ももう終わりかー。早かったねー」

「だなー」


 そろそろ3月も終わろうかという頃、私と(ほむら)は、のーんびりとお茶を飲みながらまったりしていた。まぁ、まったりと言ってもアレですけどね。一応、来年度に向けての話し合いの時間なんですけどね。


「唐突ですが! 瑞穂(みずほ)とっ!!」

「はっ!? マジで唐突だな、お前! えーと、(ほむら)のー」

「五年生対策会議ィー! ワー!! パフパフパフパフーッ!!」

「……今年テンション高ぇな……」


 呆れたような視線が刺さるけど、それでも付き合ってくれる(ほむら)が好きです。

 キャッ、言っちゃった! テヘッ。


「何か、今すげーウザいこと考えてないか? 叩くぞ」

「そう言いながら既にハリセン構えてる! 私がどう答えようと叩く気なんでしょ! ドメスティックバイオレンス禁止ー!!」

「問答無用っ!!」


 ええっ、ひでぇ!!

 ふざけながらとは言え、暴力反対を叫ぶ私に対し、(ほむら)は遠慮なくハリセンを振り下ろす。なんてこった! 私たちの間に、遠慮とかいう文字はなかったのか!!

 ……いや、なかったか。別に。


「そおいっ!!」

「あっ、おい真剣白刃取りなんて卑怯だぞ」


 パシッと、小気味良い音を立てつつ私はハリセンを両手で挟み込むように受け止めた。ふはは、まだまだ甘いな(ほむら)。なんて考えつつドヤ顔を決めたら、普通に叩かれた。痛ぇ。


「もー、(ほむら)ってば愛情表現過多なんだからー」

「全然違ぇ。……ってか、話し合いすんじゃないのか?」


 完全に呆れたような視線を頂戴してしまった。これはいかん。

 私は軽くコホンと咳ばらいをしてから切り出す。


「そうそう。来年度に向けての話し合いね」

「初心を忘れてじゃれてたら、一瞬で時間が過ぎるからな」

「けど、特に話し合うことって無かったよね?」

「……まぁな」


 2人で、微妙な顔をして見つめ合う。

 何しろ(ほむら)の話では、来年度の5年生どころか、6年生でも何も起こらないと言うのだ。気を付けることも何もない。いや、ない訳じゃないだろうけど、対策のしようはない。


(ほむら)は何かある? やっといた方が良いこととか、避けた方が良いこととか」

「イケメンホイホイして来るな」

「そう言われてもさー、難しい」


 割と真顔で言われたけど、私だってしたくてしてる訳じゃないことを「するな」と言われても困る。


「そうだ! 私はあったよ、文句」

「あ、俺に? 何だよ。一応聞いてやるけど」

「え、何で偉そうなの」


 何故か、尊大な感じで腕を組んで来る(ほむら)に、私は物言いがあるよ。

 いや、言いたかったことはそれじゃないんだけど。


「モラハラも反対だよ、ほむほむ!!」

「その呼び方自体がモラハラだろ! おい、お前ふざけんなよマジで」

(ほむら)こそ、態度ふざけないでよね!」

「何だとー!」

「むっきー!!」


 ポカポカと、可愛らしい叩き合いをしていたら、丁度通りかかった双子に、生暖かい視線を頂いてしまった。

 いやいや、せめていつもみたいに混ざってよ! 邪魔したら悪いと思ったとか言わないで! 寂しい!!


