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二軍恋愛-知らない漫画のモブに転生したようです-  作者: 獅象羊
第一章「小学生編」(四年生)
94/152

89.委員長と略してクリパについて

さ、3年ぶり……?? そ、そんなまさか……。


……という茶番はさておき、お久しぶりです。

不定期にて更新再開させて頂きます。

100話記念(予定)で募集させて頂いた質問企画についても、予定通り100話に到達した時点で公開します。

どうぞ、また「二軍恋愛」をよろしくお願い致します。(土下座)

「うーむ。もうクリスマスかぁ…」


 窓の外を見つめながら、ふとアンニュイな気持ちになってみる。

 こうして思い返してみれば、別にアンニュイになるような出来事も最近では起きていないのだから、そんな気持ちになる必要はないんだけど。まぁ何だ。気分だ。

 前世の小さい頃、吹雪の中で庭にカマクラ的なものを作って、その中に一人で籠りながら遭難ごっこをやっていた日の気分に近い。

 雪国の子は皆やるよね。……やるよね? あれ、私だけ? ヤダ、私ったら何てマイノリティー。


青島(あおしま)……? 何かあったのか」


 非常にどうでも良い物思いに耽っていたら、心配してくれた委員長から声がかけられた。

 私ってば何をやっているのだろう。純粋でピュアピュアな委員長に心配をかけるなんて、万死に値するよね。

 ほら見てよ。あまりにも心配してくれてるせいで、仁王像みたいな表情になってるよ、委員長。怖すぎる。

 とりあえず謝っておこう、内心だけで。マジでメンゴ!


「うんにゃ。何もないよー」

「……だが」

「ただちょっと誤算があったというか、まぁ嬉しいんだけど、ちょっと悩ましいというか何というか。あ、そうだ。委員長も来るよね?」

「……話の途中で、方向性を急に変えないでくれないか」


 ムッとしたように眉根を寄せる委員長。

 これは完全にお怒りですね。ふざけるのはこの辺りにしておこう。

 私は、気を取り直すときちんとした説明を開始した。


「この間さー、私の2人目の弟生まれたでしょ?」

「……ああ。1日(ついたち)だったか」


 あの日は、流石に青島(あおしま)家も赤河(あこう)家も慣れたのか、結構スムーズに事が進んだ。

 特に何か大事に陥るようなこともなく、産気づいてから、1日も経たずにつるりと生まれ落ちてくれた。

 体重が重過ぎる軽過ぎるとかいった問題もなかったし、病気もないし、更に言えば伯父さんの仕事上のトラブルもなかったから、お父さんがずっと寄り添えてたみたいだし、伯父さんですら別室でずっと待機出来たくらいに何事もなかった。


 因みに、私たちも別室待機組だった。

 私は見守りたかったけど、まだ瑞貴(みずき)に見せるのは早いんじゃないか、という両親の判断で、私は瑞貴(みずき)のお守役として待機組になったのだ。

 私一人で見守ることは出来ただろうけど、それだと瑞貴(みずき)がスネてしまうからという理由で、それは却下になった。


「そうそう。1日(ついたち)生まれの大天使瑞人(みずと)くんなんだけどね」

「何か問題でも?」

「うーん……自分の子どもでもない上に、近しい親族だけで考えても5回目のイベントだって言うのに、伯父さんが妙にテンション上がっちゃってさぁ」

「伯父さん? テンション??」


 委員長が、ちょっと怪訝そうな顔をしている。

 私の伯父さん……即ち(ほむら)のお父さんが、ちょっとアレな人だという事実を、天然良い子な委員長は、理解していない節がある。羨ましい限りである。


「甥が生まれたのが嬉し過ぎて、盛大に祝いたいって言い出して、物凄い有名な俳優さんとか、芸人さんとか、オーケストラとか呼ぼうとし始めてね」

「…………」

「生まれたての赤ちゃんに、刺激が強過ぎるのはどうよっていう理由で、何とか説得して、もっと小規模な誕生祝い兼クリスマスパーティー兼(ほむら)のお誕生日会にすることにはなったんだけど、かなり大変だった訳よ」

「…………」


 はぁ、と重い溜息をつく私に対して、委員長は目を瞬くのみ。

 どうやら、私たちの大変さに実感がわかないらしい。デスヨネー。だとは思う。


「良く分からないんだが……」

「大変だったって話」

「……そうか」


 私、委員長のそういう素直なところ、好きだわ。

 伯父さんの奇行と、それによる被害を思い出して、乾いた笑いが漏れて来た。

 もういっそ、伯父さんと委員長チェンジしたい。いや、それも嫌だな。

 なんて、そんなことを思っていると、ふと委員長の手が伸びて来た。


「ん? 委員長、どうかし……」

「…………」


 不思議に思って問いかけようとしたところ、委員長はそのまま手を私の頭に乗せると、ゆるく左右に動かし始めた。

 優しく動くそれは、間違いなく、私の頭を撫でてくれている。……撫でる。頭を? ホワイッ? ファッツ!? パードゥン!?


