87.トーナメントと雑談
さーてさてさて。
今年もやって来たよ、トーナメントの日が!!
刀柳館のトーナメント、即ち、日々の拷問の成果を披露する日。
私の実力、遺憾なく発揮させて頂こうか!
ふはーっはっはっは!
「青島先輩。仁王立ちして、どうなさったんですか…?」
腰に手を当てて、空を見上げていたら、若干ドン引いたナオくんに声をかけられてしまった。
ちょ、可愛いナオくんからドン引かれるとか、私死んじゃう!
あくまでもノリだったワケだけど、とりあえず、適当にそれっぽい理由を答えておかないと!
「ナオくん!おっはー。私はね、今風と一体になってるんだよ…」
ふ…と、ちょっぴりアンニュイな感じで答えてみる。
マジないわー。
私マジないわー。
自分で自分のセンスの無さに辟易して、全力で自分の頬を張り倒してやろうかと考え始めた時、ナオくんが目を輝かせて言った。
「ええ?す、スゴイですね…!僕もやってみます!」
「ナオくん…」
なんという天使っぷりだ。
皆さん、見ました?
この子が刀柳館という名の地獄に舞い降りた、一人の天使ですよ。
もう私、ナオくんがいなかったら止めてた。確信。
「あぁぁああああ!ナオくんぎゃんかわわああああ!!」
「???先輩?」
ギューッと抱きついて、グリグリと頬を擦り寄せるも、嫌がるでもなく、不思議そうにしているナオくん。
もうっ、この子何で出来てるの?
癒し成分100%で出来てるの?
遠慮がちに腕を回して来る動きとか…とんだ萌えキャラだわ!
「わっ?」
「こーら、お嬢。直くんに迷惑かけないのー」
「お嬢様。これから試合が始まりますので、あまり興奮なさいませんよう、お気を付けくださいませ」
急に、ひょいとナオくんから引き剥がされたと思ったら、いつの間にやら臣くんの腕の中にいた。
雅くんも、違う方向に苦言を呈して来る。
「さ、流石に分かってるよー。私の方がお姉さんだし?」
「じゃあお姉さん。ちゃーんと、貞節を弁えた距離を確保してくださいねぇ?」
「えー、つまんなーい」
「お嬢?俺の言ってる意味、分かるよね?」
ぶーたれてみると、臣くんから黒いオーラが湧き出てくる。
ちょ、怖い怖い!
「さ、さーせんしたぁ」
「分かればよろしい」
そう言って頷くと、臣くんはようやく解放してくれる。
おう…試合開始前から嫌な汗をかいてしまったぜ。
軽く汗をぬぐっていると、雅くんがナチュラルな動きでペットボトルを差し出して手渡してくれる。
「汗をかいた折には、水分補給が必須ですよ。どうぞ」
「あ、ありがとー!」
うん、これ嫌な汗であって、運動してかいた汗じゃないけどね。
まぁ、身体から排出されりゃ同じことか。
私は苦笑気味にそれを一口飲むと、また雅くんに返しておいた。
私が持ってるより、よっぽど上手く管理してくれるしね。
「何だか、先輩たちは親子みたいですねぇ」
私たちのやり取りを、何故かジーッと眺めていたナオくんは、ややあって、笑顔でそう呟いた。
親子…親子か…。
「残念だけどナオくん。私、こんな大きな息子二人もいらな…」
「いや、お嬢が子供でしょ。どう考えても」
「あれ、そうだった?あははー」
確かに、ボケてみたはボケてみたんだけど、ズバッとハッキリそう言われると、それはそれで複雑だわ、私。
感覚的には、お母さんみたいなところあるしね。
見た目は子供!頭脳は大人!だし。
誰だ、頭脳も子供だろって言ったのは。焔か!
後で食事に大量にタバスコを混入してやろうぞ!
「晴臣さんがお父さんで、晴雅さんがお母さんです」
「へぇ、そっかぁ!」
「俺がお父さん、ねぇ」
「……は、母…」
あ、珍しい。
雅くんがショック受けてる。
私の世話焼くの好きだし、お母さんって言われても、普通に受け容れるかと思ってたな。
でも、雅くんだって男の子だから、そりゃあ、お母さん呼ばわりはイヤだよね。
「ナオくん。流石に、男の子の雅くんに、お母さんは可哀想だよ」
「あ、そ、そうですよね。…申し訳ありません……」
「ううん。気にしないで、それより、こう呼んであげよう」
「こう、とは?」
「そう…夫と書いて、主夫と…!!」
この場に焔がいたら、アホだなと言われそうな提案。
だけど、私は満足していた。
だって、雅くんは、勿論私のお兄ちゃん的存在だし、本来であればお兄ちゃんと呼ぶべきなんだろうけど、その活躍っぷりを、お兄ちゃんと呼ぶだけで済ませるのは、何だか物足りないって感じだった。
そこで見つけた、雅くんを表現するに足りるだけの言葉!
そう、それこそが主夫!SYUFU!なのです!!
「ぷっ…くくくっ!!お、おい、お前主夫だってさ、マサ…」
「主夫…」
あれ、これも駄目だった?
おかしいなぁ。
「主夫…」
「…って、ん?おい、マサ。お前、もしかして満更でもない?」
「……」
おお!
雅くんは何となく嬉しそうだ。
これは素晴らしい!
まぁ、別に呼びかける時は絶対使わないんだけどね!
「それよりも、そろそろ時間ではありませんか?お嬢様」
「あ!やばい、怒られる!早く行こうか!」
「は、はいっ!」
「ほーい」
そうして、私たちは急いで会場内へ行った。
ほんでそのまま…ほぼ去年と同じ結果っていう。
これやる意味あるのー?って感じだ。
双子は決着つかないし、私なんてストレート勝ちだ。
面白味も何もなかった。
違うんだ、決して私は、そんな最強キャラになりたい訳じゃないんだ!
そんな言い訳をしつつ、今回一番楽しかったのは、完全にナオくんの応援だったっていうね。
ナオくんは、ちゃんと前回より強くなってて、その結果も出てて、見ごたえがきちんとあった。
まぁ、説明しないけど。
少なくとも、私たち3人の試合より全然見てて面白かった。
「青島先輩!僕ちゃんと強くなりましたよ!」
「うん、やったね!見てたよー。偉かったねぇ」
「えへへっ」
頭を撫でられると、嬉しそうに目を細めるナオくん。
そしてまた、うおお可愛いーっていうやり取りが繰り返された。
学習能力がない?
そ、そんなことはないんだからね!
ないったらないんだからねぇー!!
間が空いた上、内容が無いような、グダグダ回でした。
次回はもう少し書けるよう頑張れ…るかな?はい。