「とりあえず、落ち着こう。ふざけている場合じゃないだろ」

「そうだね、ごめん。ちょっとボケやめておくわ」

「出来ればこれからずっとボケなしで頼む」

「それはイヤです」

「何だと」


 そして、第二ラウンドへ……ってなったら大変なので、とりあえず頭を下げておいた。


「で、俺に言いたいことって何?」

「うん。来年度の(ほむら)の目標なんだけど」

「ああ」

(ほむら)拗ねるな、ってどうかな!?」

「は」


 今世紀最大のドヤ顔で言い放ったら、(ほむら)が固まった。

 どうしたんだろう、珍しいな。ちょっと気になるけど、割と本気で物言いしたいことだったので、丁度良いやと続ける。


「今年度さー、何があったか分からないけど、(ほむら)拗ねてたじゃない?」

「……言いたいことはあるが、聞く」


 拗ねていた、という言葉の雰囲気からして、滅茶苦茶文句言って来るんじゃないかと思ってたけど、意外な展開だ。

 内心で驚きつつも、言いたいことは何だかんだと決まっていたので、スルスル言葉は出て来た。

 何しろあの時は、文句を言おうにも、(ほむら)の突然のイケメンモード((ほむら)曰くの黒歴史)のせいで、気勢を削がれちゃってたからね。

 言いたいことはたくさんあるのだ。蒸し返すようなことじゃないって? いやいや。寧ろ今しかないでしょう。


「夏休み出かけるのとかさ、伯父さんじゃないけど、私も結構楽しみにしてたんだよ。いつでも一緒ではあるけどさ。やっぱり、そういうイベントって特別じゃない。それに、私こう見えても結構(ほむら)のこと好きだから。ああやってつれなくされ過ぎると、寂しい」

瑞穂(みずほ)……」


 思いがけず、しんみりしてしまった。(ほむら)のことだから、明るく茶々入れたりしてくれるかと思ったけど、何だか私より痛々しい顔してる。

 って、違う違う! 暗くなりたい訳じゃないんだよ、私は!


「ね、だからさ! 慈善事業だと思って、彼女出来るまでで良いから、私と仲良く遊んでよ! 後生だから!!」

「後生って……そこまでのことかよ」


 ここでようやく、ちょっとだけ笑ってくれた。

 でも、力のない笑い方だ。私が切り出したこととは言え、何だか申し訳ない。

 とは言え、ここで引っ込めてしまったら、またあんな思いをしなくてはならなくなるかもしれないから、思い切る。


「だからね、ほむ……」

「悪かったよ」

「え?」


 私が、更に言い募ろうとしたところを、先に(ほむら)が遮った。

 驚いて目を瞬きながら見ると、(ほむら)は、バツが悪そうな顔をしていた。


「何に悩んでたかとかは言う気ねーけど、改めてちゃんと謝んなきゃなんないな、とは思ってたんだ。まぁ、ズルズルとここまで来たけど」


 ポリポリと頬をかく姿は、流石のハーレム漫画の主人公だ。絵になって腹が立つ。


「だから、悪かったって、何でお前そんな不愉快そうな顔してんの? そういう場面だったか、今!?」

「だって、(ほむら)がイケメンなんだもん! 世の中って不条理だよね。ああっ、何だろうこのムカつきは!!」

「顔は仕方ないだろ!」

「声もカッコ良くて辛い!!」

「声も仕方ないだろ!!」


 良かった。あの日みたいなイケメンモードじゃなかった。

 私は、ホッとしながらお茶菓子を口にする。いやー、甘くておいしいなー。


「って、何ぼりぼり菓子食ってんだよ!?」

「何か安心した」

「何がだよ! ったく……仕方ねーなぁ、お前って女は」


 呆れたように溜息をつくと、不貞腐れたように足を組んで、一緒にお菓子を頬張る。


「あー、これ美味いな」

「でしょ? 流石は店売りの品」

「……叔母さんのはな。食えたもんじゃねーしな……」


 若干どうでも良い話でブレイクを入れたし、良いタイミングかな。

 私は、へらりとした笑みを浮かべて切り出す。


「私はさ、別に謝って欲しい訳じゃないんだよ。ただね、これからの人生も面白おかしく生きたいだけー」

「何? これから先は拗ねないって約束だけすりゃ良いってか」


 はぁ、と軽く溜息をついた(ほむら)の、ここしばらくでまた涼やかになった目を私に向ける。


「えへへー」

「まったく……。……分かったよ。あれは拗ねてたんじゃねーって断じて言っときたいところだが……約束してやる」

「本当に!?」

「ああ。これからも、お前と面白おかしく生きていくよ。もう、あんな風に1人で引き籠ろうとしない。だから……よろしくな、瑞穂(みずほ)

「っうん!!」


 2度目の人生で、一番……ううん、前世を含めても、一番嬉しい約束かもしれない。私は、(ほむら)が照れたように笑いながら約束をしてくれる姿を見て、満面の笑みを返した。


 何だか、今年度からの人生は、もっと素晴らしいものになりそうな予感がする。


「うへへ……」

「その笑い方は気持ち悪いだろ! 落ち着け!!」

「って、いったー!! また叩いたー!!」

「お前はこのくらいで丁度良いだろ?」

「ひ、ひでぇ!!」


 ……多分?

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