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二軍恋愛-知らない漫画のモブに転生したようです-  作者: 獅象羊
第一章「小学生編」(四年生)
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88.穏やかなある日※

※珍しい?晴雅視点です。

「だー、畜生!全っ然勝てねぇ!お前らどんだけ人間捨てるつもりだよ!」

「アハハー。若、それ褒め言葉ですよねぇ?」

「褒めてねぇよ、馬鹿野郎!」


 とある休日。

 僕らは庭に幾つもマットを敷いて、簡易的な運動場を作り上げると、そこで手合わせをしていた。

 当然、道場においても訓練は怠っていないが、こうして自主的な訓練を行うことで、感覚を鈍らせることなくいられる為、時間がある時には毎日行っていた。


 そこに、最近は(ほむら)様が入って来た。

 しばらく前までは、そんなことはしなくて良い、と言って眺めるくらいにして、参加するなど有り得なかったというのに。

 何か、(ほむら)様の中で、心境の変化があったのだろう。


 具体的に言えば、夏休みが終わった辺りからだったから、恐らくは、気持ちの整理をつけたことで、自分に必要なことが見えて来たのだろう。

 まぁ、僕には焔様にとって必要なこと、は分からないから、この訓練が具体的な意味を持つのかどうかまでは、考えもつかないのであるが。


 ただ、最近の(ほむら)様は、以前のように明るい表情をしてらっしゃる。

 そうすると、お嬢様の表情も明るくなる。

 すべて円満に進んでいるようで、何よりである。

 僕は、お嬢様が幸せであることが、幸せなのだから。


「あぁー…お前らに勝てるくらいになるったら、俺も人間捨てないといけないんだよな?それはちょっとな…」


 晴臣(はるおみ)に挑んで、数度目の敗退を喫した(ほむら)様。

 芝生の方へ、大の字になって横たわった状態で、ぽつりと呟く。

 …因みに、僕は人間を捨てたつもりはないのだが…(ほむら)様のいつもの比喩表現ということだろうか?


「何言ってるんですか、若ぁ。若の身体能力も、十分人間捨ててますって」

「…何かそんな感じはあったけど、お前に言われるとすげー腹立つな」


 むくりと身体を起こして、笑う晴臣(はるおみ)を睨みつける(ほむら)様。

 人間捨ててる、の意味は良く分からないが、確かに(ほむら)様の身体能力は、周囲の人間に比べて、群を抜いているように思う。

 正直、僕等が(ほむら)様に勝てているのは、年齢や体格の問題が大きいと思う。

 僕等は、流石にもうすぐ成長期は終わるような気がするし、毎年グングンと背を伸ばしている(ほむら)様に抜かれる日も、近いかもしれない。

 それを見て、私は伸びてないのに、と言って悔しがりながら、全力で喜ぶお嬢様の笑顔を思うと、その日が楽しみでもある。


「もう一回やろう」

「えぇー?俺、もう疲れたー。マサ、変わってぇ」

晴雅(はるまさ)でも良いよ。お前らどうせ強さ同じくらいだし。やろう!」


 爛々と光る目が、今度は僕の方へ向かう。

 僕としては、手合わせをすること自体はまったく問題はない。

 体力的にも、晴臣(はるおみ)に比べて回数が少なかったから、かなり残っているし。

 ただ、(ほむら)様の体力が心配だ。


「いいえ。いい加減休憩に致しましょう」

「もう疲れたのかよ、マサ」

「え?ならやめとくか」


 分かっていながら茶化す晴臣(はるおみ)に、分かっていないのに僕を気遣ってくれる(ほむら)様。

 こう言っては良くないのかもしれないが、もしもいずれかがお嬢様の伴侶となるのならば、僕は晴臣(はるおみ)より(ほむら)様が良いと思ってしまう。

 僕は、一生お嬢様にお仕えする心持ちでいるし、将来的にお嬢様の伴侶となられる方にも、当然誠心誠意お仕えする覚悟は定まっている。

 ただ、その対象が晴臣(はるおみ)、というのは…難しいところだ。


 立場上、考え難いということもあるが、あの旦那様のことだから、桐吾(とうご)様が渋ろうが何をしようが、お嬢様が望めば、叶えてしまいそうなところがある為、晴臣(はるおみ)がお嬢様と結婚、というのも、お嬢様の考え一つで可能性というものは残ると思うのであるが、だからこそ、止めて欲しいと思うのだ。

 双子の弟として、非常に複雑な気持ちになってしまうから。


 ただ、勿論お嬢様がそれを望まれるのだとすれば、僕は受け容れるのだが。

 お嬢様の言うことは、絶対だ。


晴臣(はるおみ)も大丈夫か?結構付き合わせたからな」

「はぁ?ナメないでくれます?俺の体力無尽蔵だから。このくらいでバテたりしないから」

「でも、お前ら体力も同じくらいじゃん。あんまやってない晴雅(はるまさ)が疲れてるんなら結構やった晴臣(はるおみ)は、もっと疲れてるんじゃ…」

「だーかーらー、平気ですって!」


 そう言いながら、横のテーブルに置いてあった麦茶を飲む晴臣(はるおみ)