「……えーと、委員長?」

「ん?」

「これは一体……」

「これ? 俺の手だが」

「それは分かるよ!?」


 天然発言頂きましたー!

 でも、今私が欲しいのはそんな言葉じゃない。

 いやいやいや、不器用極まりない委員長が、こんな女子を甘やかす高等テクニックを使いこなしているだなんて信じられん。理由を聞きたいんだよ、私はぁ!


「ど、どうして急に私の頭を撫でてるの?」

「どうして……?」


 ピタリと手が止まって、ゆっくりと引っ込められる。

 委員長は、珍しく事態を把握しかねて、ポカンとしている様子だった。

 自分の行動が理解出来ない、というような。

 しばらく私と見つめ合った後、更にゆっくりとした動きで自分の掌を見る。

 いや、委員長。瞬きはしよう。ちょっと怖いわ。


「どうして……」

「あっ、わ、分からないなら良いよ!」

「…………」

「委員長フリーズ。おーい。帰ってこーい」

「…………」


 もしかして、委員長ってば、無意識で慰めてくれたの?

 やだ、ちょっと待って。それ相当にポイント高いんですけど。

 流石の私もヨロッと来るよ、委員長。マジだよ、マジ。


「……どうしてだろうか?」

「私に聞かれても」

「…………」

「ふ、不満そうな顔されてもねぇ……」


 正確なところは、私にも分からんよ。だって私、委員長じゃないもん。

 慰めてくれたって言うのは、私の希望も含んでるし、正解とも限らない。

 因みに、正解じゃなかったら同じ委員会の相棒として非常にショックなので、その時には解散して、普通の女の子に戻ろうと思います。

 まぁ、もうちょいっちゃ、もうちょいで解散だけど。学年終わるし。


「友だちが疲れてたから、慰めてくれたんじゃないの?」

「……友だち」

「あっ、今更違うとかナシだよ? 私、今度こそ本気で落ち込むから」

「……うん、言わない。多分、いや、きっと、そうだから」


 おう。ごく稀に出る、委員長のレアスマイル。

 貴重なシーンだから写真撮影したいところだけど、ダメだ。

 あまりにも清らか過ぎて、ファインダーを通しても目が潰れそうだ。


「ところで、委員長も来るか、とは?」

「おっと、忘れるところだった。その略してクリパ、委員長も来るでしょ?」


 何を隠そう、委員長も去年来てくれたのだ。

 特に目立った何かがあった訳じゃなかったけど、とても楽しかったのは記憶に新しい。是非とも委員長やさっちゃんにも参加してもらいたい。

 あっ、勿論ちーちゃんゆーちゃんのエンジェルコンビは参加決定だから。

 よっぽどの用事がない限り参加するって、暗黙のルールだから。

 (ほむら)? 奴は用事があったって強制参加だから。ボイコットなど許さぬよ!


「……俺も、参加して良いのか?」

「いやいや、何をマジなトーンで聞いてるの。当たり前でしょ?」


 もう、委員長ってばお茶目さん! なんて茶目っ気たっぷりに背中を叩いたら、また委員長は停止した。

 あれ、私外した? もしかして失敗しちゃった?

 (ほむら)と違って、ツッコミを入れてくれないから、ちょっとその辺分かりづらいよ、委員長!

 内心で文句ともつかないような文句を思い浮かべながら反応を待っていると、委員長はゆっくりと深く頷いた。


「そうか。当たり前か……」

「そうそう。何しろ友だちだから。っていうか、相棒だから!!」

「……分かった。今年も参加させてもらうよ」

「オーケイ、期待しててよー! 今年はねー、色々とサプライズを計画しててねー」


 ペラペラと、思いつきでテキトーなことを話す私の話を、委員長は真剣な面持ちで聞く。

 いや、そんな真面目な感じで聞かなくても良いんだけどと思いつつも、委員長の期待は裏切れないので、仕方なくそのまま突き進む私。

 しまった! ここにツッコミがいない! 深刻なツッコミ不足だ。私は急に止まれない。


「おーい、瑞穂(みずほ)。そろそろ帰るぞー」

(ほむら)ァー! 丁度良いところに! 殴って!」

「は?」

「私を殴ってくれぇぇえ!!」

「一体どうした!?」


 そう言いつつ、遠慮なくぶん殴ってくれた(ほむら)には、感謝の言葉しかない。後で覚悟しておけよ。


「……これからも友人で居てくれ」

「モチ、あたぼーよ!」

「お前は何時代の人間だ」


 そんなこんなで、後日開催された略してクリパは、まぁ当然の如くカオスの様相を呈した訳だけど、後悔はないよね。

 とりあえず、委員長の貴重な笑顔は、絶対忘れないと思います。まるっ!


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