 何だかんだ言って、結構疲れているのを、僕は知っている。

 双子とは言え、二卵性だし、すべてが分かる、という訳でもない。

 けれど、分かることもある。


 そして、それと同じくらい、(ほむら)様のことも分かるし、(ほむら)様も僕等のことが分かる。

 お嬢様の兄役として、僕等は連れて来られた訳だが…。

 最早、(ほむら)様や、仄火(ほのか)様、瑞貴(みずき)様、そうして、新しく生まれるお嬢様の弟君か妹君も、僕等にとっては弟妹のようなものなのかもしれない。


 このような環境をくださった旦那様には、本当に感謝している。

 そして、親代わりになってくれた西(にし)さんにも。

 言うまでもなく、その幸せを保ち、牽引してくれている、お嬢様にも。


「あれー?皆で何やってんのー?」

「んのー」

「にーちゃま!」


 さて、休憩にするのならば、今朝焼いておいたお茶請けでも準備しようか。

 そう思った時、ひょっこりとお嬢様が顔を出された。

 読んでいる本の区切りが悪いから、今日は本を読んで過ごす、と仰っていたはずだが、もう読み終わったのだろうか。

 いや、瑞貴(みずき)様と仄火(ほのか)様に張り付かれているのを見受ける限り、お二人に誘われて中断したのだろう。

 お嬢様は、お二人に弱いから。


「げっ、瑞穂(みずほ)!」

「何その反応!ひでぇ!!」

「いや、悪い。思わず」

「無意識かい。もっと酷いから、それ!」


 いつものような、言葉でのじゃれ合いを開始するお二人。

 僕は、そのやり取りを微笑ましく思いながら眺める。


 それにしても、先程体格について考えていたが、改めて見ても、お嬢様はまだ小柄でいらっしゃるのだよな。

 恐らくは、中学くらいか、少なくともこれから成長期がやって来るのだろうが、まだ背の順で並べば、前の方にいらっしゃるはずだ。


 それでも、出会った頃に比べれば、かなり大人っぽくなって来ている。

 初めて会った時は、まだもっとお小さくていらっしゃったからな。

 あの頃を思い出すと、申し訳なさが蘇って来るのだが、それ以上に、天使のような純粋なお嬢様の姿で、すっかり塗り潰されてしまう。

 僕も大概、馬鹿なものだ。


 出会った頃のお嬢様は、ショートボブと言えば良いのか。

 肩につかないくらいの短い髪型をしていらっしゃって、奥様も美紗子(みさこ)様も、もう少し長い方が髪型で遊べて良いのではないかと、良く話してらっしゃった。


 今も、そこまで長くはないのだが、それでも、あの頃よりは伸ばしている。

 髪型もコロコロと日によって変わる為、お嬢様と言えばこの髪型、という印象はあまり持っていない。

 ただ、休日はああして、肩より少し長いくらいの真っ直ぐの髪を、結ぶでもなく巻くでもなく、サラサラと流していらっしゃるのだが、僕は、この髪型が一番好きだと思う。

 僕の好みなどどうでも良いから、お嬢様にはお好きなように、ファッションを楽しんで頂きたいと思うが。

 お嬢様の、無邪気で無垢な印象が前面に押し出されて、とてもお可愛らしいと思うのだ。


 因みに、以前聞いてもいないのに教えてくれた晴臣(はるおみ)の好みは、クルクルと巻いたツインテールだと言う。

 お嬢様が、ツインテールにした上に巻く程までは長さがないから、あんまり可愛くならない、と文句を言ってらしたのを思い出す。


 その際に、晴臣(はるおみ)が無理矢理に聞いた、(ほむら)様の好みは前髪は下ろして自然な感じに流したワンカール…だったか?

 晴臣(はるおみ)が、何それ細かい、と言ってケンカになったのを覚えている。


 お嬢様がご自分で色々やってらっしゃるから、躊躇いを感じて、手を出してこなかったのだが、僕も少し勉強した方が良いかもしれないな。

 いずれお嬢様のヘアセットを頼まれても、上手く出来るようにならなくては。


 ファッションについてもか。

 お嬢様はご自身で色々と勉強なさっているようだが、僕が勉強しても、悪いことはないだろう。

 お嬢様はいつも活動的な明るいスカートをはいてらっしゃるが、違う方向も試してみたい、と仰っていたし、提案すれば受け入れてくれるだろうから。


(まさ)くんどうかした?」

「え?」

「何か今日ボーッとしてない?」


 チラチラと、目の前で手を振るのはお嬢様だ。

 珍しい。

 お嬢様の接近に気付かないとは、使用人としても護衛官としても、兄役としても失格だろう。


「いえ、他愛もないことを考えていただけですよ」

「そうなの?なら良いんだけどさ」

「どうせ、マサのことだからムッツリなこと考えてただけですよぉ」


 ムッツリ……。

 ……偶に晴臣(はるおみ)は、良く分からないことを言う。


「何言ってんの!この真面目そうな顔を見なよ!(まさ)くんは真面目なことを考えてたんだよ、きっと!」

「そうだそうだ。晴臣(はるおみ)と違って、晴雅(はるまさ)は真面目だからな」

「えー。何で俺だけディスって来るんですかぁ!」


 こうした会話を聞きながら、日差しを浴びてお茶を飲む。

 なんて穏やかな時間だろうか。

 かつては、こんな時間が過ごせるだなんて、思ってもみなかった。


 けれど、これからもずっと、こんな日々は続いて行く。

 僕は、その手伝いが出来れば、本当に幸せだ。


 頑張りますから、お嬢様。

 ずっと、一緒にいさせてくださいね。

~瑞穂さんの外見について(現時点)~

焔「黒髪のミディアムヘアー。アホ毛立ってる日がある。可愛いか?か、可愛くねーし!」

臣「真っ直ぐの黒髪ミディアム。スタイルはまだ子供っぽいけど、まぁ当然まだ小学生だしね。けどさ、俺、絶対お嬢はスタイルめちゃくちゃ良くなると思うんだよね。まぁ、ならなくても俺が育(以下自粛)」

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